幸せそのものの恋人達の絵図を、庭に開かれた小会議室の窓、カーテンの影から眺めている複数の人物がいた。
彼らは、庭に出たティレルとアナスタシアが何らかを話し合い、後にキスを交わしているところからつぶさに観察している。
「あっの野郎……舌入れやがった。初めてじゃねえな、アナスタシアの態度を見るに」
ゼンが忌々しげに舌打ちをする脇で、クライオスが溜め息をつく。
「目がいいのも考えものだな。アナスタシアが嫌がってないのはいいんだが…それが見えてしまうのも切ないは切ないな」
「凄いな、二人とも。あんなに距離があると、僕はそこまで識別できない」
「まあ、ガルダに乗るなら視力は必要ですから」
「俺たちが余計な手出しできねえように、わざとあんな距離まで出てってるな。アナスタシアのいた部屋が盗聴されてるのも勘づいてやがったかも」
「リスターならそうだろうな。王宮の構造に彼は詳しいはずだから。……別に盗み聞きするためにアナスタシア殿をあの部屋に通した訳でもないのだが……」
「ああーまあ、それでもお陰で面白いものは聞けましたからね」
「俺たちにどやしつけられた腹いせにアイツに向かって愛人とか婚約者とか迫りやがって」
「まあ良心的に考えれば。ティレルが自らの責任において敢えて立場をハッキリさせた、とも言えるんじゃないのか」
「お前はティレルに甘いんだよ、クライオス。
……俺はここ最近はずいぶんと老け込んだ気がするぜ。
ローティーンのカップルをヤキモキ見守る父親にでもなった気分だ……あいつらもう二十六と十八なのによ……デートもまともに出来やしねえ。そのくせ、やたらと手は早えし」
「不思議な奴だよな、ティレルは。仕事能力の度合いでいえば俺たちよりずっと優秀なのに」
「仕事の見通しが立ちすぎて、脳の試算内に情緒の入り込む余地がないんだろ。恋愛のポテンシャル自体が低すぎるんだよ。
ましてあいつ、貴族の色事のヤバいとこばっかり見てきてるしな。
……まあ純情方面に転がってるだけマシなんだろうぜ。サイコパス王子に習って、女を利用するだけの方向に行っちまう可能性だってあったからな」
「……貴方がた三人は良い友人関係なのだな。僕としては少し羨ましい」
ルーシェンが口を挟み、ゼンとクライオスは目を眇めて忠告した。
「……それ、ティレルに直接言うのは絶対やめとけよ。マジで命を狙われるからな」
「あいつは悪い奴ではないですけど、とんでもない天の邪鬼ですから」
「……それは僕も何となく理解している。彼には不思議な反骨精神があるな。僕としては其処も彼の魅力の一つだとは思うが。
……貴方達の助言に添って、アナスタシア殿との付き合い方についてリスターに忠告はしたが。正直なところ、意味があったのかどうかは疑っている。彼にとって、僕の警告など、如何ほどの抑止力にもならないのではないか」
「いや、そうでもないと思いますよ。さすがに三人目の王族まで敵に回したらこの国では生きていけない。証拠に、見た感じ、ティレルはけっこう抑制してますよ。あれでもね」
「手つきとかな。下半身に回らないように気ぃ遣ってる」
「下、半身って……あ、ヒップか。……ヒップ………。どこの接触までなら目こぼししておくべきなんだろう……」
思案げな顔をする生真面目なルーシェンに、クライオスは笑ってみせる。
「まあ今回は見逃しましょう。アナスタシアへの、ティレルの覚悟の程がわかって、安心材料が増えましたからね。
……あいつは本来、自分の役に立たない人間を冷酷に切り捨てるようなところがあったので、アナスタシアを受け入れた後どうするつもりなのか気がかりだったんですが。
今日の様子を見て、大丈夫だと俺は判断しましたよ。
――――むしろ随分大事にしている」
「ま、今までは自分さえあんまり大事に出来ない奴だったからな。あのまんまだったら、そりゃ他人も大事に出来ねえと思うよな」
「……ゼン。どうなのだろう。アナスタシア殿の『死に戻り』の繰り返しを全て知っている貴方から見て、リスターはアナスタシア殿に相応しいのだろうか………今回でさえ、初期の頃は随分と他人行儀な印象があったものだが」
ルーシェンの懸念は尤もで、ゼンは考えるように息を吐いた。
「……まあ、『死に戻り』のたんびティレルは殆ど初対面だから、俺たちよりはアナスタシアと距離があるのは仕方ねえよな。……むしろ今の距離ナシのほうが俺から見りゃ不自然でヤバい気はするな。
……今回を含めて、『死に戻り』の都度、アナスタシアへの態度が一番変遷したのがティレルだ――――俺を除けば、だけどよ。
どこぞの王子とどこぞの翼騎士は、それぞれ幼馴染みと騎士候補生の部下が大事すぎて、毎回そいつを庇った挙げ句に結構な頻度で途中退場しちまってたからな。俺の目から見りゃ、呆れるほどブレの無い人生送ってたぜ?
