<其乃十>



 歌仙兼定は怪我をした宗三左文字をそれ以上歩かせる気は無く、宝物でも抱くように丁重に抱き上げた。宗三左文字はへし切長谷部の時とは違って、拒否の声も上げずに歌仙兼定に抱かれるままになった。実際には怪我と疲労、帰還した安堵で緊張が解けた所為もあり、宗三左文字は殆ど気絶しかかっていた。去り際、歌仙兼定が周囲にちらりと視線を視線をくれ、それで、宗三左文字を連れて帰城したのがへし切長谷部であることに、初めて気がついたような顔をした。
 へし切長谷部は何も言わずに肩をそびやかして歌仙兼定を見返した。
 歌仙兼定には何を言う余裕も無かった。会話を交わすことなく、ぐったりした宗三左文字を抱き上げて城門を潜り、まっすぐに手入れ部屋へ向かった。
 宗三左文字は結局、翌朝まで手入れ部屋に籠もることになった。
 翌日、宗三左文字は、傷の癒えた体で午前に本丸に赴いて主から労をねぎらわれ、日中は休息して過ごした。
 夕刻。歌仙兼定から宗三左文字のもとに来訪を約束する文が届いた。
 そして日没後。
 夜が更けるのを待ちかねたように、歌仙兼定は宗三左文字のもとへやってきた。

 夜気は湿り、風には花の香が満ち、空の朧月夜には虹の傘がかかっている。
 だがそれを雅と思う余裕など、両人共に失くしていた。
 宗三左文字が部屋に入る歌仙兼定を立って迎え入れ、ふたりの視線が交差した途端に。
 挨拶もそこそこに、ふたりは磁力が働いたかのように身を寄せ合った。
 手と手が触れ合い、歌仙兼定が宗三左文字を抱き寄せる。
「………、は……、」
 昨日の夕べ、城門の前では人目を憚って触れることのできなかった場所へも手を伸べて、ふたりは互いに接吻を繰り返す。
「ン…っ、ん………、」
 全ての傷が消え去り、すっかりもとの優美な容貌を取り戻した宗三左文字の唇に、歌仙兼定が口づける。
「ンふ…、ふ、っン………」
 歌仙兼定の首に長い腕を絡めて宗三左文字は歌仙兼定に応える。
 舌と舌が絡むと、相手の熱から痺れるような情欲が伝わってくるのが互いに知れた。
 急くように睦み合ったままで、寝床が用意された奥の間へ連れ立って入り、体に触れ続けながら、互いの服を脱がせ始めた。
 歌仙兼定の袴が宗三左文字の手によって解かれて床に落ちる。歌仙兼定は、宗三左文字の袈裟を、紐を解いて床に払い落とした。
 ふたりは座すことも忘れたように、立ったままで互いを脱がせ、煽り合う。
 歌仙兼定は宗三左文字の紅梅色の僧衣も肩から脱がせて落とした。残された白い内着の襟が大きく開き、宗三左文字の左胸の乳首と蝶の紋様が歌仙兼定の目に露わになった。
 宗三左文字の唇に接吻を繰り返しながら、歌仙兼定は指でその刺青に触れる。
「っ…、昨日……、この刻印を、皆の前に晒すことになってしまったね………」
 口づけの合間に言われて、初めて宗三左文字はそれを思い出した。
「…ン、は……、そう、でしたね………。でも、もう、いいのです……隠さなくても……。僕に、信長の刻印があることは皆知っていますし、………この刻印も、僕の一部ですから………、ンっ…、」
 歌仙兼定の首にかじりついて唇で歌仙兼定に応えながら宗三左文字は答えた。
「……僕が…、きみの刻印を、人目に触れないよう気を配っていたことは、知っていた………?」
 歌仙兼定に聞かれて、耳元で宗三左文字は微笑んだ。
「……昨日、気がつきましたよ……、あなたは、いつも、僕の心を先読みして……ッ、ん、ぁ、」
 指で乳首を撫でられて、宗三左文字は声を上げる。
 乳輪を丸く撫で上げられて、触感に固く膨らんだ突起を、歌仙兼定の指先が優しく摘まんだ。
「っ…ぁあっ…、は、」
