<其乃三>


「宗三左文字どの。猪口令糖をもっと食べるといいよ」
 横たわった宗三左文字の上に半裸の上体を覆い被せるようにしながら、歌仙兼定が口の中に猪口令糖を入れて口移しで食べさせてくる。
「ンふ……」
 宗三左文字は、歌仙兼定の口づけを受けて、躊躇いなく口中の溶けた猪口令糖を己の口に含む。夕刻と違い初めての事態に対する惑乱は無く、一度放ったばかりの欲熱が早くも体内に再び凝り始めているのを自覚した。
「ん…ンっ、ぅふっ……」
 歌仙兼定の舌と宗三左文字の舌、溶けて粘液となった猪口令糖が絡まり合い、鼻先の息までが猪口令糖の甘い匂いに満たされていく。半ば以上がふたりの唾液となった口中の粘液を、素直に宗三左文字は飲み込んで、無意識のままに、歌仙兼定を誘うように、茶色く汚れた舌で薄い唇の唾液を舐め取った。
「……は…、」
 それを見下ろし、歌仙兼定は、陶然となった表情の宗三左文字を眺めて感嘆の息を吐く。全裸になって歌仙兼定を待つ宗三左文字の体を、歌仙兼定はゆっくりとまずは目で堪能した。
 白い首。くっきりした鎖骨。肌理細かく夜目にも露わな白磁の肌。形良く窪んだ臍。細いが男性的な腰骨。今しがた食むように舐めしゃぶり、精を放たせたばかりの竿。刀を振るうが故に、細身ではあっても筋肉はつくべきところにはつき、手足はすんなりと長い。ただ、今は歌仙兼定の視線からは隠れている臀部は優美に丸く、後孔が、すべての男を蕩かすような上品の質を持つことは、宗三左文字を抱いた歌仙兼定だけが知っていることだった。
 刀剣としての前歴から来る宗三左文字の高雅な雰囲気は、快楽に寝乱れている間さえ消え失せることはなく、そこがまた、歌仙兼定の征服欲を夜ごと燃やす理由にもなっていた。
 歌仙兼定は手を伸べて、宗三左文字の肌に触れ、その裸身をゆっくりと辿っていく。
「ふっ………」
 歌仙兼定の指が宗三左文字の乳首に触れ、そこを丸く撫でられると、宗三左文字の薄い唇からせつなげな吐息が漏れた。
 その乳首のすぐ傍で、城中では歌仙兼定しか見たことの無い信長の刻印が、汗ばんで桃色に染まった肌の上に黒々と浮かび上がっている。舞い飛ぶ蝶の紋様を見る度に、歌仙兼定は、宗三左文字が自分独りのものには決してなり得ぬという不満と、同時に、今現在は宗三左文字のすべてを自分が独占しているという満足を自覚する。
 歌仙兼定は首を落として、蝶の紋様の上に己の唇を置いた。
「っ……」
 宗三左文字の体が、ぴく、と反応する。快楽による弛緩と、それ以外の理由による緊張。
「あ……、か、かせんかねさだ……、」
 宗三左文字が困惑気味に声を上げる。
 信長の入れた印に複雑な思いを抱くのは歌仙兼定だけではない。今川義元のもとから略奪されて信長の所有となった宗三左文字自身も、己の刻印を心から受け入れているわけではなかった。
 歌仙兼定は宗三左文字の躊躇を無視し、接吻を続ける。
「ンっ……、ぅ、」
 宗三左文字もそれ以上は逆らわず、黙って歌仙兼定の口づけを許容した。
 宗三左文字が胸の触感に気を取られているうちに、歌仙兼定の空いた手が乳首から脇腹を撫で下ろし、臀部へと回り込んだ。
「は……、ッ、あ…………!」
 手で尻に触れながら、歌仙兼定の唇は先程まで指で弄られていた乳首に及んで、舌先が突起をこねくる。
「ンぁ、ッあ、」
 宗三左文字が喉から掠れた声を上げた。歌仙兼定は宗三左文字の硬くなった乳首を口に含み、吸い上げる。
「ひッ……ぁあ……!」
 びく、と宗三左文字の身が仰け反る。
