| 眩暈 |
| 2006/08/07 黒崎×山口(リバ)(鬼畜ED) |
今日もまた夜が来る。 山口にあてがわれた部屋は広い。部屋は北向きとはいえ、天井まで伸びる広い窓から、この街のほぼすべてが見渡せる。 だがその夜景は山口の心になんの感動も生み出さない。 部屋の中央に置かれたダブルベッドの脇に腰掛けて、山口は、己を買い上げた男を大人しく待っていた。 壁の時計が午後十一時を指す。明かりはつけず、部屋は暗いままだ。 明かりをつければ、部屋の隅に転がる幾つもの淫具が嫌でも目に入ってくる。あの男が強いる情交の殆どは性具を用いた淫行で、山口はそんな道具が世に存在することすら、ここに来るまで碌に知らなかった。そのような忌まわしい物を、必要に迫られるまで山口は目にしたくなかった。 もう幾日も出社していない。病院で黒崎に犯された翌日、山口は肉体の苦痛と疲労に耐えかねて、風邪と偽り休暇を取った。当日折り返し社から入った電話により、山口は、自分が唐突に親会社への出向を任じられたことを知った。 黒崎の差し金だ。親会社の社長でもある黒崎は、山口の出向先はここだと云った。毎夜、この部屋、この場所で、自分に体を差し出すのが山口の仕事だと。 山口は黙って頷いた。 そしてそれきり家にも戻らなかった。より正確には戻れなかった。 日中は山口は時間を黒崎に拘束されない。だが連夜の責め苦に山口の体は悲鳴を上げており、河岸近くの自分の家に戻ることすら億劫だった。一也が入院中の今、待つ者は誰もいないし、何より百合子や一也と過ごした幸福な家であるあの場所に、汚された体で入る気にすらなれない。 家に戻らなくても何一つ問題はなかった。衣食はその都度あてがわれる。電話は一度もかかってこない。一也は容態が安定せず、面会謝絶の状況が続いている。 山口は人形のように、黒崎の要求を聞いていればよかった。 時計が十一時半を告げる。防音の効いた壁の向こうから、それでも何かの音がする。玄関の扉が開かれ、そして閉じられる音。 あの男が帰ってきた。 山口は身をすくませ、歯を食いしばる。手の内に冷や汗が湧き、渇いた喉が生唾を呑み込む。 まるで体の大きな息子のようだと思ったこともあった。その年にしては世間知らずで、かと思えば意外な局面できびきびと立ち回ったりもする、特殊な環境下で育ってきた青年だと。 それが親会社の社長で、猟奇的な嗜好を持つ同性愛のサディストで、しかも自分に目をつけていたなどと。 黒崎壱哉。 山口の目の前でドアが開く。手が伸びて明かりのスイッチがつけられ、山口とその周囲の卑猥な道具を明るみに晒す。 そして青年が光の中に姿を現した。 上質のダークスーツ、上品なネクタイとシャツ。その上に乗る端正で暗い貌。 長い前髪から透けて見える瞳が、残酷に光を放つ。 「今日も待っててくれたんだな。嬉しいよ、山口さん」 青年の薄い唇が笑う形にめくれ上がる。 山口は、被虐の予感に震えた。 「まずは上着と、それから下を全部脱げ」 横柄な黒崎の声に、山口はのろのろと従う。黒崎の趣味なのか、山口はこの寝室でもネクタイに背広姿を強要されている。 山口はあえて表情を殺し、上着を脱ぎ、ズボンと一緒に下着も下ろした。萎えた陰茎がシャツの下からぶら下がったが、それを黒崎に見られることに、もはや羞恥はさして感じない。 何をさせるつもりにせよ、もっと恥辱を煽られることになるのは目に見えている。 「手を揃えて出せ」 山口は云われたとおりに、黒崎の前に手を揃えて突き出す。黒崎は転がっていた道具の中から黒革の手錠を選び、それで山口の両手を拘束する。 「次は首だ」 山口は、黒崎が首輪を締めやすいように顎をのけぞらせた。黒崎は山口のネクタイを緩め、シャツのボタンを襟元から引きちぎるように外して、内側に黒革の首輪を填めた。首輪と手錠は短い鎖で繋がれており、山口は自分が罪人か奴隷にでもなったような気にさせられた。 「ベッドに上がれ。四つん這いになって、尻を突き出せ」 山口の顔が真っ赤になって歪んだ。