それに比べて、ティレルが心の内側にアイツを入れた世界線は今回を除けば一度だけだ。最終局面で俺らと敵対して、激昂してアナスタシアを殺しに来たときもあった。
……基準にしてる軸が違うだけで、ティレルの奴だって別に人生がブレてるわけじゃない。これと思い込んだら命ごと全賭けしちまうのがティレルで、………
……………………」
「ゼン?」
黙り込んだゼンに対しクライオスが声をかける。
「ああ……あいつら、そういうとこが似てやがるのか。やなこと気づいちまったな。気づかなきゃよかった」
苦々しげにゼンが呟いた。
「どういうことなんだ。ゼン、何か気づいたことがあるなら教えて欲しい」
ルーシェンが促すので仕方なく、ゼンは重たい口を開く。
「……ティレルとアイツは、命を大事にしねえとこが似てるんだ。……これはおまえらにも共通した印象だが、中身の色がちっと違う。
自分よりもっと大事なものが人生にあって、そいつの為に命を投げ出すのがおまえら二人だ。己の死後も庇う対象は生存してる。
ティレルとアナスタシアは……大事な奴が生きてる間は自分も生きて、そいつを守ろうとするんだな。だが力及ばず死なせちまうような事態に遭遇すると……逆上して、捨て身で襲いかかってくる。憎い奴と刺し違える覚悟でな。敵を殺したって、死なせた奴はもう戻ってこないのは百も承知なのにな。アナスタシアの場合は『死に戻り』で取り返せる余地もあるが、……ティレルの場合は違う。
大事なものを亡くした、もうその時点で命が惜しくないんだろ。その先の未来に既に展望が無いんだ。
……何つうか、悲愴感あるよな。
現状対処の能力値は、アナスタシアよりティレルのほうがずっと高いが……だからこそ、対処に失敗して取り返しの付かない事態になると、本人の自暴自棄にあっさり転化していっちまう。何かを守ることにはあんなに必死だが、自分自身の命はそもそもさして大事じゃない。だから自分以外の何かに人生を全賭けしちまって、それがなくなると絶望して逆上する。アナスタシアと違って、あいつの命は一回きりなのにな。
そうなると。
――――今のティレルの、アナスタシアへの距離ナシの態度ってのは。
自覚の有無はともかく、既にアナスタシアに命ごと全賭けしちまってるからなんだろうな。
……クソうぜえ。やっぱ気づくんじゃなかった。足引っ張りにくくなっちまった」
ゼンが静かに吐き捨てた。
「あいつがアナスタシアの為にならないって兆しでもありゃ、さっさと別れさすつもりでいたのによ」
「…………………」
ティレルの覚悟とゼンの覚悟、それぞれの凄味を知り、残る二人は押し黙る。
やがて、クライオスが、
「あー……ゼン。ちょっと聞いておきたいんだが。別の世界線でティレルが守り切れなくて、あいつが逆上するほど怒った奴の死っていうのは、一体誰の……」
ゼンは手を広げてクライオスに向き直った。
「聞くまでもねえな。お前に決まってるだろ、クライオス」
その回答は、クライオスにとってはさして意外でもなかったようだ。
クライオスはゼンと共に静かに苦笑する。
「………意外に情熱的なんだな、あいつは」
「だろ? 死ぬまで黙って墓に持ってけよ。バレたら早急にお前の葬式出さなきゃならなくなるからな」
「はは。年取って病気して死ぬ間際に、アイツが見舞いに来てくれたら話すことにしようか。綺麗に息の根止めてくれるだろうからな」
「……まあ当時、コンラッドが既に死んでたからイシクの再興ってのは絶望的になってて、ティレルがお前の為に動けたのはその所為もあるとは思うが。
