<其乃十一>



「ンぁッ、あ、かせん……! っ……!」
 精に濡れた竿に舌を当てられ、吸いつくように舐め上げられて、宗三左文字は掠れた声を上げた。
 歌仙兼定は下肢に為したのと同じように、宗三左文字の竿から白濁を舐め取って飲み下していく。
「っ、ぁ、あぁ……ッ…、はァ……っう、」
 与えられる愉楽が強すぎ、歌仙兼定の行為を制止することもできなくなって、 宗三左文字は身を震わせて呻いた。先程まであんなに舐め取られることを厭っていたのに、今はもっと、とせがむかのように、宗三左文字の下肢は自然に開いて、歌仙兼定の頭を股の間に受け入れている。歌仙兼定を止めようと二藍色の髪の上に置かれていた宗三左文字の白い手は、今や歌仙兼定の行為を容認し進んで享受する為にそこに在った。
 歌仙兼定は舌先を宗三左文字の陰嚢にまで伸ばして、宗三左文字の放った精を舐め取っていく。
「ン、あぁ、はぁッ…」
 歌仙兼定が恭順とすら呼べる風情で己の性器に奉仕を続けるのを見下ろして、宗三左文字の中の快楽は触感以上に高まっていく。
 陰嚢を浄め終え、唇を竿に戻した歌仙兼定が、ちゅる、と卑猥な音を立てて宗三左文字の竿を吸い上げる度に、萎えていた陰茎はだんだんと力を取り戻していった。
「……は…、だんだん、元気になってきたようだね………」
 少しだけ頭を上げ、硬化してきた宗三左文字の竿を見下ろして、歌仙兼定が陶然とした表情で伸べた。屈み込んだ姿勢で口での奉仕を続けた所為で、その頬は酷く紅潮し、瞳の緑がいっそう鮮やかに映えていた。朱唇だけでなく、二藍色の長い睫毛の縁にも、何かの拍子でついたものらしい宗三左文字の白濁が凝っている。
「っ………」
 視覚でも淫靡を煽られて、宗三左文字は息を飲んで歌仙兼定を見下ろした。
 宗三左文字の精は綺麗に舐め取られて、もはや汚れは残っていない。だというのに歌仙兼定は唇と舌を宗三左文字の竿から離そうとせず、勃起を促すように接吻を続けた。
「ンっ……ぁ、ふあぅッ……」
 横合いから掬うように陰茎を両唇で咥え込まれ、伸びた舌先が雁首の裏を優しく刺激する。
「ンん…ぁッ、…」
 屹立しかけた竿を指でも摘ままれ、異なる二つの触感を受けて宗三左文字は身を捩った。
 力の抜けた腕は体を支えていられなくなって、宗三左文字は倒れ込むように敷床の上に仰向けに横たわる。寝乱れた淡紅色の髪が絡まり合いながら布団の上に広がっていって、歌仙兼定の眼前に薄紅の川を作った。
「………風流だな……、宗三左文字どの……」
 歌仙兼定は首を上げて恋人の体を眺めやった。
 透けるように白い体を情欲に昂奮させて乳首や指先を赤く染め、蝶の紋様が黒々と胸に浮き上がっている。淫熱に滲んだ緑と青の瞳が歌仙兼定を見上げていて、力の抜けた四肢はしどけなく寝床の上に投げ出されていた。
 まるで歌仙兼定が蹂躙するのを待っているかのように。
「………きみを見ると、いつも驚嘆させられる」
「…………………、」
 宗三左文字が震える息を吐く。喘ぐ熱が、歌仙兼定の肌にも届いた。
「きみといると……、掌中の珠のように慈しんで、何の憂いも感じさせないくらいに恭しく仕りたい気持ちと……、泣いて懇願するほど淫らな様に乱れるのを強いて、きみの体を貪り尽くして横暴にふるまいたい気持ちの、両方に、いつも板挟みになるんだ…………」
 頬を赤く染めて、歌仙兼定が微笑みながら陶然と漏らす。
「………、」
 見上げてくる宗三左文字の白い喉が、こくりと鳴って唾を飲んだ。
「………あなた、は………」
 潤んだ色違いの瞳が歌仙兼定に向けられてくる。
「夜は、いつも………、どちらの行為も、僕に、為してくるではありませんか………」
「………………ふ…、そうだね………」