黒崎の刺すような視線が、残酷な興味を湛えてこちらを見る。 山口は眉根を寄せて口を開きかけ、だがすぐに視線を黒崎から逸らした。 「…わかったよ……」 膝でベッドの上に乗り上がり、黒崎に向けて臀部を晒すように背を曲げ、手錠を填められた手首をシーツにつく。短い鎖が伸びきって首を絞めるため、山口の頭は殆どベッドの上に倒れ込まざるを得ない。 黒崎の手が伸びて、無遠慮に山口の後孔を突く。 「ぐぅっ……」 嫌悪感に思わず声を漏らし、必死でそれを抑えた。 「だいぶほぐれてきたな」 満足げな声を上げて、後背から黒崎の体がのしかかる。ネクタイの先端が山口の尻に触れ、そのぼんやりとした触感に肌が震える。 「無理もないな。毎日だからな」 入り口をつつく黒崎の指はだがそれ以上深くはならず、やがて山口の尻を撫で回すように触感が拡散していく。 「つぁ……は……」 「触られるのにも慣れてきたか?」 脅すような、あやすような黒崎の声が、山口の耳のすぐ後ろで吐かれる。 「う……うぅ……」 黒崎の行為は愛の交歓と呼べるような代物ではなく、山口を貶め凌辱するのが目的だった。山口にとっては黒崎が何をしてくるかは常に完全に予想の外で、それが山口の心に恐怖感を植え付けていることも無論黒崎は熟知している。 目を付けた男を強姦して慰み者にするのが自分の趣味だと、黒崎はそう云っていた。 一也の入院費用を盾に取り、この青年は山口の肉体をいいように弄んでいる。 黒崎の指が一度離れ、やがて侵入を開始した。クリームを塗りつけた指が山口の中に入り込んで、入り口を広げていく。 「く……ぅあっ、つぁ……」 強く感じる異物感はすぐに薄れ、山口の内部で痛みとは違う感覚が生まれ出す。少しずつ。 「貴方を手に入れられて嬉しいよ、山口さん」 黒崎の名の呼び方には、強い揶揄が込められている。 「貴方ほど従順なペットは初めてだ」 「あ……あぁ、く…ろ……」 「何をしても怒らない。反抗もしない。従順で、俺の云うことは何でも聞いて、どんな要求にも応えてくれる」 黒崎の指が山口を乱暴に突く。 「くぁっ、くは……」 「だが、それが正直つまらないんだな。貴方の反応は大人しすぎて、物足りない」 「く……っ、く…」 何を、これ以上、どうしろと云うのか。性感に悶えながら山口は首を横に振った。手錠に繋がった鎖がしゃらりと揺れて、山口の首を絞める。 「貴方が快楽に打ち震えて、俺を欲しがって、狂おしいほど身悶える姿が見たいんだ、山口さん」 黒崎の手が腹に回り、山口の胸の上を滑る。 「だから今夜はそれを見せてもらおう。薬の力を借りて、ね」 云うなり黒崎が山口から離れる。 「っ、……なに……?」 ぼんやりとした頭で山口が首を巡らせる。己の背後で、黒崎が大きな注射器に似た何かに薬品を満たし、それを愉しげに眺めている。 「っ、ひ……」 浣腸器、という言葉が脳裡に浮かぶ前に、後孔にその先端が割り入ってきた。 「くぁッ! あ、ぁくっ……」 黒崎の指よりも冷たいその感触に背が反り返る。鎖が伸び切り、首に強く負荷がかかった。 「そんなに暴れると首に傷が付いてしまうぞ、山口さん……」 黒崎が冷酷に微笑する。その手は止まらず、先端を直腸内に固定すると、浣腸器の中の液体を山口の体内に送り込んでくる。 「ぅ、あぁッ、ぁふっ……」 「ふふ……いい声を出すじゃないか……感じてるのか?」 「ひぁっ、く、くろ……さっ、」 山口の体内で液体が逆流する。黒崎は空になった浣腸器を乱暴に山口から引き抜いて、ベッドの向こうに放り投げた。 「ひぁッ! くぁっ……」 山口は背を丸めて荒く息を吐く。下半身に熱が集まり、己が屹立しかけているのがわかる。薬の効果というには時間が早すぎる。黒崎に刺激されて、内部の熱が目覚めかけてしまったのだ。 「薬が効いてくるにはまだ時間がある。それまでは、ビデオ鑑賞でもしようじゃないか」 黒崎はそう云って、ベッドに乗り上げ、山口の肩を掴んで抱き起こす。 「ぐぁッ……」 乱暴な仕草に鎖が引っ張られ、山口が苦痛の声を上げた。 