……んで、今はあいつの秘された情熱が全部アナスタシアに向けられちまってる訳だから……」
「そりゃ重くもなるか」
大人二人が考察を喋っている間、思案深げに沈黙していたルーシェンが口を開いた。
「……アナスタシア殿とリスターの行動原理が似ているという点について考えていたのだが。ひょっとしてアナスタシア殿は、むしろリスターからその思考を学習しているのではないかと思うが、どうだろうか」
「ああ?」
意外なことを言われたゼンがルーシェンを見る。
「『死に戻り』以前、兄上の婚約者として王宮におられた頃から、アナスタシア殿はそのような気質でいらしたのだろうか?」
「あー……いや。言われてみりゃあんな粘り強さはなかったな。突発的に王宮の窓から飛び降り自殺しちまったこともあるくらいだ。
ん。そうだな。女騎士としてクライオスの下にいたときも、アイツはまだあんな感じじゃなかった。ティレルの下に就いた後からだな、確かに」
「……ではアナスタシア殿は、ご自分で望んでリスターのやり方を取り入れてらっしゃるのだな」
ルーシェンは何故か少し嬉しそうに笑う。
「アナスタシア殿にとって、師匠と呼べるような者がいて、それがリスターだというのは喜ばしいことだ。
僕はアナスタシア殿の生き方を手本にして生きているので、今後はリスターから仕事の手法を学ぶことにしよう。ゼンの話を聞く限り、僕の王族としての業務にもリスターの方法はかなり有効に思える。彼が僕の傍で働くようになってくれて良かった」
無邪気、と呼んでもよいほどの笑顔でルーシェンは言った。
「………………」
それぞれの方向に独立気風の強いゼンとクライオスは、感心と呆然の半々の表情で年若い王子を見つめる。
ルーシェンは不思議そうな顔をして、
「………? 僕の顔に何かついているか?」
「……あー、いや、何て言うかな」
「ティレルを信頼してくださるのは友人としては有り難い限りですが。政敵である兄殿下の飼犬だった男をあまりに素直に受け入れておられるようなので、少し驚きました。言い方はよくないですが、ある意味恋敵でもあった訳ですし……」
クライオスに説明されて、ルーシェンのほうが驚いたような顔をする。
「不思議なことを言うな……クライオス。
アナスタシア殿の選んだ人なら間違いはない。僕は彼女を信じているし、よって、彼女が選んだリスターのことも信じている。それだけだ」
輝くような笑顔と共に自信たっぷりにルーシェンは宣告する。
「……あー………そっちか」
「おおらか…というか信念が強いというか。一周回って、とても王族らしい振舞なのかも知れませんね」
言葉を濁しながら、クライオスとゼンは互いに目配せをする。
ルーシェンはあまりにもアナスタシアの言動に信を置きすぎる。
(こちらはこちらで、気苦労の種になりそうだ)
という、大人同士の感慨だった。
目の前の二人の懸念には気づかず、ルーシェンは持論を述べ進めている。
「リスターは、もう気づいているのではないか。彼は鋭い人だから。
……『死に戻り』を繰り返したアナスタシア殿の中に、失われたはずの彼の『過去』が息づいていると」
「………」
「……さあ。そこまではどうでしょう」
「クライオス。貴方はリスターのことを『自分の役に立たない人間を冷酷に切り捨てる』と評した。それは僕もそうだと思うし、今も変わらないと感じる。
僕への助力として僕が出した条件、イシク族の名誉回復と文化継承に関して受け入れてくれたことが、それなのだと思う。