 早くも喘ぎかけた宗三左文字の熱い息が歌仙兼定の耳に吹きかかる。
「か、かせんかねさだ……っ、」
 宗三左文字の白い手が歌仙兼定の胸に触れて、襟の内側に入り込んできた。
 優美な手が服の内の素肌を辿り、腰へと伸びる。肌着越しに歌仙兼定自身に触れると、そこは熱を持って強ばり始めていた。
「んふ……っ、は、もう……固くして、いるのですか……?」
 宗三左文字が微笑んで、歌仙兼定の耳に軽く歯を立てながら、嬉しげに耳元で囁く。
 それが淫らと聞こえないのは、宗三左文字の声が常のとおりに高雅な所為だろう。
「ふ……、そうだよ……、きみは、どうかな……?」
 宗三左文字に煽られ、布越しに局部を優しく撫で上げられて昂奮を高めながら、歌仙兼定も、宗三左文字の肌着を解いてその竿に手を伸ばした。
「ン………っ」
 大きな手で優しく竿を掴まれて、宗三左文字が身をひくりと強ばらせる。握ったり離したりを幾度か繰り返すと、歌仙兼定の手の中で宗三左文字の竿が膨張を始めた。
「ッ…ぁ、はぁ…、か、歌仙兼定……、そこ、だけじゃ、なくて……、」
 宗三左文字がせつなげに身を捩る。
 快楽を素直に欲しがる宗三左文字の様相に、歌仙兼定は微笑んだ。
「お尻の穴も触って欲しいのかい……?」
「ん……ッ、ぅ、」
 顔を赤らめた宗三左文字が、唾を飲んで頷く。
 自分の局部を撫でさすってくる宗三左文字の手は名残惜しいが、歌仙兼定は、相手をもっと本格的に煽るほうを選ぶことにした。
「じゃあ……壁に手をついて。お尻を僕に向けてごらん」
 宗三左文字から全ての服を剥いで全裸にしながら、歌仙兼定は指示を出す。
「っ、ん………、」
 宗三左文字は素直に従い、壁際に立ち、歌仙兼定に向けて剥き出しの尻を突き出してきた。
 宗三左文字の痩せた白い背に、淡紅色の滝しぶきの如く髪が流れ落ちている。愉楽を求めて歌仙兼定に向けられた宗三左文字の白磁壺のような臀部が目も綾に歌仙兼定を誘う。体の陰になった宗三左文字の竿が、軽く勃ちかかっているのが歌仙兼定の目に見えた。
 歌仙兼定の両手が宗三左文字の臀部にかけられ、後孔の肉襞を刺激するように尻肉が揉まれる。
「ふぁッ、はっ……、」
 白い肌に血流が生まれ、宗三左文字の菊孔が存在を主張するかのように赤く染まってきた。
「あッ、さ…、さわって……くださ……っ、は、」
 もっと強い刺激が欲しくて、宗三左文字が懇願してくる。
 閨の中で宗三左文字が、昼の清楚さからは想像もつかぬほど快楽に弱いことを知っているのは、歌仙兼定だけだ。
「うん」
 歌仙兼定は短く答えて屈み込むと、指で触れるのではなく、いきなり唇を宗三左文字の尻のくぼみに寄せた。
「ひぅッ! ん、ひぁッ…あ……ッ!」
 蟻の門渡りから襞口までを舌先で舐め上げられて、宗三左文字が喉を開いて掠れ声を上げた。
 唾液を含ませた舌先で歌仙兼定がとば口をつつく。
「ひっ、ぁ、はあっ…!」
 心地よいのか、歌仙兼定の顔に宗三左文字の尻が軽く押しつけられてきた。宗三左文字の快楽への積極性を微笑ましく思いながら、歌仙兼定は、相手の望み通りに更に強く舌で後孔をこじり、緩んだ襞の中へ舌先を差し入れる。
「ン、ぁあ、ッ」
 食むように口で後孔に刺激を与えながら前方に手を伸ばして、歌仙兼定の指が膨張した宗三左文字の竿を捉えた。
「ッ………!」
 びくり、と宗三左文字の裸身が震える。全身に淫熱が巡り、白い肌が髪と同じ色に染まり始めた。歌仙兼定が舐める肉襞はさらに色づき、歌仙兼定を誘うようにひくついた。
 口を離し、歌仙兼定は、唾液を充分に絡めた指を宗三左文字の後孔へ差し入れる。
「ンぅ……っ、ぁ…!」
