<其乃三> 歌仙兼定は宗三左文字の臀部から手を離し、指で細い顎に触れて、宗三左文字の唇の内側に人差し指と中指の指先を差し入れた。 「ンふ……、」 宗三左文字の目が半眼に閉じられる。 宗三左文字の薄い唇が歌仙兼定の器用な指を飲み込み、先程竿に為した奉仕のように唾液と舌を指に絡めていく。 「んっ…、ふぅ……ッ、」 歌仙兼定からも指を舌に擦りつけ、多くの唾を絡めさせて、頃合いと見て指を引き抜くと、名残惜しげに宗三左文字の舌先が歌仙兼定の指先を追いかけて唇から出てきた。 指の代わりに己も舌を伸ばして、宗三左文字の舌先を捕らえながら、歌仙兼定は濡れた指で宗三左文字の臀部の蕾をまさぐった。 「ンぁッ…、は、ぁふぁっ……、」 外襞を押し揉まれて、宗三左文字の眉がせつなげに歪む。 濡れた指先を絞りの緩んだ蕾の奥に優しく突き入れると、歌仙兼定の腕の中で、宗三左文字の身がひくりと震えた。 その所為で口と口が少し離れる。 「あッ、あぁ、は、かせんかねさだ……っ、」 襞を押し広げるように、歌仙兼定は二本の指で宗三左文字の内側をゆるゆるとこねくった。 「ン、ぁ、あぁ…、」 指を奥まで突き込むと、肉襞がぞろりと蠢いて、外襞が歌仙兼定の指の根元を優しく締めつけてくる。 「ッ……あ…っ、ンん……ッ」 歌仙兼定の腹に、宗三左文字の屹立が当たって擦れている。腰を揺らすようにして歌仙兼定の指を誘う宗三左文字の媚態に我慢が利かなくなって、後孔を充分に指で広げた後で、歌仙兼定は宗三左文字の細身を寝具の上に横たえた。 「宗三左文字どの…、挿れるよ」 自ら開かれた宗三左文字の下肢の間に腰を割り入れ、その尻を持ち上げて勃起した竿先を突き入れる。 「ッ…ひう……っ、あ……ァ…ッ!」 ばさりと淡紅色の髪を振り乱し、白い首を仰け反らせてがくがくと身を震わせたその様に、歌仙兼定は、宗三左文字が快楽のひとつの頂点に達したことを知った。 「すごいな……。精を出さなくても、そんなに悦ぶことができるんだね……、」 熱い外襞に雄を締め付けられて放出の欲求に堪えながら、歌仙兼定は微笑して宗三左文字を見下ろす。宗三左文字の竿は未だ天を向いて勃起したままで、先走りが僅かに滲んでいるだけだ。 「ふッ…ぁ……あ、ンぁあ、かせん……!」 奥まで腰を進めると、宗三左文字が歓喜そのものの声で名を呼んできた。 「っく………、」 抽送を促すように、すらりと伸びた白い脚が歌仙兼定の腰に絡んで、もっと深く繋がろうとしてくる。 だが歌仙兼定は、一度奥深くまで宗三左文字の中を検めた後は、手で腰から脚を外して、屹立を宗三左文字の蕾から引き抜いてしまった。 「っ…や…ぁ……、っどうして……、」 一度押し上げられた快楽を続けて与えてもらえないことに、宗三左文字が不満そうに息を漏らす。 「こちらへおいで、宗三左文字どの」 歌仙兼定はなおも身を引きながら宗三左文字の両手首を掴んで身を起こさせ、己の腰の真上に宗三左文字の尻が来るように導いた。 「今日は、きみが上で動いてくれないか」 抜いたばかりの屹立で、宗三左文字の臀部を擦りながら歌仙兼定が恋人に問う。 「…………、は………、」 そんな体位があることも知らなかったのだろう。歌仙兼定が完全に仰向けで横たわってしまうと、淫楽に飢えたまま頬を赤らめた宗三左文字は困惑した表情で歌仙兼定の顔を見下ろしてきた。浴衣が細い肩に掛かったままで、はだけた襟から乳首や胸の刻印がちらちらと覗いて見えるのがなんとも艶っぽい。 「……、か、かせん…、」 歌仙兼定は黙って微笑むと、宗三左文字の尻を割って、先程屹立で押し広げた後孔に竿先を突き当てた。 「ンっ…」 ひくりと宗三左文字の膝が震えた。 