黒崎は構わず、山口を抱き抱えるように強引に隣に座らせ、リモコンのスイッチを入れる。 置かれていた映写機が廻り出し、壁に何かの画像を映し出す。 天井からスクリーンが降りてきて、画像が鮮明に映りだした。 「よく見るといい。そら」 黒崎が冷笑しつつ云って、リモコンを操作してボリュームを上げた。 『ああっ、あっ』 聞き覚えのある声がする。山口の顔から一息に血の気が引いた。 スクリーンの上で、薄暗い中に二人の男が揉みあっている。 『やめてください、三島さんっ』 其処に映るのは、山口と三島だった。 山口の脳裡を電撃が駆け抜ける。 「く、黒崎くん……!」 盗撮なのは間違いない。映りの悪い中で、トイレの個室に連れ込まれた山口が、三島の劣情をはねのけようと悪戦苦闘している。 『やめてください……課長!』 「いい声だな。山口さん」 スクリーンを見つめる黒崎がうっとりと云う。 「このシーン、貴方の必死さが堪らなく好きでね。もう何度も繰り返し見てしまったよ」 「き、君は……!」 山口が存外の素早さで黒崎から身を引いた。 血の気の引いた真っ白い顔が、眼鏡の向こうから黒崎を睨みつける。 黒崎はその山口の顔を、残酷な歓びを持って見上げた。 壱哉に犯されている最中ですら見せなかった剥き出しの凶暴な感情が、今は山口の面に宿っている。惑乱、憤怒、憎悪、嫌悪。そう、犯される男とは、とりもなおさず始めは皆こんな顔をするものなのだ。怒り、喚き、それでも力ずくで壱哉に屈服させられ、壱哉の手の内で赦しを乞うて泣き叫ぶべきなのだ。そのプロセスを辿らぬまま己の云うなりになった山口の聖人君子面を、壱哉は引き剥がしてやりたくて仕方がなかった。 そして今、それに成功しつつある。 スクリーンの向こうで、山口が赦しを求めている。壱哉にではなく、三島に。 『やめて…やめてください! 課長、お願いです……』 啜り泣くような声は同時に誘っているようにも聞こえる。 これを壱哉は聞きたかった筈なのだ。 「苦労したよ。この画を撮るために、わざわざビル管理会社を買い上げて、君の元上司にこの飲み屋の噂を吹き込み、割引券を与えて、……あまつさえビールに媚薬まで入れさせて」 「なぜ……なぜ、そんなことを!」 山口は叫ぶように云った、だがそれはかろうじて絞り出された声にしかならなかった。色を失った山口の唇がぶるぶると震えている。 「貴方を滅茶苦茶にしてやりたかったのでね」 黒崎が山口に手を伸ばす。手の利かぬ山口はそれを肩で跳ねのけようとして、黒崎の手が肩に軽く触れた途端、 「ぁあッ……?」 背筋を走った感覚に戸惑ったように硬直し、顔を赤らめた。 「おんなじ媚薬だよ。三島『課長』に飲ませたのと」 黒崎が喉の奥で笑う。 「手近にいる男が欲しくて堪らなくなる薬なんだ。実験によると、親近感を持つ相手であればあるほど効果があるらしいんだがね。俺と貴方では今の関係は微妙なところだが、この部屋には二人だけだ。問題はない」 「なにを……っ」 しゃあしゃあと、と続けようとして、山口は、今度は捕まえるために伸びてきた黒崎の腕に肩を掴まれて引き倒された。 「くあっ! あ……っ」 黒崎に掴まれた全ての場所が熱い。直腸から取り込まれた媚薬が全身を回り、山口の感覚を鋭敏にしている。 山口の脳裡に、先日の三島の痴態が甦る。自分もあんなふうに乱れて、目の前の男に情交を乞うようになるというのか。山口は屈辱に目を見開いた。 仰向けにさせた山口の上に、黒崎がのしかかる。 「ひ……」 上気した山口の面には、強い拒否とほんものの恐怖の表情が貼りついている。 「今夜は楽しませてもらえそうだな。山口さん」 黒崎は笑った。 獲物をいたぶる猫のような、凶暴な微笑だった。 黒崎がゆっくりと己の服を脱ぎ裸身になる間に、山口の劣情はいよいよ高ぶってきた。 「ぅ……くっ」 締められた手首や首に革が擦れるたび、背筋をぞくぞくと快感が走る。 「ふ……」 量感のある引き締まった肉体を見せつけるようにして、黒崎がベッドの上に上がり、山口に触れてくる。 