ずるりとした触感があって、ティレルが自分の中から去ったとわかった。
「……っ………、」
こんな形で同意も無く、ティレルと体を結ぶ羽目になってしまった。
後悔で、今以てアナスタシアの目は涙に濡れている。
頭上からティレルの手が伸びてきて、頬を汚すアナスタシアの涙を拭った。
その手つきを優しいと感じるのは、生来ティレルが器用と言うだけのことなのだろうか。
それとも別の理由があるのか。
「……ずっと泣いてたな。
そんなに嫌だったなら何故、抵抗したり懇願したりしなかった?
お前全然暴れなかったな。
俺の脅しがそんなに利いたのか?」
声もまた。意外なほどに優しかった。
自分を奪う前のティレルの荒んだ瞳をアナスタシアは思い返す。
気が済んだのか、己への同情か。今はあの光はティレルの目からは消えている。
「ッ……ぅ、いいえ……」
却って身を固くして、アナスタシアは首を横に振った。
これを言ったらティレルを怒らせる。
その自覚はあったが、己の心を押し止めることはできなかった。
「………なさい…」
「あ?」
小さく呟いたアナスタシアの言葉。
ティレルは聞き間違いかと思ったようだ。
「…ごめん、なさい……」
「! ………」
二度目はティレルの耳にも正しく届いた。
だが意図は伝わらず、ティレルの表情は険しくなる。
「――――なんでお前が謝る」
何を言っているか分かるはずも無かった。
アナスタシアは彼の顔はもう見ていなかった。瞼を閉じて世界を閉ざし、己の後悔をついに口にする。
「死んで、しまえば、よかった……もっと早くに……」
「……!」
アナスタシアの涙を拭うティレルの手が強張った。
紫の目に緊張が走る、その理由を、アナスタシアは知る由もなかった。
「コンラッドに捕らわれたとき。舌を噛んで、死んでしまえれば……
あいつに、犯されるくらいなら、絶対に、そうしたのに」
死ぬことによってのみ発揮される『死に戻り』の力。
ティレルを始めとした他者が思うより、アナスタシアにとって『死』はずっと身近なものだ。
だが監禁や逃避行やティレルの行為によって疲弊した今のアナスタシアには心の余裕がなく、ティレルが『死に戻り』を知らないことを失念していた。
暗殺者であった彼にとって、『死』は全ての終焉を意味する言葉であることも。
「っ私が……、死の判断を過ったから、死ぬのが遅すぎたから、……ティレル様が、コンラッドを裏切って、こんなことに……」
「………何を言ってやがる……赤毛……」
苛立ったようなティレルの言葉が頭上から降りてきた。
優しかった手は一転して、アナスタシアの頭を掴み、寝台の上に押しつける。
「俺にレイプされたくせに、俺に同情してやがるのか!?
俺を憐れんだから好きに犯らせたとでも言うつもりか!」
泣き濡れた赤い目を開いてアナスタシアはティレルを見上げた。
「っ……ち…が………」
「何が違うんだ!」
ティレルは声では自分を怒鳴りつけてくるくせに。
その表情はむしろ今にも泣き出しそうだった。
『後悔しない選択とは』
『己の糧となるものを選び抜くこと』
近い過去にティレル自身から聞いた言葉だ。
そして今。
彼は己の選択に、後悔しか持たぬ筈だ。
アナスタシアは顔をくしゃくしゃと歪めて声を上げた。
「私の所為で。
ティレル様が……、イシク族の再興を諦めることに……」
「!」
ティレルが紫の目を見開いた。
「貴方にそんな辛い選択をさせてしまうなんて、思わなかった……!
