<其乃二> 夜も更け始める頃。 寝所の薄闇の中で宗三左文字は溜息をついた。 二組の寝床が目の前に敷かれ、脇には歌仙兼定が着替えられるよう、彼の寸法に合った白浴衣が畳まれて置いてある。宗三左文字自身は既に夜着に着替え、座して歌仙兼定を待っている。 歌仙兼定に強く情欲を煽られたのは夕刻で、あれから時間を置き、湯屋で風呂まで使ったのに、歌仙兼定と身体を繋げると想像するだけで、ふたたび身体の芯が燃えてせつなくなってくる。歌仙兼定から教わったことしか知らぬ宗三左文字は己を慰める術も知らず、ただ、歌仙兼定が自分のもとへやってくるのを待つしかなかった。 隣の居室から、歌仙兼定の活けた梅花の香りが寝室にも強く漂ってくる。 夕刻、歌仙兼定の煽りを強く拒んだ結果が、己の欲熱をひどく焦らされることになろうとは、宗三左文字は予想もしていなかった。あのときに歌仙兼定に逆らわず、靡くような態度で彼に従うほうがよかったのだろうか、と宗三左文字は自問する。そうしておけば今頃は、歌仙兼定の腕の中で淫楽への飢えを充分に癒やされて、満足な眠りを貪ってでもいられただろうか。 その考え方を浅ましいと感じるほどの潔癖な自我も、夕刻の己を後悔するような淫奔な内省も、いまだ宗三左文字の中には生まれてはいなかった。ただ歌仙兼定が自分を満たしてくれることだけを考えて、宗三左文字は、契りを約束した相手が来るのを待っていた。 「……宗三左文字どの」 部屋付きの短刀の子に案内されて歌仙兼定が姿を現したのはそれからほどなくしてからだった。 自分を迎える宗三左文字の顔が情欲に火照ったままなのを、歌仙兼定は密かな満足をもって見下ろした。敷かれた二組の夜具の前で正座していた宗三左文字の姿はいかにも夜の営みを待ちきれぬ風情で、通常ならば興ざめするほど世俗的な光景のはずだが、世慣れぬ宗三左文字の場合は彼の、歌仙兼定への純粋な思慕や性情だけが気配として部屋に立ちこめていた。楚々としたその様に、歌仙兼定は宗三左文字への性的な支配欲を強く煽られる。 「歌仙兼定……」 欲熱の期待に震える、自分の名を呼ぶ声。歌仙兼定を見つめる左右色違いの瞳はひどく潤んでいた。 「待たせてしまったかな。宗三左文字どの」 「………ええ……」 待ってなどいない、と嘘をつくだけの自意識もなく、宗三左文字は正直に答えた。 歌仙兼定は微笑んで、服も脱がぬまま宗三左文字の前に膝をつく。 「今日は思慕する相手に贈り物をする日だ、と言ったのを憶えているかい? ……僕も、きみから贈り物が欲しいね」 「………ちょこれいとう、のことですか……?」 夕刻の話を律儀に受けて、寝室には歌仙兼定が残していった猪口令糖の菓子箱が置いてある。 「いいや……僕が欲しいのは、きみからの接吻かな」 「……………」 柔和な笑みで歌仙兼定に言われ、宗三左文字は頬を赤らめて唾を飲む。 それでも宗三左文字は従順に、顔を近づけた歌仙兼定の唇に、黙ったまま口を寄せてきた。 「ン……っ…」 薄い両唇でそっと下唇を食まれて、歌仙兼定は目を半眼に閉じる。 誘うように歌仙兼定が口を少しだけ開くと、おずおずと宗三左文字の舌が侵入してきた。 「ン……ふぁっ…、」 慣れぬ舌使いで歌仙兼定の舌に縋ろうとしてくるのが楽しくて、歌仙兼定は口を大きく開いて宗三左文字の舌をさらに呼び込む。 「んン…くふ……っは、」 宗三左文字の舌にすぐには応えず、わざと自分の舌先を逃がして、歌仙兼定は焦らすように接吻を続けさせる。 「ンぅ………、」 翻弄されて、歌仙兼定の至近で、宗三左文字が困ったように眉を寄せるのが見えた。 接吻を続けたまま歌仙兼定は微笑み、舌先の動きを急に変えて、宗三左文字の舌先をからかうようにつついてやる。 「ッ、ふゥっ」 舌と舌で痺れるような甘い熱が伝わり、宗三左文字がひくりと肩を震わせた。 「ん、んふ、」 歌仙兼定の口中深くに差し入れた舌から歌仙兼定の味と熱が伝わり、宗三左文字の身体はすぐに情欲に蕩けていく。