TEMPEST魔女TEMPEST魔女【小説】二次創作

祝福の庭【7】(完)

【6】【終幕】

 

「……夢を見ました」
「あン?」
 共寝をするようになって暫く経ったある夜更け。
 アナスタシアが感慨深げにティレルに告げた。
「未来の夢でした」
「……………………」
 ティレルの眉根が寄る。
 寝室のダブルベッドの中で、二人抱き合って。
 ティレルは己の腕の中に収まっているアナスタシアの額に触れ、赤い髪をかき上げる。
「……クロムの力と関係があるヤツか?」
 未だに彼は、アナスタシアがクロムの力に近寄ることに否定的だ。
「いいえ。私やクロムとはあまり関連のない力のように感じます。
 ……多分、ルーンが見せてくれたのかも。もしかしたら」
「……ルーンって、クロムの仕者のうち性格のいいほうの奴か」
「ええ」
「ただの夢って可能性はないのか?」
「勿論その可能性もありますけど。
 クロムの力で未来を見たときは、いつも死の夢ばかりだったのに、今回は違うから。
 ……希望の持てる、とてもいい夢でした」
「………………どんな夢だ」
「紫の目をした四歳くらいの男の子達が、リンゼル家の庭を走り回ってました。
 髪の色は黒・赤・暗褐色で。
 玩具の剣と鞭と弓を持って」
「……………」
「全員同じ年頃だったから、兄弟というよりは三つ子だと思います」
「…三つ子………? 俺たちの子ってことか……?」
 そう答えはしたが、ティレルの声は愕然としているように響いた。
「ふふ。どうでしょうか。でも、とても聞き覚えのある名前で、それぞれ呼び合っていましたよ」
「………………おい。それってまさか……」
「聞きたいですか?」
「いや。聞くまでもねえわ。……最悪だな。家ン中でまであいつらの名前呼びまくるハメになるのか」
「もし本当に男の子の三つ子だったら。つける名前に迷わないからいいですね」
「お前な………」
「そんなふうにおっしゃっても。他の名前をつけようなんて思いも寄らないでしょう?」
「…………………まあな。
 しかしそんなこと言われても、全然現実感ねえけど。
 ………俺に子供なんてな。
 しかも母親がお前だなんて」
「予知夢とは限りませんよ。本当にただの夢かも。……いずれにせよ、未来にならないとわからないことですから」
「そうだな。未来に答え合わせが出来るんなら楽しみに待てばいいだけだ」
 ティレルが笑って、アナスタシアの手を取った。
 その左手の人差し指にはイシク族の指輪。
 そして薬指には、ヒストリカ様式の結婚指輪が填まっている。
「何にせよ。体は大事にしてくれよ、奥さん」
「………………はい」
 相手の手に優しく口づけて、ティレルが言う。
 彼女の手を握るティレルの薬指にも。
 アナスタシアと同じ指輪が填められていた。

 

 

(了)