「ふ……、きみの体は、猪口令糖より甘いな……」
 歌仙兼定は笑いながら、肉厚の舌で尚も宗三左文字の乳首を刺激した。器用な手は熱を籠もらせた宗三左文字の素肌を撫で、その指先が尻のあわいで蕾んだ菊孔へと達する。
「ッ……ぁ、や………!」
 後孔を探られる羞恥に、思わず声を上げかけた宗三左文字だったが、
「厭、かい?」
 柔やかに、畳みかけるように歌仙兼定に言い下ろされて、
「! ……っ………、」
 夕刻、己の放った拒否の一言が何をもたらしたかを思い出したのだろう。はっとしたように宗三左文字は口を噤んで頬を赤らめ、色違いの目を潤ませて、歌仙兼定の言葉を否定するように無言で首を横に振ってきた。
「厭じゃないなら、よかった」
 惑乱し、自ら従順を選んだ宗三左文字の様子に支配感が高まり、歌仙兼定は笑みを深めて宗三左文字の肌に口づけを続けた。
 色白で肌理の細かい宗三左文字の肌は歌仙兼定がやや強めに唇で吸うと、容易に赤い痣を残していく。
「ふッ…、ンぅ……」
「僕が口づけると、きみの肌には梅の花が咲くんだな…」
 宗三左文字の左胸だけではなく、その体中に己の所有の証を唇で印していきながら、陶然と歌仙兼定は呟いた。
「雪の中に紅梅が匂うがごとくだね」
「っ、ンぁ、」
 歌仙兼定の接吻痕が素肌についていくのを、宗三左文字は快楽のうちに許容している。魔王の刻印への不快を、歌仙兼定の支配が押し流していく。
「枝にも触れてみようか……もう一度」
 歌仙兼定が手を伸べて、再び熱を持ち始めた宗三左文字の竿を優しく掴み、指を上下に滑らせた。
「ひッ、ぁあ…!」
「ふ……本当に、枝みたいに硬くなってきたね。出したばかりなのに。…木と違って熱い枝だが。………んふ…、」
 歌仙兼定が舌先を伸ばして再度宗三左文字の屹立しかかった竿先を舐めた。
「ンっ! あぁ、は、」
 舌先の触感に酷く身を震わせて、宗三左文字は堪えるように指で寝具を掴み強く絞る。
 歌仙兼定は自らも頬を染めて恋人を煽りながら、宗三左文字の体の反応を測っていた。服の下で腹部に流れ込む熱は、早く宗三左文字を穿ちたくて猛っているが、歌仙兼定は宗三左文字を甘く支配したいという欲求を優先し、己の焦燥を抑え込む。
「ふ……、こちらにも……花が咲いているね。こちらの花は濃紅色だ」
 快楽に負けてぐったりと力の抜けた宗三左文字の細い体を軽々と寝具の上でひっくり返し、歌仙兼定は宗三左文字の臀部に唇を近づけた。
「ッ………!」
 歌仙兼定の唇が臀部の双丘の片方に触れる。
 同時に、歌仙兼定が濃紅と呼んだ宗三左文字の蕾んだ後孔に親指が触れ、そのとば口を押し揉んできた。
「ひあ………、ぁ…、あ………!」
 後孔を覗かれ、指で触れられる羞恥に宗三左文字は必死で堪えた。
「蜜を吸ってみようか? 鶯みたいに」
 歌仙兼定が楽しげに言った。宗三左文字は意味がわからずその言葉を聞き流したが、
「ひぃッ………!」
 後孔に両唇を当てられ強く吸い上げられて、宗三左文字はびくりと尻を震わせた。
 歌仙兼定は痕がつくほどに強く菊花を吸い、その狭い隙間に濡れた舌先を差し込んでとば口を舌肉で揉む、その行為を幾度も繰り返した。
「あ………ァ、あッ……、やぁ………はひっ…、ッ、や、やめ………ッン、ンんっ」
 思わず拒否の言葉が喉元から出かかるのを、宗三左文字は己で必死に抑え込み、歌仙兼定の行為を阻む言葉が漏れ出ないよう、自分の手でその口を覆う。