歌仙兼定の両肩に白い手をさし伸べて、もはや陶然と、仕掛けさせられた接吻を自ら望んで宗三左文字は続けていた。湧き出す唾液が唇から溢れ顎を伝わって浴衣に滴るのにも気づかず、歌仙兼定の力強い舌を追いかけ、舌先を触れて絡ませ、睦み合うように絡まれながら、唾液を吸われれば送り込み、薄い唇で相手の唇を食むようにして、夢中で歌仙兼定との接吻を貪った。 「ン……んん……、」 やがて歌仙兼定の手に制されるようにしてふたりの顎は離れ、唇と唇から混じり合った唾液の糸を滴らせて口づけは終わった。 「ふふ……、贈り物をもらったら、次は、きみが僕を食べる番……だったかな?」 歌仙兼定に言われて夕刻の話を思い出し、羞恥を強く煽られた宗三左文字は顔をひどく赤らめた。 「………あ、あの……、」 「でもその前に」 宗三左文字が何かを言い立てる前に、歌仙兼定が機先を制する。 「僕が先にきみを食べたいな……きみの、ここを」 歌仙兼定が淫蕩に微笑んで宗三左文字の首元に当てていた手を撫で下ろし、浴衣の下で立ち上がりかけている宗三左文字の竿に浴衣越しに触れた。 「っ……、」 「接吻だけでこんなになっているのかい」 ひくりと身を震わせた宗三左文字の耳元で歌仙兼定が囁く。 「それとも夕方からずっと……かな? 僕が欲しくて……待っていた………?」 「………、は、ぁ、っええ………、」 夕刻の二の轍を踏むまいと、羞恥を強くこらえて宗三左文字が正直に答えてくる。 浴衣越しにさわさわと歌仙兼定の指に触れられるだけで、そこに勢いよく熱が流れ込んで行くのが宗三左文字には自覚された。 「じゃあ宗三左文字どの。立って」 「………え……?」 歌仙兼定の意図がわからず宗三左文字が相手を見ると、歌仙兼定は情交を仕掛けるときの常の、少し悪い笑みで宗三左文字を見つめていた。 「きみのここを僕が宥めてあげるから。食べるように口でよくしゃぶって、きみを心地よくしてあげるよ」 「ッ…! ………、」 ばっと顔を赤らめて、それでも淫欲には打ち勝てぬという表情で。 宗三左文字は困惑して色違いの両目で歌仙兼定を見返し、羞恥に今にも泣きそうな顔のまま、歌仙兼定の目の前にゆっくりと立ち上がった。 「宗三左文字どの。浴衣の裾を捲ってごらん。……そう。もっとだよ」 座った歌仙兼定の顔の前に宗三左文字の腰が来るような至近に立たせて、歌仙兼定が恋人に指示を出す。 「………っ…」 顔を真っ赤に染めて、宗三左文字は自分で浴衣の裾を捲り上げ、歌仙兼定に促されるまま、腰骨と、腰にかかった肌着が露出するまで腕で浴衣を引っ張り上げる。腰帯はまだ宗三左文字の腹に締まっており、腹から上の襟は整ったまま、下肢だけが目もあやに露出し、しかもそれを宗三左文字が自ら裾を捲り上げて見せているという絵面に、歌仙兼定は満足げに見入った。 歌仙兼定が手を伸ばして肌着ごと宗三左文字の性器に触れると、強ばりかけた竿が弾力をもって歌仙兼定の指に応えてくる。 「ンっ…、ふ……、」 頭上から、触れられて吐息を漏らす宗三左文字の声が降ってきて、歌仙兼定は宗三左文字の竿と陰嚢を撫でながらその顔を見上げて笑った。 「宗三左文字どの。声を出すのを、なるべく抑えてみてくれないか……?」 宗三左文字は困惑する。 「ど……どういう意味でしょうか……?」 「できるだけ口を閉じて、声が上がるのを我慢してみてくれ、ということだよ。……きみが、感じ入った声を出すまいと我慢するのを聞いてみたいんだ」 「そ……そんなことがしてみたいのですか……?」 「ふふ。そうだよ」 声をこらえさせるのにはもうひとつ理由があったのだが、それは歌仙兼定は敢えて宗三左文字に説明しなかった。 「…わ…わかりました……」 宗三左文字は素直に答え、歌仙兼定が見上げている前で薄い唇を引き結ぶ。 相手の従順さに満足して、歌仙兼定は宗三左文字の腰に視線を落とす。 指で肌着をゆっくり取り去り、宗三左文字の性器を露出させる。 