私を、コンラッドから守る為だけに…そんなこと……」
「――――――」
そもそも自分はティレルによって、コンラッドから。
――――長いこと庇われ、守られていたのだ。自分では無自覚なままに。
異端審問官として共に仕事をするより以前から。
ルーシェン殿下と出逢った夜。自分が忍び込んだ行政官の部屋にいたのは『猟犬』――すなわちティレルだった。自分では彼をティレルと判断は出来なかったが、襲いかかってきたティレルのほうは自分を視認していた筈だ。あの時点で既に、アナスタシアをコンラッドの敵とティレルは認識していただろう。
最初の『魔女裁判』の前に異端審問官の助手として登城したとき、「公僕がそんなに王族の住む場所を睨むな」とティレルに窘められた。彼は知っていたのだ。同じ時期、「王族に叛意を持つな」とも釘を刺された。イシク族の彼にとって女神と王族への忠誠は絶対の掟であった。
サミーの裁判の後、名を出しこそさえしなくとも、ティレルの腕の中で泣きながら敵への恨み言を述べた。アナスタシアの憎悪の対象がコンラッドであることを知りながら、ティレルは、それをコンラッドには報告せずにいてくれたのだ。
『猟犬』として、王族に仕えるイシク族としての彼であれば、コンラッドへの敵意を持つ人間は真っ先に報告すべき事柄であったはずなのに。
コンラッドの知るところとなればティレルの立場が危うくなるのは明白だったにも関わらず、彼はアナスタシアからもコンラッドからもそれを隠し通してくれていたのだ。
(ティレル様……)
彼の努力を、自分が全て打ち壊した。
彼の苦しい立場を思いやることもせず。
ティレルの執務室で不用意に。そこにコンラッドがいたとも気づかず、イシク族の花の名を口にしてしまったことによって――――。
「最初から。……貴方は私を庇って、コンラッドからうまく隠してくれていたのに」
「………………」
「私が。あの時、それを台無しに。
自分だけでなく、ティレル様のお立場を危うくして。
……結局、こんなことに。
本当に、ごめんなさい………」
ティレルに犯される直前でさえ。
舌を噛もうと思えば出来たはずだ。
「一刻も早く死ななくては、と。
思っていたのに……できなくて。
ティ、ティレル様にこんなに求められることは、二度と無いかも、と思ったら……」
ティレルの眉根が寄る。
「………お前……
俺に抱かれたかったってことか?」
何処か茫然としたようなティレルの問い。
「……私にとって…死ぬことは、慈悲と同じなんです……
ティレル様が私を殺すとしても……それが貴方の選択なら、私は従いました。
……イシク族の貴方が、私を連れて、一緒に逃げて下さるとは、思わなかったから……
ティレル様を受け入れたのは。
同情なんかじゃなくて。
……私が、欲張りで、ティレル様を欲しがってしまったから。
本当はその前に死ぬべきだったのに」
「っ……、」
ティレルの体がビクリと震えて、その手が、強い力でアナスタシアの剥き出しの肩を掴んだ。
「―――だからティレル様が私を殺して気が済むなら、そうして下さい」
それをされてしまったら、『死に戻り』を果たした後も、ティレルへの気持ちの一部分は二度と戻らないかも知れない。
だがイシク族の再興を自分の所為で諦めざるを得なかった、その恨みは、アナスタシアにも理解できるものだった。
自分を犯したのは。
私に彼の怒りをぶつけ、それによって私を罰したつもりなのだろう。
彼を受け入れた私の心境とは、全く違う意図の筈だ。
(―――思い残すことは。多分、もう無い)
自分の体の中から、腿に向かって、ティレルの熱が滴っていくのが自覚できた。
『死に戻り』を実行して。