「そのまま腰を落としてごらん……、宗三左文字どの…」 「っ…、は………、」 歌仙兼定の意図がようやく飲み込めたか、宗三左文字は顔を赤らめて眉根を寄せ、それでも快楽には勝てぬという風情で、ゆっくりと尻を落としてきた。 「ンひっ…ひ…ぅ………ッ」 狭い場所を雁首が突き通り、屹立が少しずつ宗三左文字の肉襞に飲み込まれていくのを、横たわった歌仙兼定は息を詰めて見つめていた。宗三左文字の中は熱く狭くて、宗三左文字が腰を落とすたびに竿先が内襞を擦り、宗三左文字は首を仰け反らせて堪えかねたような声を漏らす。 「はっ……はぁっ…、あ、歌仙兼定……っ、ぁ、これ……っ、ンぅう…っはァッ……!」 中途から宗三左文字の声は裏返り、自ら腰を落としながら歌仙兼定に貫かれていくのを愉悦をもって享受しているようだった。 ようやく根元まで歌仙兼定の雄を飲み込んで、宗三左文字が息を吐く。 「っはぁっ…、はっ…」 その表情は既に茫洋として、総身は快楽に溺れかかっている。 「あ……うぁ、どう…すれ…ば……? いい…んですか……?」 歌仙兼定の腰の両脇で白い膝を立てて、手をその腹に置きながら、宗三左文字が所在なげに尋ねてきた。 「きみが…、そうして僕に跨がったまま、腰を揺すってくれればいいんだよ」 宗三左文字が身動きするたび、接合部からくちりと淫靡な水音が漏れて竿から全身に刺激が伝わるのを愉しみながら、歌仙兼定が教えた。 「ンく……」 自ら動けと言われて、初めてのことに宗三左文字が眉を顰める。だが歌仙兼定の竿を後孔に埋め込まれ、怒張の熱を体内に感じている今、快楽を求めずにいることは宗三左文字には不可能だった。 「っ…ン……、んふ、ッあ、」 宗三左文字が膝に力を入れ、数回、試すように腰を揺らがせる。 「ふっ……く…、」 歌仙兼定の喉から漏れた呻きに快楽が混じるのを悟ったか。 息を喘がせ、惚けた表情のまま、宗三左文字が歌仙兼定の顔を見下ろしてきた。 「か……かせんかねさだ……、動いても、いいです…か………?」 「いいよ……、やってみてくれ」 「ンん………っ」 尋ねはしたものの、実際には歌仙兼定の許可は宗三左文字の耳には入っていなかったかも知れない。 宗三左文字は寝床に足裏をつけてゆらゆらと腰を揺すりながら、すぐにやり方を掴んだようだった。己の快楽が集中する場所に竿先が擦れるよう、腰の位置を変え、歌仙兼定の体の上で深い愉悦に没頭していった。 「ン、ぁ、あっ、はッ」 腰を揺らすたび、宗三左文字の開いた喉から高い掠れ声が漏れる。淡紅色の長い髪が顔の汗と共に舞い散って、白い浴衣を薄桜の色に染めていく。 「はぁッ、ンぁ、あぁ、あ……、歌仙…兼定……っ、ンっぅ、」 「ふ……、心地、いいね、宗三左文字どの……、きみも、イイのかい……?」 「ンっ、ん…ぅ、っは、」 腰を揺らがせる合間に、淫楽に耽溺した表情で宗三左文字が頷く。 繋がった場所からぐちぐちと淫猥な音がし、歌仙兼定の腹の上で、宗三左文字の屹立が腰の動きに合わせて踊っている。 上から宗三左文字の汗が降ってくるのを瞬きで躱しながら、歌仙兼定は甘い揶揄の言葉を吐く。 「きみは知らないだろう。 「ッ……! ンっ…ふっ、」 淫欲に浮かされた宗三左文字の顔に、傷ついたような表情が浮かんだ。 「自ら相手の腰に乗り上がって、穿たれながら身を揺するなんて、夜ごと男を渡り歩いてきたような者にしか上手く出来ない姿勢なんだ。普通ならね」 「っ、酷い、ことを、言うのですね……、僕を、色狂いみたいに……、」 淡紅色の髪を振り乱して腰を揺らがせるのを止められぬまま、宗三左文字が詰ってくる。 「僕を…っ、こんなに乱れさせるのは、歌仙兼定、あなたなのに……、っ…、」 自ら腰を動かして快楽を求めながら、拗ねたような口調で言い下ろされる。 