「あ……ぁあっ……やめ……」 太腿を掻き上げるように軽くなぞられただけで、山口の竿は大きく屹立してくる。ベッドに横たわるように投げ出された山口の体を、黒崎がじらすように指で撫で始める。 「ひ……くッ……ひっ」 体が勝手に萎縮し、小刻みに震えるのを抑えられない。剥き出しの腰は今にも揺らぎ始めてしまいそうで、山口はそれを必死で押さえ込む。 「耐える顔もそそるな、山口さん」 黒崎の顔が降りてきて、耳朶に口づける。 「ひぅ! ……くぁあッ!」 それだけで山口の腰が跳ねる。 「あぁ……あ、あぁ……」 淫熱にかすんだ頭で、山口は理性を保とうと必死になる。だが既に、媚薬は思考にまで毒を振りまいており、何に耐えようとしていたのかすらもはや山口にはわからない。 「あぁ……んく、黒崎くんっ……」 山口の喉から物欲しげな声が上がる。自由を束縛する鎖を精一杯伸ばして、山口の手が己の屹立に触れようとする。 「く、くろ、さき、くんっ……」 苦しげに喘ぐ山口の顔からは、既に黒崎との情交への嫌悪は消えている。 喘ぎ続けて閉じられない口から大量の唾液がシーツに流れ落ちている。辛さから、目尻に涙が溢れる。だがその辛さとは、黒崎を厭うのではなくて、まったく逆の理由からくるものだ。 「うぅ……」 黒崎が顔を山口の傍に近づける。山口は、縋るような目で青年の顔を見上げた。 「く、黒崎くん……っ、た、頼む……」 黒崎はその先を無言で問うた。 「これ…………せてくれっ……触らせて……」 「駄目だ」 山口自身に触れる許可を黒崎に得ようとするのを、黒崎は制した。 「あぁ……触りたいんだ……頼む………熱くて……」 荒い息を吐きながら山口が懇願を続ける。 「射精したいのか」 「うっう……うぅ……」 あけすけな黒崎の問いに、山口が必死に応答する。 「…目なら……せてくれ……」 「何だ」 黒崎が唇の端をつり上げる。 「だ…抱かせて……そ、それか、」 山口の理性がすっと表に浮かび、その先を言葉にするのを一瞬だけ躊躇い、 「だ……抱いて、くれ………はやく……お願いだ………!」 すぐに情欲に屈した。 黒崎が満足げに山口の髪を撫でる。 「言えたじゃないか、山口さん」 「うぁっ……ぁう………」 山口はもはや黒崎の返答を待てず、ゆらゆらと腰を動かし始める。 「他でもない山口さんの頼みだ。まずは抱いてやるよ」 「うぅ……!」 眼鏡の奥で、熱に潤んだ山口の瞳が狂喜する。 「だけどその前に、俺を勃たせてくれなくちゃいけない。それはわかるな?」 壱哉は意地悪く云った。山口がそれに羞恥を再度煽られるかと期待したのだ。だが山口の反応は予想とは全く異なった。 「うぅッ……!」 待ちきれない、というように山口の上体が揺らいだ。体を這わせて壱哉の股間に頭を潜り込ませ、躊躇いもなく壱哉の竿を口に咥え込んだ。 「っ、おい……ッ」 そんな性技を山口にさせたことはない。自分が幾度か山口に施したことはあっても。 「ふうッ……! んッ……!」 山口の眼鏡が壱哉の陰毛に当たる。首からさほど離せない山口の手指が、壱哉の袋をやわやわと揉みしだく。山口の必死の性技は気味が悪いほどに的確だった。両唇と舌を巧みに滑らせ、唾を馴染ませて欲情を煽り、忽ち壱哉を追いつめる。 「クッ……!」 壱哉は思わず喉から声を上げた。四歳年長の山口が、その気になれば容易に自分を快楽に追い上げられるだけの知識を持っていることを忘れていた。 「咥えるのが巧いな、山口さん……どこで経験してきたんだ?」 揶揄を込めながら山口の頭を抑え、息を整えながら、屹立した自分自身を山口の喉から抜く。 「ぷぁ……は…はやく……ッ」 山口が懇願する。震える朱唇から、壱哉の先走りが唾液と混ざって糸を引く。 上気した頬と白い喉首。壱哉自身に絡んだばかりの赤い舌と、壱哉を欲して泣く優しげな目。 見下ろす黒崎の瞳に、劣情と支配欲以外の感情が初めて宿った。 だがその光は、淫欲に浮かされた山口の目には届かなかった。 黒崎は山口を俯せに押し倒し、尻を掴んで後孔を押し開いて、強く猛った己自身を勢いよく突き立てた。 