ティレル様を解放しよう―――彼がイシク族を見失った、この辛い世界から。
「……俺がお前を殺すって言ったら受け入れるってのか」
暫くの沈黙の後。
ティレルが呆れと、侮蔑に似た感情を同時にぶつけてくる。
アナスタシアの頭から一度手を離し、ゆっくりと、鎖骨から喉を撫で上げてきた。
「だったら。望み通り殺してやるよ」
「………………」
ティレルの出した結論を聞き、アナスタシアの涙はようやく弱まってきた。
知人に殺されて生を終え、『死に戻り』したことは今までに無い。
「ティレル様……」
泣き濡れた赤い目でティレルを見上げる。
彼がこの世に生きる意味は私の所為で喪われた。
彼の生き甲斐を奪うことになった私を憎むのは当然と言える。
「―――アナスタシア」
滅多に呼ばれぬ名を口に上せられて、ひく、と体が反応した。
首を絞められるか、刃を心臓に突き立てられるか。
或いは異端審問官や『猟犬』の技術を用いて、拷問され、嬲り殺しにされるかも知れない。
辛くても堪えるしかないが、堪えられるだろう。
―――――ティレルが相手なら。
異端審問官の助手として、仕事を一つ覚え、一つ褒められるごとに嬉しかった。
『猟犬』としてコンラッドから庇われるだけでなく、『魔女裁判』の間じゅう、自分との契約を推し進めようとする破滅の魔女からも庇ってもらった。泣く度に慰めてもらい、成長の為の言葉をもらい、ずっと慕ってきたのだ。
『ティレルに対し恋愛感情があるのか』と、自分を捕らえたコンラッドに問われても。
もっと深い部分での信頼と敬意なのだと、それがあの男に分かる訳がないと、そう答えた。
ティレルの顔が至近に近づいた。
「もう一度訊くぞ。お前が死を選ばず、俺の言うなりになって抱かれたのは、お前が俺と寝たかったからなんだな?」
「………、はい、」
泣き腫らした顔を歪めながら、アナスタシアは肯定した。
「それで。今は俺に殺して欲しいのか?」
「………ティレル様に、ではなくとも。自分で、死ぬべきだと……、」
だがアナスタシアは最後まで言い通すことが出来なかった。
ティレルの唇が降りてきて、声ごと口を塞がれた。
「っン……、」
舌をいきなり押し込んでくることも無く、あやすように両唇を舐られる。
「ふ、っ、ん、っティレ…、ンぅっ」
名を呼んで声を上げかけたが、それすらもキスのあわいに吸い込まれて立ち消えた。
キスを続けながら後頭部に手を差し込まれ、手首と腕に首と背を抱えられて、上半身を抱き起こされる。
(っ………)
小屋で目を覚まして以来、ここまでティレルに心ごと尊重されていると感じる行為はこれが初めてだった。
「は、ぁ、…ぁふ」
寝床の上に二人座り込んで、ティレルの両腕の内側で、アナスタシアは寝乱れた裸身のままティレルのキスに応える。
今更優しくされたら、泣きたくなってしまう。
ティレルの舌が欲しくて、アナスタシアは自ら口を開き、それでも果たせぬと分かると、むしろ積極的にティレルの唇を求め始めた。
「ンっ、ん……、」
アナスタシアの小さな舌がティレルの唇を這うと、相手の体がぴくりと震える。その内側に舌先を差し込んで、最前ティレルにされたように唇の裏を舐め上げる。
「んく……」
ようやく歯列の奥からティレルの舌が伸びてきて、アナスタシアの舌に絡んでくれた。
「んふぅ……」
ティレルの片手がアナスタシアの乳房に伸びている。
ゆるやかに揉まれると、先程ティレルに占領された体の奥深くがじわりと熱を帯びて存在を主張してくる。
「ん……ぅ…」
キスを続けながら、ティレルの手が下腹部に降りていく。
再び秘唇を指で探られても、もはやさほど嫌悪や恐怖は感じなかった。
唾液の糸を引いて唇同士が離れ、