 体内から肉襞を押し揉まれて宗三左文字が背を仰け反らせた。指に纏いつく粘膜は熱く、歌仙兼定が指の関節を飲み込ませてゆく度に宗三左文字の身がひくり、ひくりと震えた。
「はっ…は……、ぁ…、ゆび………が、ぁ……ッ」
「入っていくのがわかるかい……?」
 宗三左文字が掠れた声で言いかけるのに後を続けながら、歌仙兼定は剥いた桃のようなその尻肉に口づけて軽く歯を立てる。
「ンぁ、あっ……え、ええ………、っ」
 内部をこねくりながら入り口を押し広げ、宗三左文字を穿つ指を二本に増やす。
 歌仙兼定の別の手が握る宗三左文字の竿はすっかり屹立して、歌仙兼定の指の中でひどく硬くなっている。
「ンうっ、ふぅッ」
 後孔に侵入する指を三本に増やしても、宗三左文字は痛みを訴えるでもなく快楽に悶えている。
「っ、あぁ……かせんかねさだ……っ、お願い、です、もっと、奥まで………ッ」
 指では足りなくなったか、宗三左文字が顔をこちらに振り向けて懇願してきた。
 横顔しか見えないが、優美な容貌がすっかり淫に堕ちて赤く染まり、前髪から透けて見える深い青の瞳がせつなげに潤んでいる。
「も………入れて、くださ……っ、あなたの………を……、」
 わななく赤い唇から涎を垂らしながら、掠れた声で宗三左文字が頼んでくる。
 宗三左文字の淫態にすっかり昂奮しきっていた歌仙兼定は微笑んで、勃起した己から肌着を取り去って立ち上がった。
「ふ………、そんなあからさまにお願いをされたら……、聞いてあげないわけにはいかないね………?」
 歌仙兼定も情欲に声を上ずらせて、宗三左文字の臀部に竿先を当てた。
「ッ、ん………っ」
 立ったままの宗三左文字が、期待に身を震わせて、歌仙兼定を受け入れるように臀部を突き出す。
 赤く腫れた肉襞の中央を、歌仙兼定の竿がゆっくりと押し開いていった。
「あっ、ンぁ、ッは…あぁッ………!」
 ずぶずぶと音を立てて己の身体を押し開かれ、宗三左文字は喉を仰け反らせて高い掠れ声を上げた。歌仙兼定の熱い屹立が侵入し、宗三左文字の最奥部をその先端がつついた。被支配感と一体化した快楽が、燎原の火のように宗三左文字の全身を勢いよく巡る。
 宗三左文字の内部は熱を持って歌仙兼定を迎え入れ、更なる愉楽を求めるように歌仙兼定の竿を締め上げる。
「あッ、あぁ……かせん、かね、さだ………!」
「っく……、」
 乞うように呼ばれた名に応えるように、歌仙兼定が宗三左文字の腰を抱えて突いてくる。
 歌仙兼定も既に余裕は無くしていて、言葉をかけるのも忘れてがつがつと宗三左文字を貪った。
「っひ! ぁあッ! っや…ぁ、ああっ、はぁッ…!」
 獣のように激しく突き上げられて、却って宗三左文字の快楽は高まった。歌仙兼定に強く欲されることそのものが宗三左文字を悦ばせていた。宗三左文字は片手を壁について己を支え、もう片手は腰を捕らえた歌仙兼定の手に当てて、歌仙兼定が与えてくる律動に己の動きを合わせた。
「はッ…ンぁ、あァっ…!」
 ぐちゅぐちゅと、接合部から淫らな音がする。繰り返し歌仙兼定に穿たれて、体を揺さぶられ、後背から覆い被さられて、宗三左文字は、自分の全てが歌仙兼定に所有されていることを強く感じた。
「あッ、ァ、かせん、もっと………っ…!」
 それは厭わしいことでも何でもない。
 むしろ宗三左文字にとっては望ましいことだった。
 こんな所有の手法があることなど知らなかった。
 求められ、与えられて、自らも求め、与えて、二者は完全な癒着のうちに、ひとつの生き物のように繋がる。
 心も、体も。
 魂さえも。
「宗三、左文字どの……ッ、ふっ、」