しかし彼はアナスタシア殿への助力に対し、見返りは要求しなかった。……思うに、彼としては、アナスタシア殿から既に見返りは得ているのだろう」
「……リンゼル侯爵家の婿になるとかそういうことか?」
ゼンが眉根を寄せて問うと、ルーシェンは首を横に振って否定した。
「いや。そうした即物的なものではない。彼はそもそも森の民。イシク族としてのプライドが高いのだから、ヒストリカの階級社会に組み込まれることにさほど旨味は感じない筈だ。差別されやすい異端審問官に属していながら卑屈さが全く無かったことからもそれは読み取れる。
ゼン、貴方なら共感すると思うが……階級社会に自らの身を押し込まれることは、リスターにとっては旨味どころか、もしかしたら苦痛に感じるくらいの事かも知れない。
僕が言いたいのは、そうした窮屈さを甘受したり、あるいはイシク族を諦めても惜しくないほどの価値を、リスターがアナスタシア殿に既に見いだしているのだろう、ということだ」
「……まあ、イシク族が護るべき『女神』の生まれ変わりですし。アナスタシアは」
「……うーん。僕が考えているのはそういうことではなくて……」
説明しきれるほど思考がまとまっていないらしく、クライオスの指摘を受けたルーシェンはもどかしげに言い淀む。
「ゼンの話を聞いていると。
リスターは……生きていく為に『意味』が必要な人間だ。このヒストリカで、無為にただ日々を過ごすのは、彼にとっては耐え難い業苦の筈だ。
『猟犬』だった時に兄上の命令に過剰なほど従順だったのも、それが理由だったのではないかと思う。
現在のリスターが、友人の貴方がたから見ても特異に思えるほどにアナスタシア殿に執着しているのは、今は彼女といることで、彼に生きる『意味』が生まれるからなのだろう。ゼンの言う『命の全賭け』と同じニュアンスだが、その内側の理屈の話だ」
「……………」
黙り込んだ二人の前でルーシェンは続けた。
「『女神の末裔』という触れ込みの我々ノイシュバーン家の血筋が偽りだった所為で。王家に忠誠を尽くしてきたリスターの今まで生きてきた『意味』は損なわれ、喪われてしまった。
ただの喪失ではない。感情に則するなら、本来、リスターはイシク族を滅ぼした我が父王を恨み、コンラッド兄上の非人道的な所業を憎んできたのだから。無意味感や徒労感どころか、強い慚愧や後悔、罪悪感に駆られた筈だ。
彼が今、異端審問官の職を辞して尚且つそれを潰そうとしているのも、真の『魔女』とはすなわち『女神クロム』、もしくはその眷属であるイシュしかいないとわかったからだ。異端審問官という職自体が大いなる無駄だったことが判明してしまった。
そもそも、このヒストリカで彼が異端審問官に属していた理由は、女神に仇なす魔女を排除するためだった筈だ。それが実質『女神』を『狩る』部署に存在していたとわかるなど、イシク族の彼からすれば取り返しのつかない失態に感じられたのではないか。
…………彼はそうした感情を誰にも話さないだろうが」
「……それは……言われてみればそうかも知れませんね……」
ルーシェンの話がどこに帰結するかもわからず、ただティレルを分析した内容には説得力を感じる、という風情でクライオスが応じる。
「そうしたリスターの後悔や罪悪感を、アナスタシア殿は存在するだけで払拭してくれる。だから、彼は誰に頼まれなくとも、アナスタシア殿を守る行動に積極的に打って出る。
アナスタシア殿が生きているだけで、リスターは彼女から充分な見返りを得られるのだ」
「……わかるようで、実はさっぱりだな」