「ちゃんと殺してやるよ」
甘い囁きのようにティレルの言葉が耳元で響く。
座位からゆっくりティレルがアナスタシアの尻を持ち上げて、その下に己の腰を潜らせる。
「ッ……、」
その場所に竿先を突き当てられて、初めて、アナスタシアは再びティレルが勃起していることに気がついた。
「あっ、あ、ティレル様、っなに、……を、」
「殺してやる……って、言っただろ。今実行してる」
「え………、ぁ、や……!」
ティレルが声を掠れさせながら、ぐい、と再び屹立が差し込まれてきた。
ぐちょ、と卑猥な音がして入り口を雁首が通り抜ける。
「っひぁ、あ、あ…、や……! っンぁあ!」
一度押し開かれ、精を撒かれた場所は、熱と水分に潤って、まるで歓迎するかのようにティレルを受け入れていた。
何よりティレルは抑制が利いており、先程のように強引に押し進んでくるのではなく、アナスタシアの反応を計るように中を探ってくる。
「さっきは俺のほうに余裕が無かったからな……、
今回はたっぷり、可愛がって、悦ばせてやるよ」
「……! あく……ぁ……!」
挿入を受けると思っていなかったアナスタシアは惑乱したが、すぐに、
「! ッんぁ、ひぃ! や……そこ、ダメ……!」
ある場所に刺激を受けた途端に喘いで、くたくたと力を失った。
頽れるように寝台に上体が倒れ、再び仰向けでティレルを受け入れる状態に陥った。
「は……、ココか」
ティレルが外側から下腹部に手を当て、内側から、更に先程と同じ場所を竿先で突いてくる。
「ッ! んひぅうっ!」
ひといきに体全体に甘い痺れが走って、下肢からさえ力が抜けてしまう。
無意識のうちに両脚が大きく広がって、その場所をティレルに押しつけようというようにアナスタシアの腰が揺れた。
「やぁあ…、そこ……、いや…、ティレル様……、」
ぐずぐずと泣きながら声を上げるが、ティレルには甘いねだり声にしか聞こえない。
「なるほど。間違いなくここだな」
下腹部に手を押しつけつつ、腰を小刻みに動かしてティレルが愉悦の刺激を繰り返し与えてくる。
「ッ、んぁ、あっ、やぁ…ダメ、……っ、やめてぇ…、っティレル、様…、ンはぁっ」
口に上せる拒否はただ惑乱が言わせる言葉であって、アナスタシアの体は、溶けたように緩んでティレルの愉楽を享受している。
頭上でティレルが満足げに笑みをはいた。
「気持ちよさそうだな? そんなにイイか?」
「! っ……! ん、ぅ、」
ティレルの声は支配的だが気遣う気配のほうが強い。自分が陥った感覚にティレルから名を与えられ、アナスタシアの思考はむしろその言葉に囚われる。
「や……、ティレル、様……なに……ぁ、これ……っ、」
「お前……、どんどん濡れて、俺を締め付けてくるぞ」
「っ…ふぁ、あぁ……ティレル様……、ッ、ひ!」
ティレルが下腹部から指を伸ばして、接合部の上辺近くを撫で上げ、秘芽を愛撫した。
「あッ、や、んくッ、あぁあ……ッ…!」
ティレルを受け入れた場所がひといきに潤い、快楽の奔流となって全身を経巡る。
「っ……、」
さすがにティレルが耐えるような息を漏らした。
アナスタシアの内部が酷く痙攣し、ティレルの竿を強く締め上げたからだった。
「い…、あ、ぁ…、っティレル様……! んぁあ……!」
アナスタシアの下肢がガクガクと震え、得体の知れぬ感覚に恐怖と陶酔の双方を味わう。
「あ……、ぁ…っ、く……!」
暫くは荒い息を吐くだけで、言葉さえ紡げなかった。
やがて、体内の震えが弱まった頃に、ようやく。
「ふ……、死ぬの、よかったろ……?」
愉悦の余韻に未だ支配されているアナスタシアに向かってティレルが微笑してきた。
(『死』………?)