「あぁ……くぁあ、つぁあッ!」 山口の喉から絶頂の悲鳴が上がった。 「あっ……く、くは、あぁッ!」 黒崎が己をねじ込むに従って、山口の屹立が跳ね上がり、勢いよく射精が始まる。 「ひっ……ク……くひッ………!」 山口が体を大きく震わせて、シーツに精液を振りこぼす。 「凄いな……効果覿面だ」 山口の中でまだ動くこともできずに、黒崎が満足げに呟く。 「あぁっ……く、黒崎くん……っ」 射精が終わったばかりの山口が、淫熱醒めやらぬ状態で身を震わせる。 「早く、動いて……突いて、くれ……!」 そのまま返事も聞かずに腰を大きく揺らがせ始める。穿たれた場所から広がる快楽を全身に及ぼそうと、山口は脚を大きく広げて両膝で黒崎の腿を抱え込み、尻を前後に突き動かす。 「くっ…! んくッ、ふぅッ……んんッ!」 常のように声を抑えることもせず、獣のように尻を降り続けている。 「クックッ……ずいぶんがっつくじゃないか、山口さん」 山口の変貌に半ば驚きながらも、壱哉は腰の動きを山口に合わせた。 「う、くぅぁあッ!」 脳髄が痺れるような刺激に山口が声を上げる。 「ああ! あっひぁ! んはぁッ!」 「大声を上げて……はしたないぞ、山口……」 黒崎の肌も既に熱を帯び、汗が山口の背に滴る。 「あぁッ……いいッ……! も、もっと……!」 黒崎の下で山口が身悶える。淫らに腰を降り続けるせいで、上気した顔から眼鏡が半ば落ちかかっている。 「こうか?」 黒崎がこじるように屹立をねじ込んでやると、 「んくッ! ふ、ふぅンッ!」 山口の背がびくびくと反り返った。 黒崎は浅く笑って、慎重に射精をこらえながら、山口の内部から竿を引き抜く。 「あぁッ、あっ……やめ、ないで……ッ!」 切なげに首を振り向ける山口の表情に、壱哉はすっかり満足を覚えた。 「今度は自分で尻の穴に入れてみろ」 ベッドの上にどっかりと腰を落とし、山口を誘う。山口は立たぬ足腰を引きずるようにして、それでも飛びかからんばかりに壱哉の膝に跨ってきた。 「あぁ、あうッ、黒崎くん……っ」 山口の拘束された手が、もどかしげに胸の前で揺れる。壱哉は山口の腰に手を貸して、己の怒張が山口の秘孔に突き立つように手を添えてやる。和式便器にでも跨るかのように、山口が性急に腰を落とす。 一度壱哉を呑み込んだそこは、見る間に押し広げられていく。 「あッ、あ、あくッ! ふぁッ……!」 挿入が終わりきってもいないのに、半ば竿が突き立ったところで、唐突に山口の射精が始まった。 「ああっ……!」 山口は二度目の精をぶちまけた。 「………ちッ!」 予期していなかった吐精のせいで、壱哉の腹ばかりか顎にまで白濁が飛び散る。思わず壱哉は舌打ちをして、目の前の山口の頬を張り飛ばした。 「いきなり出す奴があるか!」 「くふぁッ!」 甲高い音と共に山口の喉から悲鳴が上がる。眼鏡は外れとんでベッドの脇に落ちた。頬を打たれた衝撃で山口の腰が落ち、壱哉の屹立が最奥部までを抉った。 「く……あぐッ!」 「見ろ。汚れたじゃないか。この淫乱が!」 壱哉は顎の精を指で擦り取り、山口の開きっぱなしの口に指ごと突っ込む。 「うぐッ……ごめ、んふっ」 壱哉の指を突っ込まれたまま、山口が苦しげに喘ぎ、謝罪する。その間も、山口の腰は壱哉を貪るように揺らぎ続ける。 「あぁ……んぁ、くふっ、ふぁ」 壱哉は山口の口から指を抜かない。それどころか喉奥へと長い指を突っ込み、二本の指で山口の舌を掴み、舐らせる。苦しそうな山口はそれでも壱哉に抗おうとはせず、唾液と共に己が吐き出した白濁を飲みくだした。下半身は休むことなく、腰を動かし続けながら。 「そんなにいいのか……山口?」 「うう、うぐっ」 壱哉の指に口を開かされたまま、山口が答える。否定を口に上せる理性も残っていないようだ。 「だ……出したい……ッ、くろ、さき、く……」 耐えるような声で、聞かぬ口を精一杯動かして山口が懇願する。 「だったらまずは俺を行かせてみせろ」 射精への欲求をこらえながら、壱哉は命じる。 「ん、く……」 山口の表情に悲壮感が増した。