 宗三左文字に指摘されて、歌仙兼定は苦笑に似た笑みをはいた。
 身を動かし、宗三左文字の体の上に逞しい体を覆い被せるようにしてその顔を覗き込みながら、布団の上に広がった宗三左文字の髪を手櫛で纏める。
 宗三左文字が見上げると、歌仙兼定の、熱に浮かされた緑色の目には、ちろちろと支配欲の火が燃えていた。
「………………」
 宗三左文字は、少しく恐怖と、被支配の予感を感じ取って、快楽に酷く似た戦慄を自覚する。
 それを認めたか、頭上の歌仙兼定の笑みが深くなった。
「……以前の夜のときのように。僕のものも、舐めてもらっていいかな……?」
「………、…ええ……」
 歌仙兼定に応えて起き上がろうとした宗三左文字を制して、歌仙兼定がその細い裸身の上をまずは馬乗りに跨いだ。
「っ………」
 半ばほどまで勃起した歌仙兼定の竿が眼前すぐに現れ、その存在感に宗三左文字は思わず息を飲む。
 宗三左文字の左右の耳の両脇に歌仙兼定の両膝が来る形で、歌仙兼定は宗三左文字の頭を跨いでいる。その体は宗三左文字の総身の上に覆い被さり、歌仙兼定の手が、快楽に馴染んだ宗三左文字の陰茎を掴んだ。
「ッ、ぁ、」
 声を漏らした宗三左文字に、歌仙兼定が笑いながら指示を出した。
「僕が腰を落とすから……、きみのその口で、僕のものを慰撫してくれないか」
「っ………」
 口を道具のように使われることに宗三左文字が瞬間感じたのは羞恥と屈辱で、だがすぐに、自身の竿を歌仙兼定に撫で上げられて恐怖と反発は立ち消えた。
「…っ、は………、」
 淫熱にとろりとした視線で、宗三左文字は頭上すぐ上で揺れる歌仙兼定の竿に目をやる。
 歌仙兼定の下肢に頭を挟まれる格好で、歌仙兼定の熱を顔の皮膚に強く感じ、宗三左文字の鼻腔は歌仙兼定の匂いに満ちている。
 宗三左文字はもう歌仙兼定の欲求を拒む羞恥も理性も働かなくなっていて、歌仙兼定が予告どおり腰を落とすと、逃げること無く口を開いてそれを受け入れ、口腔の粘膜に歌仙兼定の竿先を触れさせて、口中で、唾液の絡んだ舌をその先端に当てた。
「ッ……、く……、」
 宗三左文字の口腔の熱さに触れた歌仙兼定が呻く声が聞こえた。
「ふ………、凄いな………。心地よくて…意識が飛んでしまいそうだよ………。…僕も…お返しをしないとね………」
 歌仙兼定は指で捕らえていた宗三左文字の竿に、再び口をつける。
 今度は舐め上げるようなこともせず、ひといきに喉の奥まで宗三左文字の竿を受け入れた。
「ッ…んぶ………ぅ…うぅ……!」
 歌仙兼定の体の下でびくりと身を震わせ、今度は宗三左文字が声を上げた。だがその呻きは口中に咥え込まされた歌仙兼定の竿に邪魔されて、くぐもった音にしかならない。
「ッ……ン…ンぅ………!」
 歌仙兼定の唇と舌が宗三左文字の竿にねっとりと絡んで吸い上げ、一度離された。
 口中から姿を現した宗三左文字の陰茎はすっかり勃起している。
「……どうだい? 宗三左文字どの………」
「……っ、ン…ッ」
 歌仙兼定が腰は上げてくれなかったので、宗三左文字には返事の仕様も無い。ただ鼻先から抜けるように漏らした声がひどく物欲しげに響いたことは、宗三左文字にも自覚できた。
 宗三左文字の口中で歌仙兼定の竿はどんどんと硬化と膨張を進めてきていて、宗三左文字の口腔を圧迫する。
「んっ…、ン、ぅ……、」
 息苦しさを感じはしても従順に歌仙兼定の竿を口腔内に受け入れている宗三左文字に満足したか、歌仙兼定は再び頭を落として宗三左文字の屹立を口中に埋めた。
「ふ…ン、ふッ、っふ…」
 頭を自由に動かせる歌仙兼定のほうが有利な上に、性技においては歌仙兼定に一日の長がある。歌仙兼定に組み敷かれ、口中に屹立を含まされて、己の竿は歌仙兼定の口淫で煽られ続け、宗三左文字は己の理性が見る間に細っていき、代わりに淫楽と、歌仙兼定の支配に従うことへの心地よさに酔い始めていた。