「っ僕が、あなたしか知らないと、よく御存知のくせに…ッ、ン、ぁあ、」 歌仙兼定は微笑して宗三左文字の白い腕に手を伸ばした。 「勿論、よく承知しているよ……」 宗三左文字の体内で擦り上げられて、歌仙兼定の雄は再びはちきれんばかりに膨張している。 歌仙兼定が伸べた手に、宗三左文字が縋るように手を伸ばして、睦み合った身体の左右で手と手が結び合った。 「きみが、自分の為だけでなくて、僕を悦ばせる為にこうしてくれていることもね」 「………っ、」 熱に潤んだ黒目がちの目を、宗三左文字が見開く。 やがて歌仙兼定の言葉を理解したか、頬を紅潮させて、歌仙兼定を見下ろしながら宗三左文字は優しく微笑んだ。 腰を動かすのを止めぬままに。 「好きだよ。宗三左文字どの」 「っ……僕も…、ですよ…、歌仙兼定、」 宗三左文字の中を満たす歌仙兼定の雄は限界近くまで膨張している。 それは腰に合わせて揺れる、宗三左文字の屹立も同様だった。 「そろそろ疲れてきたんじゃないかな? 宗三左文字どの……僕を悦ばせてくれたお礼に、行かせてあげようか」 「…ふ、行くのは……、あなたが先では……ないんですか……?」 優しげでありながらも、同時に挑発的とも呼べるような微笑で宗三左文字から見下ろされて、歌仙兼定はむくむくと支配欲が湧いてきた。 「……はは、きみのお陰で、かなり楽をしてるからね……、僕はまだまだ元気だよ……、っ…、」 言うなり歌仙兼定は下肢に力を込めて、宗三左文字の尻を乗せた腰を下から突き上げる。 「ッ、ひッ!」 思わぬところから深い突き上げを受けて、宗三左文字の声が裏返った。 手で宗三左文字の手を支えながら、歌仙兼定が幾度も宗三左文字の後孔を下から穿つ。 「ン、あッ! ……、だめ……、ッ、ぁ、深…っあ、ンぁあッ!」 快楽にくたくたと身体の力が抜け、自らが腰を揺らすどころではなくなって、宗三左文字は歌仙兼定の体の上で頽れかかった。 歌仙兼定の手ですら宗三左文字を支えきれなくなって、宗三左文字は歌仙兼定の両脇の寝床に手をつく。 「や…っ、はぁッ、ンぁ…あっ…、」 突き上げられるたび愉楽に唇を震わせて、しどけなく開かれた宗三左文字の口から、大量の唾液が汗と共に歌仙兼定の体の上に降ってくる。汗に汚れた淡紅色の長い髪は歌仙兼定の腹の上に散って、己の唾液と歌仙兼定の汗で新たに濡れていった。 もはや放出を望むように、歌仙兼定の下腹部に滲出液を擦りつけて震える宗三左文字の屹立を歌仙兼定の指が優しく撫でる。 「ふ……、一騎打ちは、僕の、勝ちだろう……、宗三左文字どの……?」 「………ッ、…」 瞬間、歌仙兼定を見下ろす宗三左文字が眉を歪ませたのは、悔しさか、屈服感か、快楽か、単に歌仙兼定への肯定か、どれとも判別のしがたい様相だった。 歌仙兼定は下肢を繋げたまま慎重に身を起こして、宗三左文字の身体を胸の中に抱き込める。 宗三左文字の両肩に残っていた、汗をふんだんに吸った浴衣を二の腕まではだけさせ、露わになった肩や腕に、接吻と甘噛みを交互に繰り返した。 「ンっ、ん、ぅ、ふぁっあッ」 宗三左文字は力の入らぬなりに更に快楽を貪ろうと、歌仙兼定の腰を脚で抱えて下肢を揺らがせている。 先程の接吻痕が残る乳首を歌仙兼定が指で嬲ると、歌仙兼定の雄を咥え込んだ後孔がきゅうきゅうと締まった。 「ッ、ぁ、も………、っ」 ついに音を上げて、宗三左文字が喘ぐ。 「はぁッ、あ、もう……ッ、か、歌仙兼定……っ、…かせてくださ……っ、」 「……うん」 心得たように、ふたりの腹の間で擦れていた宗三左文字の屹立を歌仙兼定が擦り上げる。 「ンっ! ん…、ふぅン………ッ…!」 