 抽送の合間に耳の後ろで名を囁かれて、宗三左文字の身はぞくぞくと総毛立つ。
 高まるばかりの快楽に膝が震えて、体中の力が抜けてくる。
「っ、ぁ、かせん、もう、立って…られな………ッぁあッ…!」
 突き上げられながら助けを求めるように声を上げると、歌仙兼定の手が宗三左文字の腰を支えるように動き、体内から一度屹立が引き抜かれた。
「宗三左文字どの……こちらを向いてくれ」
 宗三左文字を壁に押しつけたままで歌仙兼定が、その薄い体を自分のほうに向けさせた。
「ッ………、」
 薄紅色の髪より赤い乳首が色づき、左胸に蝶の紋様がくっきりと浮かび上がる。宗三左文字の竿は上を向いて先端から汁を滲ませていた。乱れた髪の下から覗く色違いの両の瞳はせつなげに歌仙兼定を見つめて、愉楽を求めてひどく潤んでいる。
 歌仙兼定は微笑んで、宗三左文字の右腿に触れた。
「宗三左文字どの、脚を上げて」
「っ……なに…を……、ッあ……、」
 歌仙兼定が左手で宗三左文字の右腿を掴み、竿先で再び後孔を探りながら更に右手で左腿を掴んで尻ごと持ち上げると、宗三左文字の体は宙に浮いてしまう。
「ッ、や…、怖……ッ、」
 不安定さに思わず声を上げ、歌仙兼定の首にしがみつくと、耳元で歌仙兼定が囁いた。
「だいじょうぶ、支えてあげるよ………怯えないで」
 歌仙兼定の力強い手はたやすく宗三左文字の体重を持ち上げており、その上で、探り当てた宗三左文字の後孔に再び己の屹立を埋め込んでいった。
「うッ…ぁ…あ……かせん………ッ…!」
 深く穿たれて宗三左文字の表情が忽ち快楽に飲まれていくのを堪能しながら、歌仙兼定は微笑む。
「望むところだろう……? 深く抉られるのは………、」
「ッん、ぁ……!」
 貫かれたまま腰を軽く揺さぶられて、宗三左文字は背を仰け反らせて熱い息を吐いた。
 自重によって歌仙兼定を深々と受け入れ、宗三左文字は強い快楽に満たされる。意図もせず脚が歌仙兼定の腰に絡みつき、腕は歌仙兼定の首にしっかりと回されて、歌仙兼定の揺すり上げに合わせるように、自らの腰も無意識に揺らぎ始める。
「ふ………、宗三左文字どの……、っ、そんなに強く締め上げたら、僕が、達してしまうよ………?」
 器用に腰を動かして宗三左文字を煽りながら、歌仙兼定が囁いた。
 揺れ動く都度、宗三左文字の尻が歌仙兼定の腰に突き当たり、竿先が宗三左文字の最奥部を深く抉る。
 抱き上げられた緊張と快楽の弛緩がせめぎ合って、抽送を受ける宗三左文字の後孔は、歌仙兼定をややきつめに締め上げている。
「……ン、ぁ、だめ………ッ、まだ……、か、かせ、」
 腰を揺するのをやめずに、宗三左文字が唾液と共に声を上げた。
「……気持ち、いいのです……、まだ、行かないで、くださ……っ、ぁ、」
 歌仙兼定の顔の前で熱い息を吐きながら、宗三左文字が愉楽に震える声で懇願する。
「ふ、正直だね……、宗三左文字どの…」
 放出の欲求に耐えながらも歌仙兼定が微笑むと、至近で宗三左文字の緑と青の瞳が歌仙兼定を見つめ、次いで唇に食いつくように深い接吻が仕掛けられてきた。
「ンっ…ンむ……、ふ、ぅ……」
 宗三左文字の舌が生き物のようにうねって歌仙兼定の舌を煽る。
 すっかり屹立した宗三左文字の竿が歌仙兼定の腹に当たって擦れている。滲み出る液体が歌仙兼定の腹筋を汚しているが、ふたりはそれに拘泥する余裕など失っていた。
「ン、ぅ、ふうッ、ンッう…!」
 宗三左文字は腰を揺さぶられながら夢中で歌仙兼定の舌と唇を貪った。口と後孔、上下の粘膜から歌仙兼定の与える熱が快楽となって体中に染み込んで、睦み合う以外の何ごとも考えられない。歌仙兼定が余裕を失ったように、接吻をやめて腰の突き上げを早く短くしていっても、宗三左文字の愉楽は弱まることなく続き、やがて来るべき終焉を予感しながら歌仙兼定の動きに合わせて体をくねらせる。