どうすれば己の内部で男を射精させられるか、山口が知っているはずもない。それでも壱哉の表情を確認しながら、腰を動かし、脚をずらし、必死で内部を締めようと模索してくる。 「く……そうだ、いいぞ……っ」 放出の時が近いのを壱哉は確認した。 「全部中で出してやる。俺がいいと云ってからあんだは出すんだぞ。いいな?」 命じながら壱哉は山崎の屹立を乱暴に掴んだ。 「ひクッ………!」 強すぎる刺激に山口が目を剥く。山口の後孔が緊張に収縮した。壱哉は腰を突き上げて、山口の中に劣情を放つ。 「くぁ……ああ……あぁッ……!」 体奥に熱を注ぎ込まれる山口の背がびくびくと脈打つ。限界まで突き立った山口の怒張は、しかし壱哉の強い手に握られて放出を禁じられている。 「くろ…さきく……放っ………!」 「……そら、行っていいっ……!」 壱哉が指を開き、山口の先端を親指の腹で強く刺激した。 「くは……あぁあ……ふ、くあッ……!」 山口の喉から歓喜の声が上がる。笑みさえ浮かべて白濁液を放つ山口の顔を、壱哉は満ちたりた顔で見つめていた。 やがて山口の吐精も終わり、山口はぐったりと黒崎にしなだれかかる。疲労は体内に色濃いが、それを上回る昂奮がなおも山口を支配していた。 「く、黒崎くん……っ」 吐く息がいまだ熱い山口の劣情を、黒崎も感じ取っているようだった。白い面に冷酷な微笑が浮かぶ。 「今度はあんたが入れてみるか?」 「あ……あぅ……」 この熱を取り去れるなら手段は何だっていい。山口は黒崎が以前教えたとおりに、己を犯す青年の機嫌を取るために、黒崎の肌に口づけ、舌で耳朶を舐めた。拘束された手で黒崎の乳首をなぞり、爪で優しく掻くようにして黒崎の性感を刺激する。 自分の中に埋まったままの黒崎のものが、再び熱と硬さを取り戻しつつある。 「どくんだ、山口さん。今度はあんたが俺に入れてみろ」 黒崎は山口の肩を抱いて山口を押しのける。 「ふぅ……っ」 熱にぼうっとなったままの山口から、鎖と手錠だけを外し、縛めを解く。 「さっきみたいに前戯を忘れずに、な」 それきり黒崎は体を仰向けに横たえて、にやにや笑いながら山口を見つめるだけだった。 「うくっ……」 山口は黒崎の股間に顔を近づけた。心得た黒崎が腰の下に枕を敷き、半ば屹立した黒崎自身と共に、その後孔が山口の目に晒されている。 山口は口を開き、舌を突き出して、その秘孔を舐め始めた。 「ふ……っ、んん、んふ……っ」 山口の手は黒崎の竿や袋に添えられ、先ほどと同じように的確に黒崎の欲情を刺激する。 熱の冷えかけた山口には、己の為している行為への嫌悪感が既に発生していた。だがそれは数歩下がった場所から自分の行為を眺めるような冷えた理性で、もはやそれを為すこと自体に躊躇いはなかった。 「んく……んんっ」 白い肌を上気させて、己を買い上げた青年が時折声を漏らしている。山口が舌を動かし、唾を絡めて後孔を刺激すると、黒崎の体がぴくりと震え、熱さが増してくる。 「ふ……んふっ、んむ……」 山口の目の前で、黒崎の怒張が先走りの液を漏らし始める。山口は口をずらし、黒崎の竿を唇に呑み込み、同時に後孔には指を入れて黒崎をこじ開け始めた。 「んっ……くっ」 山口の指に、黒崎の内部は見る間に広がる。両唇で竿の先端を刺激してやると、黒崎の腰がびくりと跳ね上がった。 「いつまで、やっている……いいかげんに、来い」 喘ぎを押し殺すようにして黒崎が命じる。こちらに向けた白皙の貌は上気して、とても艶めかしい。眼鏡がないせいで輪郭がぼやけているが、美しい貌だな、と山口は思った。 「入れるよ……黒崎くん……」 その声に昂奮は薄い。黒崎もそれに気づいたに違いない。だが山口の竿は挿入に充分な硬さを保ち、黒崎への侵入を待っている。 黒崎が足を大きく開く。山口は黒崎の後孔に己をあてがい、ゆっくりと腰を沈めていった。 「うわ………!」 予想外の熱と吸着度に山口が声を上げる。黒崎の内部で見る間に山口の竿は太さを増す。 「う、く……っ」 汗を散らす胸板の向こうで黒崎が喉をのけぞらせる。 