ゼンが独り言のようにぼやいた。
ルーシェンは己の思考を更に噛み砕いていく。
「……アナスタシア殿は。
別の過去でリスターの下に就き、異端審問官として働いていた。その時期に彼女が彼から学んだことは、今回の世界線でアナスタシア殿がイシュと対決し、女神の力を取り戻すことに大いに役立っている。
僕が説得するまで、結界を張ってあの屋根裏部屋に籠もっていたことも、リスターの手法に添ってのことだろう。アナスタシア殿にその自覚があったかはわからないが。
窓から飛び降りてしまうような方のままだったら、僕の説得は到底間に合わなかった筈だ。行き止まりに思える状況でも、自らの強みを最大限に用いながら、今回のアナスタシア殿は、解決策が見つかるまでじっとあの状況に耐えていらした。
僕がクライオスから『アナスタシア殿に似ている』と指摘されて喜びを感じるように。リスターも、アナスタシア殿の中に過去の己の事績を見て心が満たされるのではないか。ヒストリカ王国の社会の中で、孤独な境遇に耐えてきたことには『意味』があったと、アナスタシア殿を見ていれば、そう思える筈だから。
裏を返せばこれは、『死に戻り』を繰り返したアナスタシア殿の中にのみ維持することの可能な、リスターの〈死に戻り世界〉への蓄積性だ。アナスタシア殿が健在であられる限り、十数年間の過去や、別の世界線でのリスターの行動も死も、彼にとって無意味にはならない。
だからアナスタシア殿はリスターにとって『唯一無二』の存在なんだろう。世界に唯一人の『女神クロム』と同様、いやそれ以上の価値を、リスターはアナスタシア殿に認めているのではないか。
リスターはある意味、未来しか存在しない男だ。彼には取り戻せない過去はあっても、取り戻したい過去は無い。それを求めることは、アナスタシア殿を喪うのと同義だからだ。
アナスタシア殿がもし再び『死に戻り』を用いてしまった場合……、リスターはたちまち『女神を護る者』『イシク族』として『誤った立ち位置』まで引き戻され、しかも彼自身はアナスタシア殿と出逢う前に戻ってしまう。
よって彼は今現在のアナスタシア殿に、全霊をかけて執着するしかない。
『死に戻り』を経ても『再会』が保てる僕やクライオス、記憶ごと共有できるゼンよりずっと、リスターが死に物狂いになるのも無理はない。彼には今しか機会がないんだ……時が巻き戻されたら、リスターはアナスタシア殿を愛することすら不可能になってしまう。
だから彼が求めているのは、〈過去に『死に戻り』をしていたが今後は絶対にしないアナスタシア殿〉ということになる。
故に、『今』の彼女を守るためならリスターは何だってするだろう。
それこそ何でもだ。
――――――叔母上の投獄でも、兄上の暗殺でも、王位の簒奪でも」
「……なるほど。道理は通りますね」
「……しかし最後。お前よりによって物騒な例ばっかり挙げたな」
クライオスが感心している脇でゼンが呆れ気味に呟く。
ゼンにルーシェンは笑って見せた。
「ただの例え話だよ。リスターに可能でも、アナスタシア殿は許可なさらないだろう。
……ああ。でも。勝手にリスターがやってしまう可能性はあるか………」
気づいたように呟いたルーシェンの言に、
「………………おい」
「…………ああ――――まあ。我々で止めましょう。………可能な限り」
ゼンは絶句し、クライオスはかろうじて正論でまとめた。
(………そこまで必死なティレルが本気になったら。止めるのは無理だろうな)
とは誰しもが思ったが、敢えて口には上せなかった。