屹立はまだアナスタシアの内部に埋め込まれ、存在感を主張している。
ティレルの男の手が伸びてきて、アナスタシアの両の乳房に触れた。
「っあ、」
親指で乳首を二つながらに甘く刺激されると、なだらかになっていた快楽の波が再び揺り戻ってくる。
ティレルが、アナスタシアに覆い被さるように上体を倒してきた。
「もっと愛してやる」
「――――っ」
口づけと一緒に甘い言葉が降りてくる。
ただそれだけでアナスタシアの心と体は愉悦に震えた。
痙攣の名残を残したその場所で、ゆっくりとティレルが抽送を再開する。
「ふぁ、は、ティレル様、んう、」
唇の端にキスを受ける。
快楽の汗に濡れた剥き出しの胸同士が擦れ合い、刺激が伝わる。
「アナスタシア――――」
「っ……」
名を呼ばれると。
魂の深いところから悦びがわき上がる。
始めに穿たれた時と全く同じ姿勢なのに。
ティレルに抱かれ、守られ、愛情を受けていると感じ取れる。
「はっ、は、あぁ、」
「……気持ちいいか?」
「ん、んぅ、」
耳元でティレルに囁かれて、アナスタシアは頷いた。
「っき、気持ちイイです、ティレル様、」
突き上げられても屈伏感はなく、むしろティレルの意を迎えたいというかのようにアナスタシアの腰は揺れ動く。
気持ちいいという言葉では足りない。
アナスタシアはティレルにしがみつき、脚さえティレルの腰に絡めて、心の中に今の思いを表す言葉を見つけた。
「は、…はぁ……っ、ティレル様……、すき……、ぅ、」
「俺もだ」
「っ……」
ティレルに組み敷かれた心地よさでつい口走ってしまった言葉に答えが返ってきて、アナスタシアは喘ぎも止まるほどに驚いた。
驚愕の表情で顔を見上げられて初めて、ティレルは己が何と言ったかに気がついたようだった。
「あ――――」
体を結び合うことによって既に充分に赤らんでいたティレルの頬が、いっそう色を濃くする。
やがて。
「……先に、言うべきだったな」
至近で浮かべられるティレルの苦笑。
「お前が好きだから。コンラッドからお前を攫ったんだ。――――アナスタシア」
紅玉の目を見開いてティレルを見上げるアナスタシアの唇に、再びティレルの口が寄せられてくる。
「ティレ――――」
皆まで言えず、声は口づけで奪われた。
「ン、ん、ぅ」
ティレルのキスが。
最初から今に至るまで、ずっと優しかった理由がわかった。
自分への罰で犯されたのではなく。求められてティレルに抱かれたのだと。
「っ―――」
ティレルの導きによって愉悦の頂点すら知った今、こんなに嬉しいことはない。
ティレルの頬に両手を当てて彼の顔を撫でながら、アナスタシアも接吻を返す。
「んふ、ふゥっ」
「っ、アナスタシア…」
キスの合間に名を呼ばれ、喜びが大きな愉楽を連れてくる。
「んぁ、あ、ティレル様、」
体と心を溶かされた後には。
その行為は睦み合いとしか呼べぬような癒着に変じていた。
ティレルに抉られる場所は熱と愉悦の坩堝と化している。
接合部からぐちゅぐちゅと淫靡な音が立つ。
イシク族の刺青に覆われたティレルの胴に手を回して、アナスタシアは心ごと彼に縋りついた。
「はぁっ、は、ぁ、ティレル様、もっと、」
愉悦よりも深い熱に溺れて、アナスタシアがせがむ。
体全部が甘く溶けて、ティレルの中に混じり合ってしまったようだった。
ティレルは繋がったままアナスタシアの上体を抱き起こして尻を己の腿の上に持ち上げ、座位の体勢を取らせた。
「アナスタシア」
「んぅ、あ、ああっ」
自重で深く穿たれ、更には下からティレルの突き上げを受けて、それでもアナスタシアは快楽から醒めることはなかった。
ティレルの首に腕を回し、胸肌を擦りつけ合い、自らも腰を揺さぶる。
「ッ……あ…ぁ、ああ……っ!」
「く……!」
再び己の内部がビクビクと痙攣し出した頃には、ティレルも限界を迎えたらしく、アナスタシアの中で己とは別の熱が爆ぜたのがわかった。
「あ……ぁ、う……」
「んく……」
背を強く抱き締められて、ティレルに支えられる。
「はぁ、は……、ティレル様……」
熱の名残を互いのキスで確かめ合う。
「んぅ……」
やがて尻を優しく持ち上げられて、竿を引き抜かれる頃には。
過度の緊張と疲労で、アナスタシアは気を失うように眠りについていた。
| 【3】(完) |