「ン、んふぅ、っ、んぶ…」
 口の中を犯す歌仙兼定の屹立に舌を絡め唾液をなすりつけて、口全体の筋肉を動かして歌仙兼定の竿を煽り、口中に溜まってくる歌仙兼定の先走りが混じった唾を喉奥に飲み込んでいく。
 宗三左文字が歌仙兼定に快楽を与えれば与えるほど、宗三左文字の陰茎を飲み込んだ歌仙兼定の口淫もまた激しくなっていく。
「ンん、んっ、」
「っ………」
 我慢が利かなくなったか、歌仙兼定が腰を揺らめかせ、己自身の意思で宗三左文字の口で快楽を貪り始める。
「ンッ! んぐ、ふッ…ンぅっ、うぅ………!」
 喉奥まで竿先を突き込まれて宗三左文字は苦しげに呻いた。目尻に生理的な涙が湧く。息苦しいが逃げることもままならず、宗三左文字は歌仙兼定の体の下でただ煩悶するばかりだ。
 堪える宗三左文字に、ご褒美というように、歌仙兼定が宗三左文字の竿先を律動をつけながら唇で強く吸い上げ始める。歌仙兼定の器用な手指が律動に合わせるように宗三左文字の陰嚢を揉み、別の手指が先程の挿入で弛緩した後孔の襞を探ってくる。
「ん…ッ、んー! ンぐぅ…ッ…!」
 宗三左文字の腰も意図せずに揺らいで、歌仙兼定の口に向けて腰骨を突き出すように蠢いた。歌仙兼定はそれを拒否せず、いっそう力を込めて宗三左文字の雁首を刺激してくる。
「ンッ! ンぅ! っうふッ…う!」
 呼吸を阻害され淫楽を強制的に強められて、宗三左文字の体内は見る間に熱を溜めていく。体の全身を毒のように歌仙兼定のにおいや体温、愉楽で侵され、宗三左文字の屹立は放出を望むように滲出液を増やす。
 もう堪えられない、と思うところまで追い詰められた直後、歌仙兼定は唐突に宗三左文字を煽るのを止めた。屹立から口を離し、手指も宗三左文字の肌から離して、宗三左文字の口中から自分の竿も引き抜く。
「ッ、ぷぁっ、はぁッ………」
 喘いで息を継ぐ宗三左文字の肌に、口から抜かれたばかりの歌仙兼定の竿先が当たった。
「うッ、ぁ………、」
 自分の頭上、下肢の近くから征服欲を高めた緑色の瞳が見下ろしてくる。唾液と宗三左文字の先走りに汚れた歌仙兼定の唇が人の悪い微笑を形作った、と見る間に、宗三左文字の顔のすぐ傍で、歌仙兼定の屹立が射精を始めた。
「ッ、ぁ、あ、や………ッ…!」
 止めてくれと言う間も無く、迸った白濁で宗三左文字の顔は汚されていく。広い額と長い睫毛、淡紅色の髪、薄い朱唇、細い顎、水鳥のような細い首から鎖骨、蝶の紋様、その下の色づいた乳首にまで歌仙兼定の精が飛び散って、宗三左文字の顔は精液まみれになった。
「…っあッ…ぅ、ぁ、ひどい……ことを……っ…」
 歌仙兼定が射精を終えた後、ようように口を開いてそう抗議するのが宗三左文字には精一杯だった。喋る合間にも唇を割って精液が口中に流れ込み、宗三左文字の舌を苦く刺激する。瞼にも精はかかっていて、宗三左文字は目を開けることもできない。鼻にも精は滴って、ひどく生臭いにおいがした。
「………は……、済まないね、宗三左文字どの………」
 悪びれた素振りも無い満足げな声が、切れ切れに頭上から降ってきた。
 整った宗三左文字の顔と上半身を己の精で汚しきって、放ったばかりの歌仙兼定は更なる情欲を自覚する。
「もう少し……、そのままで、いてくれ……、すぐに、きみも、満足させてあげるから………っ」
 宗三左文字の顔を汚したまま拭き取ってやることもせずに、歌仙兼定は己の身体の向きを変えて宗三左文字の下肢を開かせた。
 天に向けて屹立する宗三左文字の陰茎の影になった後孔を眼前に露わにさせて、太腿を掴んで臀部を高々と持ち上げ、蕾を指で押し広げる。