 歌仙兼定がもたらす淫楽を、気恥ずかしさから拒みたいと思っても、恋人への情愛や情交への期待がそれを強く阻んで、宗三左文字の心は千々に乱れている。
 歌仙兼定はわざとらしく音を立てて宗三左文字の後孔を最後に吸い上げ、弄られて弛緩を始めたその場所へ指先を突き当てた。
「夕刻は、お預けにしてしまって済まなかったね……、」
 緑の目を熱に潤ませ、昂奮に声を上ずらせながら歌仙兼定が言い下ろす。
「これから、きみの下の口に、僕をたっぷりと食べさせてあげるよ。猪口令糖のかわりに。……まずは、指からね」
 言いながら、歌仙兼定の油薬をまぶした指が二本、ゆっくりと宗三左文字の内部を貫いた。
「………ァ……ッ!」
 ついに侵入を受けて、宗三左文字が高く掠れた声を放った。
「あぁッ…ぁ、あ……、かせん………!」
 己の中を歌仙の指が逆流してくる。
 喘ぎのうちに思わず相手の名を呼んだ宗三左文字に対し、
「美味しいかい? 宗三左文字どの……」
 指を潜らせる動きを止めず、歌仙兼定が夕刻の続きとでもいうように淫らな言葉を仕掛けてくる。
「! ッ……、ぁ、あ…ぁっ!」
 歌仙に向けて尻を突き出す屈服の姿勢のまま後孔に指を差し込まれて、宗三左文字は屈従感に喘ぎ、快楽に悶える。
「あひ……、」
 いやだ、と声を上げることを禁じられて、宗三左文字の唇は開いたままわななき、口の端から唾液が滴った。
 否定したいのが何かはもう宗三左文字にはわからない。淫猥な言葉を投げてくる歌仙兼定をか、歌仙兼定に屈服させられていることか、快楽に耽溺する己自身をか。
 歌仙兼定の指が、宗三左文字の体の奥の快楽の巣を突く。
「ひァ、あぁ、ンぁあっ…ぅ………!」
 手が白くなるほど寝具を握りしめて歌仙兼定の攻めに堪えようとしたが、果たせなかった。
「あッ…、あぁ…………!」
 新月に向かう月が身を自ら細らせるように。
 宗三左文字の理性は細り、もはや、与えられる快楽を貪ることしかできなくなっていた。
「っ……、あひッ、ンぅ…、」
 歌仙兼定の指を突き込んだ宗三左文字の下肢から力が抜け、くたくたと夜具の上に沈む。その一方で歌仙兼定の指の動きに添わせるように、宗三左文字の腰は自らくねり、快楽の波に合わせて双丘が揺れた。
 歌仙兼定の指が埋まったとば口から、ぐちゅぐちゅと音がする。
「ふ……、淫靡だな……、宗三左文字どの……、」
 完全に淫楽に飲まれた恋人を見下ろして、更にその情欲を煽っていきながら、歌仙兼定が呟いた。
「きみの孔……、僕の指を飲み込んで、食い締めて、淫らに蠢いてくるよ……、」
 中指と薬指を宗三左文字の後孔に飲ませて中を突き探りながら、歌仙兼定は宗三左文字の耳の後ろに囁く。
「猪口令糖より……、美味いかい……?」
「! ッ…ン……、はぁ……ッ、ン…、」
 髪を振り乱して宗三左文字は喘いだ。前立腺を幾度も突かれて、宗三左文字の竿はすっかり勃起している。
「宗三左文字どの?」
 答えは知っているだろうに、被せるように問いかけられて、
「っ、はぁ……う…、」
 宗三左文字は頬を真っ赤に染めて、目尻を涙で滲ませながら首を縦に振った。
 後孔を埋められる快楽をついに肯定した宗三左文字の様子を見て、歌仙兼定の昂奮も否応なく高まった。
 肌着の下で、歌仙兼定自身も大きく勃ち上がっている。
 快楽を望むのは歌仙兼定も同様だ。
 頃合いと見た歌仙兼定は、宗三左文字の裡から指を抜いてしまう。
「あ………、ぁ……、」
 宗三左文字が汗ばんだ肩越しに振り返って、懇願するように歌仙兼定を見上げてきた。
