| 【6】◀ | 【終幕】 |
「……夢を見ました」
「あン?」
共寝をするようになって暫く経ったある夜更け。
アナスタシアが感慨深げにティレルに告げた。
「未来の夢でした」
「……………………」
ティレルの眉根が寄る。
寝室のダブルベッドの中で、二人抱き合って。
ティレルは己の腕の中に収まっているアナスタシアの額に触れ、赤い髪をかき上げる。
「……クロムの力と関係があるヤツか?」
未だに彼は、アナスタシアがクロムの力に近寄ることに否定的だ。
「いいえ。私やクロムとはあまり関連のない力のように感じます。
……多分、ルーンが見せてくれたのかも。もしかしたら」
「……ルーンって、クロムの仕者のうち性格のいいほうの奴か」
「ええ」
「ただの夢って可能性はないのか?」
「勿論その可能性もありますけど。
クロムの力で未来を見たときは、いつも死の夢ばかりだったのに、今回は違うから。
……希望の持てる、とてもいい夢でした」
「………………どんな夢だ」
「紫の目をした四歳くらいの男の子達が、リンゼル家の庭を走り回ってました。
髪の色は黒・赤・暗褐色で。
玩具の剣と鞭と弓を持って」
「……………」
「全員同じ年頃だったから、兄弟というよりは三つ子だと思います」
「…三つ子………? 俺たちの子ってことか……?」
そう答えはしたが、ティレルの声は愕然としているように響いた。
「ふふ。どうでしょうか。でも、とても聞き覚えのある名前で、それぞれ呼び合っていましたよ」
「………………おい。それってまさか……」
「聞きたいですか?」
「いや。聞くまでもねえわ。……最悪だな。家ン中でまであいつらの名前呼びまくるハメになるのか」
「もし本当に男の子の三つ子だったら。つける名前に迷わないからいいですね」
「お前な………」
「そんなふうにおっしゃっても。他の名前をつけようなんて思いも寄らないでしょう?」
「…………………まあな。
しかしそんなこと言われても、全然現実感ねえけど。
………俺に子供なんてな。
しかも母親がお前だなんて」
「予知夢とは限りませんよ。本当にただの夢かも。……いずれにせよ、未来にならないとわからないことですから」
「そうだな。未来に答え合わせが出来るんなら楽しみに待てばいいだけだ」
ティレルが笑って、アナスタシアの手を取った。
その左手の人差し指にはイシク族の指輪。
そして薬指には、ヒストリカ様式の結婚指輪が填まっている。
「何にせよ。体は大事にしてくれよ、奥さん」
「………………はい」
相手の手に優しく口づけて、ティレルが言う。
彼女の手を握るティレルの薬指にも。
アナスタシアと同じ指輪が填められていた。
(了)