「ッ、ぁ、か、かせん…ッ」
 尻が一番高くなるように身を丸められて苦しげに呻いた宗三左文字の声に歌仙兼定は口では答えなかった。
 歌仙兼定は無言で、宗三左文字の顔を汚したことで再びいきり立った己の屹立を宗三左文字の赤く色づいた後孔へと落とし込んでいく。
「っ…く………、」
「ンぁ………ぁ、あァっ…、ひゃあッ…ンんぅ………!」
 ずぷん、と音をさせて最奥部まで屹立を突き込むと、抗議めいていた宗三左文字の声は忽ちのうちに嬌声に変じた。
「あッ…あァ………、歌仙……ッ…!」
 顔に歌仙兼定の精をつけたまま、組み敷かれ貫かれた宗三左文字がひくひくと身を震わせた。
「全部を僕の目に見せつけるような、こんな恥ずかしい体勢でも………、感じてしまうのかい………?」
 目の開かぬ宗三左文字に歌仙兼定が言い下ろす。
「きみの、竿………、ふふ……、今にも、達してしまいそうだよ………?」
「ッ………、」
 目を閉ざしたまま、宗三左文字の眉が辛そうに歪んだ。
「あ…はァ……っかせん…ッ、………ねが………、」
 体を丸められ、肺が圧迫されている所為で声も大きく放てず、宗三左文字が掠れた声を絞り出す。血液中の空気が不足するため筋肉が収縮し、後孔では歌仙兼定を締め上げ、宗三左文字自身は勃起を更に強める。
「歌仙、兼定……ッ…、ぁ…お願いです……ッ、このまま…では、辛くて………っ…」
 歌仙兼定に捕らえられて動けぬ体で、宗三左文字は必死に悶え、訴えた。
「うご…いて………っ、ンぁ、ぁ……、もっと………よく、してくださ……ッ」
 撒かれた精の絡んだ朱唇から白濁混じりの唾液が溢れ、赤い舌先が顔を出している。宗三左文字の顔にかかった精液はそろそろ滴り切り、同時に乾き始めつつあった。淫熱と酸欠とで頬を真っ赤に染めた宗三左文字が半眼に目を開く。白濁のついた淡紅色の睫毛の下から、夜の井戸のような深い色の瞳が顕れる。涙に滲んでたくさんの星を宿した深い緑と青の目が、懇願するように歌仙兼定を見つめてきた。
「……………、」
 瞬きすら忘れてその視線に引き込まれながら、歌仙兼定は腰を入れて宗三左文字の後孔へ抽送を始める。
「ンぅッ、ぁッ、ひぁあッ、っはァッ」
 揺さぶられて宗三左文字が声を上げた。
 揺すり上げられて、宗三左文字の体の周囲に淡紅色の髪が散り広がっていく。
「っ、く、」
 宗三左文字の体の上に、自らの汗を滴らせながら、歌仙兼定はぐちゅぐちゅと音を立てて宗三左文字の中を掻き回す。
「ッ、んっふ、くぅッ、ンぁッ、あ…ぁ、か、かせん、もっと………ッ…」
 熱い喘ぎを喉から吐きながら、宗三左文字がねだってくる。揺さぶられる宗三左文字の屹立からその都度先走りがぽとぽとと落ちて自分の腹と胸を汚すが、宗三左文字には全く自覚できないようだった。
 抽送を続けながら、歌仙兼定は手を伸ばして、快楽に膨張を極めた宗三左文字の竿を掴んだ。
「っ………! ン、ぁあッ……!」
 射精を促すのかと思いきや、歌仙兼定の器用な手指は、宗三左文字の竿の根元を強く掴んで、精の出口を否応なく塞いでしまった。
「ッ! ぁ、ひぃッ! ッそ、それ、ダメっ………や、あァっ……!」
 後孔では容赦なく前立腺を突かれて、宗三左文字は快楽に逃げ場をなくして悶絶する。
「ッぐ、ンひッ! っや、ぁ、手、はな…してッ、ぁ、ひっ…!」
 快楽を煽られるのに射精を我慢させられるのは初めてで、相反する刺激に宗三左文字は目を見開いてびくびくと身を震わせた。
「やぁあッ、ぁ、も……イきた……ッ、あぁ、かせん、っイかせて…っくださ…ッ、あァッ……!」
「もう少し我慢してくれ、宗三左文字どの」
 声は優しいが、歌仙兼定は手指を宗三左文字の竿から離してくれない。