「僕がきみに奉仕するところを、よく見ていてくれ……宗三左文字どの」 「ンっ…」 宝物に触れるように、優しく竿を撫でながら歌仙兼定が言うと。 指示通り口を噤んだまま、宗三左文字が肯定の返事を下ろしてきた。 強ばり始めてはいてもまだ下を向いたままの宗三左文字の竿先を指で支えて擡げさせ、歌仙兼定は横合いから、下から掬い上げるように舌を伸ばして竿の中ほどに触れた。 「ンっ! く……、」 口が閉じている所為で、宗三左文字の鼻先から強い息が漏れた。 歌仙兼定は舌を離さぬまま、ちらりと目を上げて、宗三左文字が自分を見ているかどうか確認する。 「ンっ…ん…、」 歌仙兼定と視線が合うと、宗三左文字がぴくりと赤い頬を歪め、色違いの目がいっそう潤んだ。 触感だけでなく視覚でも宗三左文字の淫靡を煽っていることを確認し、歌仙兼定は竿を舐る作業に集中した。指で竿先を上向きにさせ、根元から、唇全体で、文字通り食むように竿を刺激する。 「ん、ン、んン…、」 宗三左文字の腰が揺らぎ、上から快楽に堪える声が降ってくる。 「だいぶ強ばってきたね……宗三左文字どの……」 舌を絡めて、竿全体に唾をまぶしながら合間に歌仙兼定が言う。 「ンっ…ふ、んん」 「きみは此処を舐められるのに弱いから……、少しは咥えられるのに馴れて、もう少し我慢できるようにしたほうがいいだろうね」 「ンっん……」 肯定とも羞恥からの拒否ともわからぬ宗三左文字の鼻息が漏れた。 舌を伸ばして、ゆっくりと下から上に幾度も擦り上げると、宗三左文字の竿は支えも必要なくなるほど反り上がっていく。 「気持ちいいかい…?」 「ン……ん」 今度は間違いなく肯定の返事だった。 歌仙兼定は微笑して、唾液をまぶされて摩擦を失った竿を指で扱きながら、唇は陰嚢に寄せる。 「ふっ! ん……、」 陰嚢を唇で挟んで食み、幾度か吸い上げるようにしながら、硬さを増していく竿を指で擦っていく。 そんな歌仙兼定を見下ろしながら、宗三左文字は体内の熱をどんどんと溜めていった。 「ンっ! んく………、」 宗三左文字の目には、歌仙兼定の鼻が宗三左文字の薄い陰毛に押しつけられているのが見える。性情を高めた己の性器の奥に歌仙兼定の整った顔が見え隠れし、その唇や赤い舌が時折覗ける。ふわふわと周囲に舞う二藍色の歌仙兼定の髪が、宗三左文字の白い肌に触れ、くすぐったさが性感をさらに煽っていく。 天下人の佩刀である自分と大名差しの歌仙兼定との身分差は、意識せずとも常にふたりの間に横たわっている。互いにそれを殆ど自覚することもなく日を過ごしているが、床を共にするときだけは別だった。体を繋げる際の歌仙兼定の自分への支配欲が、下克上めいた諧謔から来ているという程度のことは、さすがに宗三左文字にも察せられていて、それは時折、今日の夕刻のように、宗三左文字の側からの反発となって表面化することもあった。 そんな歌仙兼定が文字通り、今は跪いて宗三左文字に伺候している。穿たれるのは自分で穿つのは歌仙兼定であるのに、自らへりくだるように宗三左文字に舌と唇で奉仕する歌仙兼定の姿に、自分の中の高い気位が刺激されるのを自覚して、宗三左文字の背を快楽が駆け抜けた。 硬化してきた宗三左文字の竿を歌仙兼定が手指全体で掴み、律動的に扱き上げ始めた。唇は相変わらず陰嚢に寄せられ、舌と唇肉で袋を甘く刺激していく。 「ふっ、ふ、ンぅ…、ぅくッ………」 快楽に力が抜けて体が揺らぎ、唇からも緊張が失われて、宗三左文字の口から息が漏れだした。 「ふ…、声が漏れてきているよ、宗三左文字どの……」 扱く手を止めずに口を袋から離し、唾液に濡れた唇を舌で舐め上げながら歌仙兼定が指摘した。 「ンっ…ぅ………、」 宗三左文字は裾をたくし上げている手を一本に減らしてまとめて裾を持ち、声が漏れないよう左手で己の口を押さえる。 口呼吸が阻害されて体内の酸素が不足し、宗三左文字の顔はますます紅潮していく。 