「黒崎くん……辛く……ない……?」 山口の体中から汗が湧いてくる。触れ合う竿と粘膜を通して熱が伝わり合う気がする。その一体感に山口は戸惑った。媚薬の切れかけた体でそれでも欲情しているのを、黒崎に悟られてしまいそうだ。 「いい、から、動け……ッ!」 黒崎が喘ぐ。その声に苦痛の響きはない。むしろ甘い、といってもいい鳴き声に、山口の頬は真っ赤に上気し、背中が総毛立った。 山口は情欲に駆られて、性急に黒崎の更に奥に侵入した。 「くぅあッ」 黒崎の喉からひときわ大きな喘ぎ声が上がる。それが愉楽の声であることを確認して、山口はゆっくりと腰を動かし始める。 体の奥に疼きが残る。漠然とした痺れは媚薬の副作用だろう。部屋の隅で映写機が再生を終えて、スクリーンにただ四角い白い光を映し出している。あの淫猥な罠を仕組んだのは黒崎だった。難病である一也の手術費用と医療技術を盾に、山口の肉体と尊厳を今も踏みにじり続けるのは黒崎だった。そして今、山口の体の下で、逞しい色白の体を全てさらけ出して軽い喘ぎを放つ青年も黒崎だった。 「くぁっ、ふ、ん、山口さ………」 浮かされたように喘ぐ黒崎の口が、山口の名を呼ぶ途中で閉ざされる。我に返ったように。 心地よげに閉じられていた瞼が開き、炯眼が山口を見据えた。 「…………ッ、」 その面に上ったのは羞恥、と見えた。それは以前黒崎が、屋台のラーメン屋で見せた表情によく似ていた。そんな時の黒崎は、二十五歳という年齢より十も幼く見えた。 「黒、崎くん………っ」 突き上げを止めぬまま山口は問いかける。そう、この顔を可愛いと思ったこともあった、と山口は回想する。 寄る辺を喪った幼い子供のような表情は、だがほんの数瞬で霧散した。細められた目に冷酷な支配者の光が戻り、黒崎は横柄に山口を揶揄する。 「正常位も、巧くなったじゃないか……山口さん?」 黒崎の脚が動いて膝の内側に山口の腰を抱え込み、深く引き寄せる。 黒崎が己の内部を自在に締め上げる。 「ふあっ……、く……」 こらえるような喘ぎが山口の喉から漏れる。締めつけられて山口の屹立が放出感に追い上げられた。 「く、黒崎くん……っ、もう……」 目に入る汗を瞬きで落としながら、山口が懇願する。 「もう少し耐えろ」 黒崎が体を起こし、山口の首に両手を回す。胸と胸が擦れ合い、汗で滑る。 「んっ……んくっ……」 軽い喘ぎを漏らしながら、黒崎が山口の動きに合わせて腰を揺らがせる。山口の口が協力するように黒崎の頬に伸びて、口づけ、舌で唇をなぞり、口腔に割って入った。 「んん……ふっ……」 命じられる前に山口のほうからキスをしてきたことは今までなかった。戸惑うように閉じられた黒崎の唇が、やがて開いて山口の舌を受け入れる。 山口の右手が動いて屹立した黒崎の竿を掴んだ。山口の口の中で、黒崎の喘ぎが高く裏返る。 「んふん……っ!」 山口の手は優しく、だが的確に黒崎を追いつめる。黒崎の体の緊張が強くなるのを感じながら、山口は尚も黒崎を煽る。放出をできるだけ耐え、抽送を続け、黒崎の高ぶりに合わせるように体の位置をずらしていく。 「………っつは!」 黒崎の口が山口の唇から外され、その体がひときわ大きく痙攣した。山口の手の中で黒崎の怒張が震え、精の放出が始まる。 「っく………うくッ!」 黒崎の体が収縮し、山口もまた吐精した。 「ああッ……く、黒崎くん………っ! くろ、さ……」 青年の体を抱き締めて、己の腰を押しつけるようにして内部に精を撒く。精を吐ききったところで山口の体はぐんなりと力が抜け、黒崎にのしかかったまま身動きできなくなった。 「こら……、降りろ」 暫く息を整えていた黒崎がようやく山口に命じる。 「う……」 媚薬の完全に切れた山口は、疲労困憊で動けない。動く意志はあるのだろう、壱哉の体の脇で数度、手が上下した。だがそれだけで、山口の体は未だに壱哉と繋がったままだ。そもそも壱哉に比べたら淡泊な山口が、今夜は薬に強いられて四度も精を放ったのだ。体力が持つはずがない。 