「最後は、いちばん感じる体位で、入れて…あげるから………、」
 さすがに息を荒らげながら歌仙兼定は言い下ろして、勃起しきった屹立を宗三左文字の後孔から一度抜いた。
「ッ……、はっ……、」
 快楽による責めを中断されてようやく息をついた宗三左文字の体を一度横たえて、歌仙兼定は恋人の薄い裸身を俯せにひっくり返した。
「っ………ぁ…、あぅ………!」
 宗三左文字の屹立を握ったまま器用に臀部を抱き寄せて、侵入されることにすっかり馴染んだ後孔にもう一度、奥深くまで己自身を突き立てた。
「ひぃ…あぁ……あぁあ………ッ…!」
 下肢から巡る強い快楽にがくがくと体を震わせて宗三左文字が仰け反る。
「どう…だい………? 宗三左文字どの………、」
 耳の後ろから唐突に低い声で呼ばわれて、宗三左文字の上体がひくりと動いた。
「ン…ぁっ、あ、イイ………っ…!」
 奥深くに突き込まれたまま、腰を回すようにして最奥部を竿先で探られて、宗三左文字の喉から喘鳴のように言葉が漏れる。
「ふ…、まだ……、イきたく、ない、だろう……?」
 次いで腰をゆっくりとくねらせながら、歌仙兼定が意地悪く問うてきた。
 器用な手は宗三左文字の竿の根元を掴んだままだ。
「ン、はぁ、あッ…ひぁッ……」
 肯定とも否定とも取れぬ呻きしか、宗三左文字は返せなかった。
 ぴくぴくと震える屹立を押さえ込まれて、苦悶にも似た快楽に身震いしながら、宗三左文字は歌仙兼定の律動に身を添わせる。
 歌仙兼定が後背から宗三左文字の耳に唇を当て、舌を這わせてくる。
「好きだよ、宗三左文字どの………。僕の、鳥……、僕だけの……」
「ッ、はぁっ、あッ…」
 背を覆う薄紅の滝のような髪をかき上げてうなじを露出させ、歌仙兼定はそこに接吻を落とす。
「もっと。僕を感じてくれ」
 歌仙兼定の腕が宗三左文字の胴を抱いて、指が蝶の刺青と乳首を這う。
「んッ、ぁ…! か、かせんかねさだ……っ…!」
 掠れた声で、宗三左文字は恋人の名を呼ばった。
 歌仙兼定の唇、歌仙兼定の舌、歌仙兼定の屹立、歌仙兼定の声、歌仙兼定の指、全身に触れてくる歌仙兼定の熱と皮膚。
 身体と心全てで歌仙兼定を受け入れて、己の全てが愉楽に侵蝕されていく。
「あっ、はぁ、ッ……ンっ…ぁ!」
 射精したいのにそれを果たせば快楽が終わってしまう、それが惜しくて、宗三左文字は泣くように頽れながら、ただ腰を揺らめかせた。
「かっ…かせん………あぁ…歌仙兼定……!」
 力が抜けて、閉じることもできずにわななく唇から、唾液と共に恋うる者の名が溢れる。
 愉悦とそれ以上の何かで体がいっぱいになって胸が震え、宗三左文字は目尻から涙を零した。
「かせん……、歌仙………っ…」
「宗三左文字どの………」
 後背から言い下ろされる声は優しく、口角が上がっているのがわかる声音だった。
「愛してる」
「ッ……、は…、」
 宗三左文字の身がぴくりと震える。
 歌仙兼定の言う『愛』が何かを、今や宗三左文字は理解しかけていた。
 心の中の、ただ『好き』と思うよりずっと深い場所で自分に向けて発せられる、歌仙兼定のその感情。
 それを自分も、歌仙兼定に対して持っている。
 宗三左文字は熱に揺らぎながら、それを正直に告白した。
「あッ…ぁ、あァ……、歌仙兼定………っ、は、ぁ、っ僕も………。僕も、あなたを、………愛して……」
「………!」
 瞬間歌仙兼定の動きが止まり、呼吸すら途絶えた。
 歌仙兼定は目を見開いて息を飲み、ただ宗三左文字を見下ろす。
「………、宗…、」
 発した声は震えて言葉にならない。
「………本当に……?」
 掠れた声でも確認せずにはおれず、歌仙兼定は囁くようなかすかな声で恋人に問いかける。
「………、は、」