「ふ……かなり勃起してきたね、宗三左文字どの」 歌仙兼定が昂奮に頬を赤く染めながら宗三左文字の竿を満足げに眺める。体内が酸素不足になると筋肉が収縮して勃起が早まることを、むろん宗三左文字は知らない。 宗三左文字に奉仕を続け、相手の淫熱を間近に感じる歌仙兼定は、自らも熱さを自覚して、手早く服を脱いでいった。 「そろそろ…もっと、強い刺激が欲しいだろう……? 宗三左文字どの……」 半裸になった歌仙兼定の挑戦的な緑の目が、口を押さえて快楽に堪える宗三左文字の顔を見上げた。 「ンん……っ、ン、」 どう答えたらいいかもわからず、宗三左文字が呻く。 歌仙兼定は笑って、頭を擡げた竿先を見せつけるように舌で掬い上げ、両唇の中に先端を飲み込ませた。 「ふッ……、ンン………!」 びくり、と宗三左文字の腿が震え、喉から声が漏れる。感じ入った声が宗三左文字の掌に阻害されて、犯される者が犯す者の手に口を塞がれているような妄想が歌仙兼定の脳裡に浮かぶ。実際には宗三左文字を嬲りながら、その口を自分の逞しい手で塞ぐような乱暴なことはできないから、宗三左文字に口を押えさせることは、歌仙兼定の欲を仮想的に果たして歌仙兼定を満足させていた。 口を塞いだ宗三左文字の喘ぎがもっと聞きたくて、歌仙兼定は口の中に含んだ筒先を舌の中程で優しく舐め、先走りを誘うように先端を刺激する。 「ッ、ンぅっ、……ンん…っ」 歌仙兼定の意図も知らず、従順に己の手で己の口を押さえて、快楽に身を震わせながら宗三左文字は立ち尽くしている。 「んふ………、」 歌仙兼定の口の中で宗三左文字の屹立はますます膨張し、滲出液が口内に苦味をもたらし始めていた。歌仙兼定は本格的に宗三左文字の竿を咥え込み、自ら喉奥深くに屹立を突き込んで、試すように吸い上げる。 「ッ! ンっ…! ンぅ………ッ」 びくびくと自分の目の前で宗三左文字の腿が揺れるのを視界に収めながら、歌仙兼定は一度竿を口から引き抜いた。 竿先から、歌仙兼定の唇、そして顎へ、唾液と先走りの混じった液体が淫靡に糸を引いて滴る。 「宗三左文字どの……、だいぶ体に熱を溜めたようだね」 「んっ……ぅ…、」 どうしても漏れる声を強く掌で押さえ込みながら、宗三左文字が歌仙兼定を見下ろして頷いた。 宗三左文字と同じくらい、歌仙兼定のほうも、奉仕と己の昂奮の所為で息が熱くなり、頬が赤らんでいる。 「もう少し深く煽ってあげるから……、いつでも出してくれていいよ。僕の口の中にね」 「……………ッ、ふ…ぅ……、」 したことのないことを許可すると言われて、宗三左文字の眉が困惑に歪んだ。だが実のところ、目の前で汁を垂らして震える屹立の様子から、宗三左文字はそう長くは持つまいと歌仙兼定は踏んでいた。初心が過ぎて、自分がどれほど淫楽を感じているか、或いは逆に如何ほど淫熱に耐えられるかを、宗三左文字はまったく理解できていない。 高い矜恃を持つのに従順で、羞恥心が強く、世慣れぬのに快楽に脆い、宗三左文字の心と体。 すべてを恣に支配して、癒着するように彼を所有する。唇や舌で宗三左文字のどの部位であろうと愛撫することが不浄で屈辱的だとは、歌仙兼定はまったく感じていなかった。 宗三左文字の両腿を両手で押さえて、歌仙兼定は再度宗三左文字の局部に口を近づけ、今度は先程よりずっと深く、突き立った竿を喉奥まで咥え込んだ。 「ン…! ン、ンんッ………んふぅ…!」 挿入した経験すらないはずの宗三左文字の竿を、己が口がまるで陰部ででもあるかのように奥深くへ沈める。喉奥に竿先が突き当たって止まり、歌仙兼定は生理的な嘔吐感を感じ、同時に目に涙が滲んできたが、それに構わず、唇をすぼめ、自ら首を前後に揺すって、宗三左文字の屹立を強烈な快楽で煽っていった。 「ンっ、ンぐ、っふ、うゥッ! ンぅッ…う……!」 宗三左文字の脚が覚束なげに揺らぐ。もう限界なのだろう、竿先が歌仙兼定の喉奥に突き当たるたび、先端がぴくぴくと震えているのがわかる。 