「やめて欲しくないのかい? もっと僕を、下の口で食べたい……?」
 自らの肌着を解きながら歌仙兼定が尋ねると、宗三左文字は先ほどよりよほど必死に頷いてくる。
「ッ……あぁ……、歌仙兼定………、」
「もっとはっきり言ってごらん。宗三左文字どの」
 宗三左文字の腰を後背から引き寄せ、屹立の先端で尻たぶの狭間を擦りながら歌仙兼定は言い下ろした。
 触れ合う場所から伝わる熱が、甘い毒となって宗三左文字の心身を蠱惑する。
「僕にどうして欲しいのか……きみ自身の口からはっきりと聞きたいな」
 宗三左文字の耳の後ろに歌仙兼定の熱い息が吹きかかる。臀部に突き当たる屹立を己の裡に埋めて欲しくて、宗三左文字は愉楽に濁った理性をかき集めて必死で懇願した。
「あっ…あぁ……、挿れて、くださ……、かせんかねさだ……、僕の、体の中に…っ…、あなたの、っそれ、差し入れて……、さっきの指みたいに、僕の奥を、突いてください……、歌仙兼定……!」
 待ちかねるように腰を揺すりながら、宗三左文字が切れ切れに言葉を紡いだ。
「猪口令糖のように……快楽で身を溶かして、僕のものを下の口で味わいたい……?」
 歌仙兼定が、宗三左文字の後孔のとば口に新たな油薬を擦りつけながら聞いてきた。
「きみがそれを望むんだね? 『やめて』とは……もう、言わないね……?」
「っ、ぁ、あ、そうです……っ、言いませんから…ぁ……ッ、お願いです、歌仙兼定……そこに……あなたを、ください……、欲しいんです、猪口令糖や、梅の花より、あなたそのものが…っ……!」
「今、望みを叶えてあげるよ」
 掠れた高い声が聞こえて、充分に油薬を満たした歌仙兼定の大きな屹立が、ぐぷりと宗三左文字のほぐれた菊座に先端を突き立てた。
「ひッ……!」
 亀頭が入り口を大きく押し広げて雁首まで通る感覚に、宗三左文字が悲鳴を上げた。
「あッ…、あ、やぁ………ッ…!」
 今更のように、屈服感の強い後背位で貫かれたことを自覚して、宗三左文字の体を恥辱が襲ったが、
「『やめて』は無しだよ、宗三左文字どの……、っく……、」
 放出を堪えながら歌仙兼定は満足そうに言って、宗三左文字の尻を両手で捕らえ直し、更に腰を深く押し進めてきた。
 歌仙兼定の屹立は深々と宗三左文字の裡を抉り、根元まで突き刺さる。先端は宗三左文字の前立腺を裏側から強く擦り上げ、淫楽が奔流となって宗三左文字の身を飲み込んだ。
「ひぃッ………あぁあァッ…!」
 宗三左文字の屹立が体の下で反り返り、歌仙兼定に捕らえられた細い体ががくがくと震えた。
 放出に拠ることなく宗三左文字は愉楽の頂点に達し、快楽のあまりの強さに宗三左文字の身が仰け反る。
「やァ……っ、あッ、あ……なに…これ………ッ、ひ……あひッ………!」
 力の抜けた宗三左文字の腰を抱きかかえ、歌仙兼定が熱を帯びた耳たぶに口づけた。
「凄いな。出さずに気を遣れるんだ……。きみの体は本当に、征服されて快楽を味わうように出来ているんだね」
「ッ……! そ、そんな……っ、ンぁうッ」
 宗三左文字は否定しようとしたが、歌仙兼定が腰を揺すってくると、新たな愉悦が心身を襲って、言葉を継ぐことも難しくなった。
「今、証拠を見せてあげるよ……こうやってきみを突いて、たっぷりと気持ちよくしてあげる」
「ンうぅッ、ひぁっ、や、やめッ、あァっ……!」
「『やめて』は無しだ、と言ったのに……ふ、悪い、口だね?」