 宗三左文字が力の入らぬ手で身を起こし、横顔を見せて、涙に濡れた瞳を片方だけこちらに向けた。
「…っ、わかるでしょう…、あなたなら………、僕が、あなたを……好きで、…愛してると……っ……」
『愛している』と口に上せながら、宗三左文字の目からぼろぼろと涙が溢れた。
 口に出すことで、その言葉が持つ重みを今更改めて思い知ったというように。
「かせん……、は…、歌仙兼定……」
 涙に萎れ、くたくたと再び身を頽れさせて、宗三左文字が喘いで懇願してきた。
「お願いです……もう…イかせて、くださ……っは、ぁ、もう、体が、保たな………」
「………、……」
 宗三左文字を見下ろす歌仙兼定の目がひどく優しいもので揺らいだ。
 歌仙兼定は宗三左文字の懇願を素直に受け入れて、握っていた宗三左文字の屹立をゆっくりと、だが意思を持って擦り上げる。
「ッン…ぁッ、あ、ンぁあッ………!」
 同時に後背から前立腺を竿先で強く擦り上げられて、宗三左文字は歌仙兼定に抱き込まれたままで精を放つ。
「く………、」
 後背で、歌仙兼定の呻く声が聞こえた。
 己の開放感とほぼ同時に体内で再び熱が荒れ狂い、歌仙兼定が三度目の精を己の内側で放ったことを宗三左文字は自覚する。
「っ……はぁッ、ンは……っ…」
 腹の中を歌仙兼定の精で満たされ、自分は射精を終えて、宗三左文字はぐったりと全身を寝床の上に投げ出した。
「宗三左文字どの」
 陰茎を宗三左文字の後孔から引き抜いて、呼吸を整えながら、歌仙兼定が宗三左文字の顔に接吻を浴びせてくる。
 先程自分で放った、宗三左文字の顔に残った精を丁寧に指で拭いながら、まだ息の荒い宗三左文字の唇の端に、歌仙兼定は口づけた。
「………ン…」
 接吻に応えながら宗三左文字が目を閉じると、涙の欠片が汗と精に濡れた頬を滴っていった。
 歌仙兼定の唇が動いて、宗三左文字の目尻から涙を吸う。
「宗三左文字どの………」
 自分を呼ぶ声に、歌仙兼定の悦びが満ちている。
「歌仙兼定」
 宗三左文字は囁くように愛する者の名を呼んで、体を仰向けにして歌仙兼定の肩に腕を絡め、唇に降りてきた接吻に陶然と応えた。
 上体を抱き寄せられ、幾度か接吻を繰り返した後に、歌仙兼定は少しだけ顔を離して微笑しながら宗三左文字の面を覗き込んできた。
「きみが僕を愛してくれていることは知っていたが……、」
 頬が紅潮しているのは情交の名残だけではなく、歌仙兼定が心から喜んでいることを示していた。
「それを自覚して、しかも僕に伝えてくれるとは思わなかったな。……嬉しいよ、宗三左文字どの」
「………歌仙兼定……」
 精を放出した後のけだるい疲労の中で、宗三左文字は微笑を返した。
「あなたがいてくださらないと、僕は幸福になれないのです」
「………うん。肝に銘じておくよ」
 夜闇の中で、歌仙兼定の笑みが深くなった。

 夜更けに二人で身を寄せながら寝床から抜け出して、縁へ続く襖を少しだけ開けた。
 月の光が部屋の中に届いて、開いた襖の分だけ、細い光の筋が畳の上に生まれる。
 外を覗くと、真円に僅かに欠ける月が、時折雲に隠れながら西に傾いていた。
 歌仙兼定の目の前で、月の薄明かりに照らされて、宗三左文字の細い面が青白く輝いている。
 夜に満ちる爛漫の春の気配を、今になってようやくふたりは知覚していた。
「風流だね」
 歌仙兼定が耳元で囁くのに宗三左文字は頷く。
「ええ。……風の中に、春の香りが漂っていますね」
「風流なのはきみだよ」
 歌仙兼定は笑って、宗三左文字の体を引き寄せる。
 宗三左文字の鼻腔に、春のにおいと共に歌仙兼定の香混じりの体臭が満ちる。
「季節を問わず。何時でもね」
 寝乱れた宗三左文字の髪を指でかき上げて、歌仙兼定は宗三左文字の唇に口づけた。




next