「俺はもしかしたら部下にセクハラするのが不得手なのかもしれん。上司としてこれはまずい。
赤毛、もうちょっと付き合え」
「……は、はい」
ティレルのよくわからない理屈で、アナスタシアは手を掴まれてソファに導かれる。
(でも全然、怖くないんだ。
……イヤなら引き抜けるほどの弱さでしか掴まれていない)
上着を脱ぐように言われて、上半身はブラウス一枚で、ソファに腰を落としたティレルの膝の上に背を向けた状態で座らされる。
「リ、リスター審問官……ぁ、」
ティレルの手が、アナスタシアの脇腹をブラウス越しに撫でてきた。
(う、上着の上からより触感が強い……)
触感を強く感じるのはティレルの手だけではない。
背中から彼自身の熱を感じるし、彼の呼気も耳や項をくすぐる。
キスの最中から密着していた所為で、ティレルが纏う独特の香が彼の体臭とあいまったにおいがすっかり鼻腔を支配していて、アナスタシアは自分が吐く息さえもティレルのにおいがするような錯覚に捕らわれている。
「っ……」
ティレルがアナスタシアの首に鼻を寄せてきて、項にキスをされる。
「赤毛、お前……、クライオスのエセ笑顔野郎と同じ石鹸使ってるか?」
「え? あ……」
思いも寄らぬことを言われたが、アナスタシアはすぐにその理由を思い出した。
「翼騎士団で支給される石鹸だと思います。市販品の中にはガルダが嫌う香料が入ってることも多いので、騎士団全員に同じ物が支給されているんです」
「それでか。エセ笑顔野郎はこの石鹸の上から更にくせえ香水使ってるよな」
「え、くさい、というか、いいニオイだと思いますけど……あれも、ガルダと人と双方に不快感を与えない香水で、あまり余所にはないんです。男性用なので私は使っていませんが」
「まあそれで正解だな。俺の部屋でまで奴と同じニオイなんか嗅ぎたくねえからな。……お前は香水は使ってないんだな。髪からはいい匂いがするが」
「あ、そ、それはマヤのシャンプーを借りてるんです。翼騎士団にいた頃はやはりガルダに合わせた無香料の支給品を使っていたんですが、異端審問官である今はガルダに気を配る必要はないからと、マヤが勧めてくれて…」
「ふぅん」
話を振りはしてきたが、ティレルはさして興味も無さそうだった。アナスタシアの前髪を横合いからかき上げて耳に掛けて露出させ、耳の裏、ピアス穴の上部にそっと唇を当ててくる。
「ひゃ……」
唐突に同じ場所を舌が這い、アナスタシアは思わす声を上げた。
ティレルの手はアナスタシアの後背から腹部に回され、そろそろ際どいところに触れ始めている。
「あ、ぁ…」
(胸、を……、)
ブラウス越しに、ティレルの手に両の乳房を包まれる。
「ぁっ、ひ、」
耳を這う舌は耳たぶからその内側へと至り始め、アナスタシアは己の体温がどんどんと上がっていくのを自覚した。
「あ、ぁ、リスター審問官……、」
「もう少し、俺の体に寄りかかれ、赤毛」
後背から耳元で囁かれてゾクゾクと背が総毛立つ。アナスタシアはティレルの言葉に従順に、彼の胸に体を預ける。
「あ………、」
ティレルの器用な手が、ウエストの留め金を外して下肢に忍び入る。
触感と視覚、双方でアナスタシアにそれがわかった。
インナー越しに探られたのは僅かな時間で、すぐに、直にティレルの指が秘された場所に触れてくる。
「ひッ……! や、ぁあ…、」
「熱いな……お前のここ」
「ッ………」
初めて他人の手にその場所を撫でられ、そう評されて、アナスタシアの体はヒクリと震えた。
「リ、リスター審問官、そこ、手、ダメ……っ」
羞恥と困惑と淫靡で訳もわからなくなって、アナスタシアは声を上げた。
「ふ、やっと……、セクハラっぽくなってきたな」
後背のティレルの息も喘ぎがちになってきている。
「俺みたいな男に触られて、気持ち悪くなってきたか? んん? 結構濡れてきたけどな」
「ッ、ぁ……違…くて……、んぅ、ふぅっ…! あっ……!」
ティレルの指で秘芽を探り当てられ、優しく撫で上げられて、アナスタシアは思わず背を仰け反らせる。
「ひぁンっ…! ひゃ……うっ!