 歌仙兼定が抽送を続け、接合部がぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てている。腰を揺らし続けるまま、歌仙兼定が手を宗三左文字の細い顎に掛けて掌に捕らえ、その上で、宗三左文字の口の中に複数の指を突っ込んできた。
「ンむッ……! う、くふぁっぅ、ンうっ」
 宗三左文字の口中を歌仙兼定の指が犯し、二本の指先が宗三左文字の舌を捕える。
 宗三左文字は口を閉じることもできなくなり、上下から、歌仙兼定の蹂躙を受ける形になった。
「約束を破った罰だよ、宗三左文字どの……こちらの口でも僕を食べるんだ。舌で僕の指を舐めるんだよ……さっき、僕が、舌と口できみの竿に奉仕した時みたいにね……」
「! っンく……む、ふぁ、ひぅ…ッ」
 閉じられぬ朱唇から歌仙兼定の指を伝って唾液がだらだらと零れ、床に滴る。後背から挿入を受けるだけではなく、顔の表情すらだらしない様でいることを強要されて、宗三左文字の恥辱は強まった。
「かふッ、ンぐぅ…」
 それでも今や宗三左文字は、歌仙兼定には逆らえない。
 屈辱の涙を瞬きで流し、宗三左文字は諦感のうちに、口に突っ込まれた歌仙兼定の指を唇をすぼめて覆い、舌を絡めて舐めしゃぶる。
「ン、んむ…ふう」
 歌仙兼定が指を動かして宗三左文字の唇を歪ませると、後孔からだけはでなく口からも、ぐちゅぐちゅと卑猥な音が漏れ聞こえて、宗三左文字の羞恥はいっそう煽られた。
「っン…くふ……ッ、ふゥっ」
 目を閉じて恥辱に堪え、宗三左文字は口中を犯す歌仙兼定の指に舌を当て続ける。
 上下から犯されて身を揺さぶられ、宗三左文字の精神は再び理性を細らせていく。
「ッ……、ふ、そう……上手いじゃないか、宗三左文字どの……、っ…」
 唇は笑う形に両端が吊っているが、さすがに息づかいに余裕を無くしてきた歌仙兼定が、宗三左文字の後頭部にそう声を掛けた。
「ふぐッ、ンぅ、う、」
「全部を支配してあげるよ、宗三左文字どの……、きみの五感全てを僕で埋めて、僕以外の何も感じられないようにしてあげる」
 猪口令糖のように甘く、苦く、毒にも似た愉楽を含んだ声で囁いて、歌仙兼定は空いた手で宗三左文字の体の前に手を回し、己の身体を宗三左文字の背に強く密着させた。
 抽送が深くなり、宗三左文字の前立腺は再び奥から強く抉られる。そこを幾度か擦られると、すぐに絶頂はやってきた。
「ッ……! ンぅう…ふゥっ……ンぁっ……う………!」
 歌仙兼定の腕の中に捕らえられたまま、宗三左文字の体が暴れるように跳ね上がった。
 腰の動きを少しだけ緩めて、くすり、と後背で歌仙兼定が笑みを漏らす。
「ふ……、また、イってしまったようだね……? ほんとうに、支配に弱い……」
 驚嘆したような歌仙兼定の声に、宗三左文字は快楽の名残の中で力なく泣き崩れた。
「ン、んぅ、ふぁっ…う……ッ」
 淡紅色の髪を払いのけて、歌仙兼定が涙の伝う頬に優しく口づける。
「嘆く必要はないんだよ、宗三左文字どの……。……ただ、僕を感じてくれ。きみの全ては、僕のものなんだから」
「………、ぁあ、」
 占有を宣言されて、不思議に宗三左文字の悲嘆は和らぐ。
 歌仙兼定は宗三左文字の口から指を抜いて、両腕を宗三左文字の腰に回してその細い体を抱え直す。
「今度は僕も。きみの中で行かせてくれ」
 歌仙兼定は突き当ての角度を変え、先程とは違う律動で宗三左文字の後孔を穿ってきた。
「ッ、あッ…あぁ、ッンくぁッ」
 幾度も体を揺さぶられて、宗三左文字の体内に再び快楽が蘇る。
 両肘を夜具の上に張って犬のように歌仙兼定の前に這いつくばり、尻を歌仙兼定に向けて持ち上げた姿勢で宗三左文字は喘いだ。