「ッ、ぁ、あぁ、」
「………ッ、く、宗三、左文字どの、っそろそろ………、」
「ン………ッ…」
 許可を求めるように至近で名を呼んできた歌仙兼定に宗三左文字は悶えながら頷いて、互いの汗で滑る歌仙兼定の首に強く縋りついた。
 腰と腰が密着して、二人の腹部に挟まれた宗三左文字の屹立が強く刺激される。
「ッ、ぁ、ぁくう………ッ……!」
 わずかに早く、宗三左文字が達した。
「…っ、く………っ…!」
 腹部で宗三左文字の熱が迸るのを感じながら、歌仙兼定も宗三左文字の奥深くで己を解放する。
「あ………ぁあ……ッ…!」
 体の前と中で爆発を浴びて、宗三左文字は白い喉を仰け反らせた。ドクドクと震えるのが己の心臓なのか、体に埋め込まれた歌仙兼定の屹立から溢れる精の奔流なのか、己の竿が射精の為に脈動しているからなのかも判然としなかった。
「はっ…はぁ………っ、は……」
 やがて腹部と腹の中に熱を残したまま快楽は急激に去って、歌仙兼定自身を後孔に埋め込まれたまま、宗三左文字はぐったりと身を相手に預けた。
「………宗三左文字どの…」
 恭しいとすら聞こえるような声音で歌仙兼定が言って、宗三左文字の体から竿を引き抜き、体の内外を精に汚したその身をそっと寝床の上に下ろして座らせる。
 汗ばんだ宗三左文字が夜気に冷えぬよう気遣ってか、歌仙兼定は、先程脱がせた内着を宗三左文字の両肩に着せかけてきた。
「………か、かせん、かねさだ、」
 まだ息の整わぬかすかな声で宗三左文字が呼ぶと、それだけで宗三左文字の欲求が伝わったか、歌仙兼定が薄い唇に優しく口づけてきた。
「ん……ん、ふ………」
 歌仙兼定の大きな手で汗ばんだ体を撫でられ、寝乱れた淡紅色の髪を手櫛で梳かしつけられながら、宗三左文字の息は優しい接吻の合間にゆっくりと落ち着いていく。
 接吻を受けて半眼に閉じていた淡い色の睫毛を宗三左文字が開くと、間近で歌仙兼定が自分を見つめていた。
 生彩の強い緑色の目には、再びの情欲が宿り始めている。
「歌仙………」
「きみは少し休んでいてくれて構わないよ」
 悪戯っぽい微笑を浮かべて、すっかり息の落ち着いた歌仙兼定が言った。
 深い情愛の中に籠もる、緩い嗜虐。
 それを察知して、自然に体が反応してしまう自分がいる、と宗三左文字は自覚する。
「………は……」
 寝床の上に裸身で座り込んだまま宗三左文字が息を吐く。
 その顎を優しく捕らえて、歌仙兼定が再び唇に口づける。
「ッ……ン……、」
 唇への接吻はすぐに途絶えて、歌仙兼定は舌と唇をゆっくりと移動させ、汗ばんだ宗三左文字の体を文字通り舐めながら辿り下ろしていった。
 蝶の紋様の下の突き立った乳首を吸われて、宗三左文字はひくりと身を強ばらせる。
 歌仙兼定の器用で優しい手は唇より先に宗三左文字の体を撫で下ろしていく。
 乳首に吸いついた歌仙兼定の口が、突起を舌で転がし、時折両唇で強く吸い上げる。
「ッ、ン、は、」
 頭の上で宗三左文字の首が揺れるのを感知しながら、歌仙兼定は宗三左文字を優しく嬲る。
 汗に濡れた宗三左文字の肌は塩の味が強くする。熱を帯びた白い身体から香混じりの体臭がいつもより強く香り立って、歌仙兼定の欲情は再沸を高める。
「きみの綺麗な体が汚れてしまったから……、浄めないとね」
 乳首から口を離し、腹の上を臍へと舌で舐め下ろしていきながら歌仙兼定は宗三左文字に告げた。
「………か、かせんかねさだ、っ、は、」
 臍を舌でこじられて宗三左文字は喘いだ。