歌仙兼定の腕の中で宗三左文字の身体がびくり、と震え、全身の筋肉が緊張した、と思ったら見る間に弛緩していった。 「はっ……ぁ、は……、」 歌仙兼定の手に握られた宗三左文字の陰茎が、震えながら精を迸らせている。 「は……っ、ふ…、」 放出が止むか止まないかのうちに、宗三左文字が両腕を歌仙兼定の首に回してしがみつき、繋がったままの腰を強く捻った。 「! ッ、く……、」 宗三左文字の耳のすぐ傍で歌仙兼定の呻き声が漏れ、宗三左文字の後孔を穿ったまま、歌仙兼定も二度目の射精が始まる。 「ぅく………ッ」 体内を熱い液体が逆流していくのを、身を震わせて宗三左文字は受けいれた。 「っ…はぁ……は……、お腹の中が…、熱いです……歌仙兼定……ぁ…、」 歌仙兼定にしがみついたまま体内に精を撒かれながら、宗三左文字が陶然と微笑んで呟く。 「ふ……、きみは本当に、………、」 深い感動に言葉すら失って、歌仙兼定はただ微笑んだ。 放出が終わった後も、熱を残す宗三左文字の体内に己自身を埋めたまま、その汗ばんだ細い体を優しく撫で上げる。 やがてふたりの息が整う頃、歌仙兼定は宗三左文字の中から萎えた竿を引き抜いた。 歌仙兼定の剥き出しの腿の上に宗三左文字の尻を乗せ、宗三左文字の身体を変わらずに愛撫する。 その頬や唇に幾度も口づけながら。 「愛してるよ。宗三左文字どの」 歌仙兼定が漏らした声に聞き慣れぬ言葉を関知して宗三左文字が腕を解き、歌仙兼定を至近から見つめた。 「……なんですか………? 『あいしてる』……とは……、」 「きみがこうして傍にいてくれるだけで。僕は幸福になるということさ」 宗三左文字を腕の中に抱いたまま歌仙兼定が答える。 「それは……、『好き』とは違いますか………?」 「ふ……、そうだね……」 歌仙兼定が両手を延べて、汗に濡れた宗三左文字の両頬を淡紅色の髪ごと包み込む。 「きみがいなくなったら。僕は僕でなくなる」 「……………」 「きみが傍にいてくれれば。僕の人生はただ僕ひとりがいるだけのときよりずっと輝く。きみは僕の月であり、星であり、太陽だ。きみと出会う前、きみに慕情を抱く前も僕は好きなことをして暮らしてきたが……そのときよりも、きみがこうして僕と共に過ごしてくれる今のほうが僕はずっと幸福なんだよ。逆に、きみがいなくなったら……僕は暗闇の中に独り扉を閉ざされて、取り残されたような気持ちになるだろうね」 「………歌仙兼定」 微笑んだままの歌仙兼定に対し、宗三左文字はいつもの生真面目さを取り戻していた。白い手が伸ばされて、歌仙兼定の二藍色の髪を優しく撫でる。 「僕はここにいますよ。……あなたの傍に」 それは歌仙兼定も知っていた。 「………空のことは? もう思い出さないかい?」 「………………」 すぐに答えることはできず、宗三左文字は瞬きをする。 歌仙兼定はわずかに寂寥を含んだ笑みをはいて、宗三左文字を再び抱き寄せた。 「僕がきみを守るよ。きみを脅かす何物からも」 出陣した先で出遭う敵からも。へし切長谷部からも。 破壊を望む、宗三左文字自身の心の虚無からも。 「だからきみは。僕にきみを、守らせてくれ」 宗三左文字は訝しんだ。 何故それが、歌仙兼定の弱音のように聞こえたのだろう。 「歌仙兼定」 自分のものより厚みのあるその胴体を白い腕で抱きかかえながら、宗三左文字は歌仙兼定の肩に顔を擦り寄せる。 「……僕はあなたから離れたりしませんよ」 「…………そうだね」 宗三左文字を抱き締める歌仙兼定の腕が痛いほどに強くなる。 宗三左文字はそれ以上語らず、歌仙兼定も黙ったまま、互いに熱を伝え合っていた。 |
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