「ンんッ、んっく、っふ、ゥッ………!」 頭上から降りてくる押さえられた吐息は耳に心地よいが、喉奥に詰まる竿先に呼吸を遮られてさすがに自分のほうが苦しくなってきた歌仙兼定は、宗三左文字を更に煽り立てて放出を強く促す行動に出た。 歯を立てぬように気をつけつつ唇で宗三左文字の竿を絞り、頭を後ろに引きながら強く吸い上げた。 「ッ! ン、んン、っふンん………!」 裏返ったような声が宗三左文字の喉から上がって、歌仙兼定の口の中で宗三左文字の竿がびくりと震え、射精が始まった。口の中に叩きつけられる熱い粘液を零さぬよう気をつけながら、歌仙兼定は口の中に宗三左文字の精を溜めていった。 「ン、ぷぁッ! はッ、は、はぁ………ッ」 淫熱を解き放って、口から手が外れたことにも気づかず、宗三左文字が空気を求めて喘ぐ。射精は完全に果たされ、歌仙兼定は白濁が滴らぬように慎重に、くったりと萎んだ宗三左文字の竿を口から引き抜く。 「っ、は…ぁ、か、かせんかねさだ…、」 薄紅色の髪と同じくらい熱に染まった体をふらふらと揺らがせながら、宗三左文字が泣くような顔で見下ろしてくる。息を詰めていた所為で顔は酷く赤く、潤みきった緑と青の瞳は淫靡な涙に濡れていた。 己の口を押さえていた手と、裾を引っ張り上げていた手、両方の手がようやく解放されて、宗三左文字の手が、今まで触れるのを我慢していたというように歌仙兼定の頭に伸ばされた。熱を帯びた白く細い手が纏まらぬ髪の毛ごと自分の頭を撫でているのを受容しながら、歌仙兼定は口の中に含んでいた宗三左文字の精を喉奥へと飲み込んでしまう。 「んっ………く…、」 懐紙に吐き出そうかという逡巡はあったのだが、宗三左文字の優しい手に触れられている間にそんな気分はどこかに吹き飛んでしまった。 「ふ……は、宣告通り……、きみを、僕は食べて、飲み込んでしまったよ」 精を全て飲み下し、汗ばんだ頬を赤らめて、淫蕩に微笑んで歌仙兼定は宗三左文字を見上げた。 宗三左文字は息を飲んで目を瞠った。 「の………、のみこんだ、というのは…?」 宗三左文字の手が止まる。 歌仙兼定は宗三左文字に向かって口を開いて見せ、唇から、唾液混じりの白濁の名残を指で拭って見せた。 「なかなか味わい深かったよ。宗三左文字どの」 「っ………!」 宗三左文字の顔がますます紅潮した。 性技に無知な宗三左文字は、歌仙兼定が仕掛ける情交の手管に、常に困惑し、羞恥心から拒否したそうな表情を顔に上せる。その顔を見るのが好きだ、と、今も惑乱している宗三左文字の整った相貌を見上げながら、歌仙兼定は少し意地悪く満足を覚えた。 「宗三左文字どの」 下から宗三左文字の両手を掴んで優しく引っ張り、宗三左文字を自らの目の前にしゃがみ込ませた。 「か……かせん、かねさだ、」 羞恥にまだ震える声で、泣きそうな顔を真っ赤に染めて宗三左文字が歌仙兼定を見つめ、声をかけてきた。 微笑んでその初心な顔を覗き込み、歌仙兼定は宗三左文字に口づける。 「っ……ふぅ……、ンむ…、」 宗三左文字の口中は熱く、その舌は正体のないような柔らかさで歌仙兼定に答えてくる。 強い羞恥の下に。宗三左文字には意識もなく、精を飲まれたことに対する悦びが密かに存在しているのを発見して、歌仙兼定はほくそ笑んだ。 接吻を続けながら宗三左文字の腰帯を解き、浴衣を手で滑り落として、優美な白い体の全てを露出させる。 「ンぅ………」 歌仙兼定は口づけを繰り返しながら淡紅色の髪を結ぶ紐を解き、鳥のしだれ尾のような髪が豪奢に肌の上を散るに任せながら、宗三左文字の体を寝床の上に押し倒す。 歌仙兼定の手が宗三左文字の内腿に触れ、陰嚢の後奥へと、汗で摩擦を失った肌に指を滑らせると。 「ンふっ……ぅ…、」 歌仙兼定の口中に少しだけ呻きを漏らして、宗三左文字の下肢は歌仙兼定に向かって開かれた。 |
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