 精に汚れたままの宗三左文字の腹部を、常のとおりに懐紙で拭くのかと宗三左文字は思っていたが、歌仙兼定はそのまま這いつくばるように頭を下腹部に下ろして、あろうことか宗三左文字の精を舌で舐め取り始めた。
「! っ、ぁ、なに…してるんですか、歌仙兼定………ッ、や、」
 腹の上で冷えつつある己の精を躊躇いもなく歌仙兼定が舐め取っていくのを見て、宗三左文字は顔を真っ赤にして抗議の声を上げた。
「なにって、きみを浄めてるんだ。僕の口で」
 さらりと歌仙兼定は返事をして、作業を続ける。
「ッ、やめ………っひッ…!」
 宗三左文字を黙らせるように歌仙兼定の指が萎えた竿を掠め、宗三左文字は思わずびくりと震える。
「やぁ……あ、かせん………! やめて…くださ……、あなたが、穢れます………! ッあぁ……!」
 精が滴った腰骨の辺りを舌で舐め上げられて、宗三左文字は泣くような声を出す。
 歌仙兼定は構わずに宗三左文字の精を舐め取り続け、冷えて凝固を始めた白濁を喉の奥に飲み下していく。
「………やめて……もう…、止めて下さい、歌仙兼定……!」
 宗三左文字は懇願しながら、歌仙兼定の頭を己の腹から退けようと歌仙兼定の髪を両手で掴む。
 歌仙兼定はふっと舌の動きを止めて、可笑しそうに宗三左文字を見上げた。その形の良い唇の端に、白濁の塊が粘るように貼りついている。
「数日前、きみは僕の精を飲んでくれたじゃないか。それと何も変わらないよ」
 泣きそうな顔の宗三左文字の顔が、いっそうの羞恥で歪んだ。
「で…ですが………! あ、あれは口の中に直接出したものではないですか……!」
 宗三左文字を見る緑色の目の奥で面白がるような光が強まった。
「そう言われても、何が違うのか僕にはよくわからないが……。きみの、その恥ずかしがる顔はひどく好きだな。眼福だね」
 からかうように言われて、宗三左文字は羞恥と困惑の中に怒りじみたものすら湧いた。
「あ、あなたは、いつもそうやって僕を嬲って………ッ…! ん、あ、ぁうッ……!」
 歌仙兼定の舌は宗三左文字の内股に至り、たらたらと滴る白濁を啜るように飲み込む。
 強く吸い上げる接吻にも似たその行為を続けられて、宗三左文字の白い肌に点々と痣が残っていく。
「信長公とは違う形で……、きみの肌に刻印をつけているようなものだね」
「ッ………」
 敏感なところに接吻痕を幾つもつけられ、体にかかった白濁を舐め取られていきながら、宗三左文字は泣くように顔を歪めて羞恥に悶えた。
 宗三左文字の下腹部を二藍色の歌仙兼定の髪が柔らかくくすぐる。身を最大限に屈めて宗三左文字の下肢を舐める歌仙兼定の姿は、そのまま高位の者に伺候して奉仕する従者のようだ。
「………っ、く……、」
 穿たれるのは常に宗三左文字なのだから、夜においては必ず歌仙兼定が支配する側なのに。
 歌仙兼定の性的な諧謔はいつも宗三左文字の気位を揺さぶり、動揺させる。
 それが互いの情欲を如何に高めるか、歌仙兼定は知り尽くしている。
「ここだけ最後に残ってしまったね」
 歌仙兼定はついに殆ど全ての精を舐め取り終えて、最後まで残した汚れたままの宗三左文字の竿に、ゆっくりと指で触れた。
 宗三左文字に見せつけるように。
「………ン……っ!」
 ぴくり、と身を震わせる宗三左文字の表情を確認してから、歌仙兼定は手の中の萎えた竿に己の鼻を近づけた。
「ここもすっかり綺麗にしてしまおう……丁重に……」
 白濁に汚れ、冷えかけていた宗三左文字の竿に、歌仙兼定の唇がゆっくりと触れた。




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