「はぁ、あッ、ンぁっ…か…、かせん、かねさだ……ぁっ、ンぁっ、はぁッ」
 続けざまに与えられた淫楽と支配に酔い、頬は寝乱れた薄紅色の髪よりよほど赤く染まっている。歌仙兼定の指が去った唇はもはや閉じることも忘れられて、突き出た舌先から抽送に合わせて唾液の滴が落ちていく。目尻から涙が溢れ続けていたが、それが悲嘆の所為なのか愉楽の所為なのかはもう宗三左文字には判然としなかった。
「ふ………、心地、いいかい……?」
 宗三左文字の体内で大きさを増していきながら歌仙兼定が問う。
「ッ……ン、んンっ、は、ええ…っ、ぁうッうっ」
 宗三左文字は素直に答えた。
 理性に付随していた気位を跡形も無く崩され、完全に歌仙兼定に屈して、宗三左文字は自ら腰を揺らしていた。
「あッ、ぁっ、はひッ、あ………や、気持ち、いい、です、かせん、あうッ」
「ふふ、きみは、本当に、この姿勢で繋がるのが好きだよね、っふッ………」
「っ……、」
 濁っていた理性が戻りかけ、歌仙兼定の体の下で宗三左文字が逃げるように身じろぎする。
「駄目だよ……、宗三左文字どの…、」
 抽送をやめず、歌仙兼定が細い背中の上にのしかかって宗三左文字の動きを押し止めた。
「あッ、うぁっ」
「自分を誤魔化すのはいけないな。体はこんなに正直なのに。きみ自身の唇から言ってごらん……こうやって、僕に後ろから突かれるのは気持ちいい、と」
「ッ…! ぁ、あ、やぁ………ッ、くは、」
「宗三左文字どの?」
 恥辱と快楽を同時に与えられながら、宗三左文字は歌仙兼定の体の下で身悶えした。
「…っ、ンぅ……、」
 咳き上げるように息を吐き、腰で歌仙兼定に応えながら、それでも口から屈服の言葉を出すことを躊躇う宗三左文字に、歌仙兼定は意地悪く畳みかけた。
「強情を張るのなら……、また、お預けにしようか……? きみのこの孔から、僕を抜いてしまって、僕に部屋から去ってしまうよ………?」
「っ……、や、ぅ………ッ、」
 宗三左文字が断れない前提での歌仙兼定の言葉は、後頭部への口づけと共に言い下ろされた。
「夕方だけでなく、今日の夜も、きみは、この熱に浮かされた身を抱えて、独りで過ごすつもりなのかい……?」
「……ッ、ぁ、あ、やぁ………っ、ぁう……あ、」
 歌仙兼定との共寝を失ってひとり寝室に残されることを想起して、夕刻歌仙兼定に拒否されたときの辛さとせつなさ、寂しさを思い出した宗三左文字は、歌仙兼定に対し泣くように声を上げた。
「ッやだ、行かないで、ください……、こうして、僕を、抱いていて、歌仙兼定……っ、はぁッ…お願いです、から………、」
「うん。………じゃあ、さっきの言葉を言ってくれ」
「…ぅッ、はぁ、あ……」
 矜持を諦めたように宗三左文字が眉根を寄せ、息を吐いた。
 宗三左文字が唾を飲む音が歌仙兼定の耳に聞こえ、やがて恋人から屈従の言葉がもたらされた。
「ッきもち、いい……です……、あ、あなたに、後ろから、こうして、僕の孔を、あなたの竿で、突かれるのがっ…好きなのです………ぁ、だ、だから、やめないで…、僕から、離れないで、ください……歌仙兼定………、このまま、僕のお尻を、後ろから……突いて…、もっと、気持ちよくさせて、くださ……ッ最後まで………っ、一緒に………、お願いですから、…ンあッ、ぁ…!」
「ふ………、上手に、言えたね……ご褒美を、きみにあげないとね………?」
 満足そうに歌仙兼定は言って、前に回した手で宗三左文字の屹立した竿を優しく掴んだ。