ぁ……そこ、そんなふうに触られたら…っ、気持ちよくて、ヘンな声出ちゃいますっ……!」
後背のティレルが息を飲んだのがわかった。
「そっちかよ。ホントに気持ちいいのか? 嫌とか気色悪いとかの間違いじゃなくて?」
ティレルのほうが困惑気味だ。
「はぁっ…、だって……、リスター審問官の手、ッ優しい、からっ……ぁっ、あぁっ」
「確かに……どんどん濡れて熱くなってきたな……
指、入れるぞ」
「! ンぅう……、」
アナスタシアが拒まないので、ティレルの指はいよいよ体の奥深くを探ってくる。
「ンっ、あぁ……、はぁ、」
熱い息を喘がせて、アナスタシアはただティレルに翻弄される。
熱を溜めているのはティレルも同様らしく、アナスタシアの耳元に彼の呼気と囁きが吹きかかってくる。
「俺に触ってくるときもあんま迷い無かったし……。
もしかしてお前、性欲強い?
それとも強引なのが好きなのか?」
「ッ……知り、ません……! そんなの……!」
ティレルの指は次第に大胆になり、複数本がアナスタシアの裡に侵入して更に淫を煽ってきていた。
「ぁ、あ、ダメっ…」
体の中をにちゃにちゃと優しく撹拌され、アナスタシアはぐったりと力が抜けてティレルに為されるがままだった。
「……あんまハラスメントになってねえな。赤毛。……このままエスカレートしちまうと、お前を犯っちまうぞ……?」
「! っン………!」
びく、とアナスタシアの全身が震える。
「えっ? 今、中がヒクつかなかったか?
……お前マジで、俺とすることに興味あんのか?」
「っ…リ、リスター審問官っ……!」
そんなはずはない。と返事することはできなかった。
男性と交わることなど考えたこともなかった。
それは事実だが、ティレルと一緒だとそちらの方へ体と思考がどんどんと靡いてしまう。
(く、比べたことなんか…ないけれど……これは、きっと)
(リスター審問官が、巧すぎる……!)
本来相当に膂力のある指が、繊細かつ柔軟に、優しくしかも器用に自分に触れてくること。
人の心を悟るに敏なこと。無知なアナスタシアが嫌だったり怯えたりすることを避けて、ひたすら気持ちよくなる方向に触れて、体を快楽に導いてくれること。
(私のお尻に、固いのが、当たってる……、これが多分、リスター審問官の、なんだけど、)
自分を女として求めている、という気配と、かといって強引にそれを突き立ててこようとはしてこない理性。
そしてちょっとだけ、
(リード、というか……リスター審問官の中にある、鞭打つのが好きな嗜虐とか支配欲が、優しさの中に上手く隠されてる所為で、)
(この人への、い、依存心みたいのが、止まらない……! 体が勝手に、開いていっちゃう感じが、)
「リスター審問官……っ」
自分の下肢を探っていないほうのティレルの手を掴んで、アナスタシアは己のブラウスの下にその掌を導く。
「っじかに…触って下さい……、私の、肌……っ、お、お腹、とか、胸……とか……」
「………お前、本当に素直に性欲強いな」
ティレルが苦笑して、直に乳房を手で包んできた。
「ン…ぁ……!」
二本の指先が突起に到達して、優しく挟まれる。
「……手が強すぎるとか、痛かったら、言えよ……、」
乳房を優しく揉みしだきながらティレルが気遣ってくる。
「あ…ぁ……、丁度いいです……、すごく気持ち、いい……」
クスリ、と笑う気配がして、
「だろうな……。下、ますます濡れてきたぜ」
「ッ………はーっ、は…や………」
指でぐちゅぐちゅと掻き回される音と触感が、アナスタシアに羞恥を淫靡を与える。
この先に何が待っているか、予想できないほど初心ではなかったが、
「ァ……ん、あぁ…、もっと……、」
気がついたときにはアナスタシアはティレルの指に腰を押しつけるようにして身悶えするばかりになっていた。
「リスター審問官……っ、んん……、」
後背から、項に、熱い息と共にティレルの情欲が吹き付けてくる。
「お前の反応の所為で、俺も結構その気になってきちまったな……
ただ、こっから先は、セクハラの範疇を超えるぜ……? 赤毛……。
パワハラ兼レイプに移行したいか?」
どう考えてもレイプにはなりようがないが、露悪的なティレルはそう言ってアナスタシアを誘ってくる。
「ッ………、んン……、」
ティレルによってもたらされる快楽と依存感。
初めて知るそれに、アナスタシアはただ溺れるばかりだ。
「はぁ……、あ、お願いします……、リスター審問官……っ」
ティレルの、指ではないものが、自分の身体の裡に入ってくる。
その期待感に、アナスタシアは逆らえなかった。
甘い罰【2】【R18】
TEMPEST魔女【小説】