壱哉は山口を抱えて起き上がり、接合部に手を当て、萎びた山口の竿を己の後孔から引き抜いた。 「ぅく……」 山口の喉から声が漏れる。ベッドに頽れた山口の細い体を転がして、壱哉は、首に残されていた首輪を手で外した。そのまま己の手で、山口の首筋をなぞる。 意外に長い山口の睫毛が開いて、茫洋とした目で壱哉を見上げた。山口の口はだらしなく開いたままだ。 「今夜は随分がんばったな、『お父さん』?」 揶揄するように口を開いた黒崎の言葉は、いつもの冷酷さを殆ど失っている。 だが『お父さん』と呼ばれて、山口の目には理性が戻ってきた。 「大事な一也のために……あんたはよくできた父親だ」 一也の名を出されて、山口の瞳に飢えたような表情が宿る。それを引き出したのは壱哉自身ではあったが、山口のその表情は壱哉の感情を波立たせた。 「俺の名を呼んで、必死に腰を振っていたな……そんなによかったか? 息子が今にも病院で死にかけているというのに」 「……一也………!」 疲労でしなびた唇から、山口の声が漏れた。 壱哉がもっとも聞きたくない、必死の響きだった。 「貴方が俺に縋りついて、もっと欲しいとねだる様は壮観だったな。今夜一晩では惜しいくらいだ。映像に残して置いてよかった」 山口の肩がびくりと震えた。 「なに………?」 黒崎が薄く笑う。 「滅多に見れない山口さんの痴態だ。ばっちりカメラに納めさせてもらったよ」 黒崎は放り出していたリモコンを掴み、ボタンを押した。 スクリーンにダブルベッドと、その上で組み合う男二人が映し出される。スクリーンまで距離はあるが、近眼の山口でさえそれが気にならないほどの大画面だ。 『あぁっ……く、黒崎くん……っ』 確かに己の喉から発せられた甘い声に、山口の表情が引きつった。 『早く、動いて……突いて、くれ……!』 四つん這いで黒崎の怒張を受け入れて、ねだるように山口が腰を振っている画像が映し出される。その様を、ベッドの上で横になったまま、山口は瞬きもせずに見つめている。 「っくッ………」 嗚咽の切れ端のようなものが、山口の喉から漏れた。 身じろぎもしない山口の頬に、黒崎が手を伸ばす。 「まったくあんたは従順で、いいペットだ」 黒崎は山口の髪を掴んでくしゃくしゃと撫でた。以前山口が黒崎にそうしたように。 「これからも一也のために、俺に腰を振ってくれるんだろう? なあ? 山口さん」 無言のままの山口の頬を涙が伝う。 「今日はよく寝ておけ。明日も俺に奉仕して貰うんだからな」 黒崎はリモコンのスイッチを切り、映写機を止めた。 ベッドから体を起こして床に降り立ち、服をぞんざいに羽織って出ていこうとした黒崎は、身動きしない山口を見下ろしてほんの少し、心を痛めた表情をしたが、 「おやすみ、山口さん」 やがてどうにかその面に冷酷な表情を浮かべることに成功した。 山口の部屋のドアを開け、締める際になってようやく嗚咽が追いかけてくる。 黒崎は振り向かなかった。 ドアが閉められる音を聞き、打ち捨てられた部屋で涙を流しながら、山口は嗚咽を続けた。 疲労しきった体内に、黒崎と共有した熱がまだわだかまっている。 それがいっそう山口を苛んで、山口は疲れて眠りに落ちるまで、ただ泣き続けていた。 (了) |
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| な、長げーなーおい……。 羞恥調教にチョロッと出てくるだけのエピソード。山口さんに薬を使ってあんあん言わせる社長。そのトコロ、読みたかった。是非読みたかった。 つうわけで妄想さめやらず書いてしまいました。 ついでに大好きなセクハライベントもコラボしてみる。 山口さんの「やめて受け」が見られるのはセクハライベントだけ!(ジャンプふうに) 社長に対しては覚悟の効いた山口さんは、社長には「やめて」って絶対云わないんだもんな〜(つまらなげに) 一也を人質にしている以上、社長×山口に春はないのですが、社長はソコのトコロをきちんと理解しているのか。どうなの。 |