「! ッ…、ひぃいッ………!」
 宗三左文字の背が大きく仰け反った。
 歌仙兼定の器用な手で緩急をつけて扱かれて、既に汁を零していた屹立は、限界近くまで硬く腫れ上がる。
「あァッ……それダメ……っ、手、離して、っぁ、あ、イっ、イっちゃ……ンぁあっ……!」
 宗三左文字の上半身は逃れようというように藻掻いたが、下肢は、歌仙兼定の腰や手に己の愉楽の場所を擦りつけようというように淫らに揺らめいた。
「ひぃッ…はぁ、ンぁひッ……あ、や、きもち……良すぎてっ、おかしく……ッ、ンぅうッ、あぁ、やぁ、怖いのです、やめて、かせん、かねさだ…ぁッ……!」
「は……、可愛いな、宗三左文字どの……。僕の手管で、もっと淫らになってくれ」
 歌仙兼定は優しく言い下ろしながらも、全く容赦なく宗三左文字を煽り続けてくる。
 腰を突く歌仙兼定の竿は、宗三左文字の内部を強く圧迫するほどに膨れ上がっていた。
「きみの声が聞きたいんだ……、快楽に啜り泣いて、僕に縋って、よがり狂う声が」
「あぁ、やぁ……、そんなの…ッ、ンぁうっ、ひいぁッ」
「まだ、……少しは、我慢、できるだろう……?」
 微笑みながら、歌仙兼定の手が、言葉とは裏腹に宗三左文字の屹立の先を強く掴んだ。
「! ひぃ……あッぁ、あァ……ッ! や……手……はな…して………!」
 奥から前立腺を一際強く突かれて、放出を望む宗三左文字が白い裸身を堪えかねたように震わせる。
「あッ…や………ぁッ…! もう、無理、です………! お…ねが………、イか…せて………ンぁあッ…!」
「あぁ……凄いな……、きみの下の口が蠕動して、僕を締め上げてくる……、ッく、……」
 宗三左文字の裡で歌仙兼定の屹立が更に圧迫を強める。
「僕も……もう、イきそうだよ……、きみの、いやらしく僕を飲み込んでるお尻の穴の奥に……、僕の精を、撒いても、いいかな……? ちゃんと、イかせてあげるから……ッ、は、」
 快楽に飲まれて腰を揺すり続けながら、目に涙を溜めた宗三左文字が、横目に歌仙兼定を見て懇願してきた。
「っ、はァっ、かせん、かねさだ……ッあ、くださ……あぁァっ、イきた……、イかせてください、っァ、歌仙兼定……!」
「ふ……、黒い猪口令糖の代わりに、白い僕の精を、下の口で美味しく味わって貰おうか……、っ、くッ、出すよ……!」
 宗三左文字の内奥で歌仙兼定が屹立を捻り、前立腺に強く先端を擦りつけた。
「ッ! ひぁ…ぁっ、あぁァあッ………!」
 宗三左文字が白い喉を仰け反らせて舌を突き出し、目を見開く。
 歌仙兼定の手の中で宗三左文字の竿がびくりと震え、放出が始まっていた。
 宗三左文字の裡では、同じように、歌仙兼定が己の情欲を爆発させて、直腸に白濁を撒き散らしていた。
「あァっ…あッ……ひうッ……!」
 内臓を逆流してくる熱を察知して、宗三左文字が掠れ声で喘ぐ。
「あっ……僕の中が……熱い……っ、あぁ……!」
「…っく………、ふ……、」
 歌仙兼定は満足して宗三左文字の声を聴きながら、全ての精を宗三左文字の裡に撒き終えた。
 繋がったまま宗三左文字の体を抱きかかえて、歌仙兼定は紅潮した相手の頬や項に口づける。
「きみは……、最高だ…………」
 快楽の時は去っても。
 触れ合う肌から互いの熱が伝わる。
 精を吐き終えた歌仙兼定が宗三左文字の後背で息をつく頃には、宗三左文字は半ば気絶したように瞼を閉ざし、その体は力を失って、歌仙兼定の腕の中でうつ伏せにずるずると頽れていった。




next