<其乃二> 平野が留守の間、薬研は平野が居室にしていた場所で寝るように主に命じられていた。 打刀連中は夜間の出陣や遠征も多く、その場合には部屋付きの短刀の子たちは不寝番をすることもある。平野の部屋は宗三左文字の居室にごく近く、彼が寝起きする気配すら、耳をそばだてれば感じ取れるような距離にあった。 几帳面な性格を表すように平野の部屋は綺麗に片付けられている。宗三左文字の居室も余計な物はおろか装飾的な品さえ一切無いからんとした部屋だが、平野の部屋も同様だった。布団と行灯、平野の制服の替えくらいしか家具は無い。 薬研藤四郎は平野の布団に潜り込んで、眠れぬままに刻を過ごしていた。 聞こうとして息を殺せば、寝返りを打つ宗三左文字の気配が感じ取れる。宗三左文字の元に行くよう主に命じられたとき、何をおいても拒むべきだった、と薬研は今更後悔した。新たな出陣部隊の構成員となった部屋付きの短刀の子は他にもいたのだから、彼らの代役にして貰うよう頼み込むべきだったのだ。 しかしまさか、宗三左文字の裸身を見ただけで自分がああも昂奮するとは思わなかった。そして、今となっては、主に代役を頼むよう願い出ることも薬研にはできなかった。 宗三左文字の傍に居たい。一時でも長く。 宗三左文字の傍で一日を過ごしただけで、薬研藤四郎は既に、宗三左文字の元から離れたくなくなっている己を自覚していた。 二度の食事の間、戸を隔てて、薬研は宗三左文字の動向が気になって仕方なかった。本を広げて読むどころではない。彼の溜息、食器を置く音、衣擦れ、そうしたものを、息を詰めて、全身を耳にして聞いていた。宗三のことが気になるあまり、自分の食がなかなか進められない有様だった。普段なら、厚藤四郎や愛染国俊と競い合うほどの早食いなのに。宗三の傍に居ることは、胸が詰まるような心地がするのと同時に、今まで感じた事が無いほどに幸福な時間でもあった。 今現在も。布団の中で横になっていてすら、隣室で眠る宗三左文字の気配が気になって、薬研は目が冴えて眠れない。宗三左文字がどんな寝姿をしているかと妄想すると、厠で吐ききった筈の情欲がまたしても腹に凝ってくるような気がする。 隣室で、宗三左文字が寝床を起き出す気配があった。厠だろうか、と薬研藤四郎が思っている間に、足音は立たずとも宗三左文字のかそけき気配が移動して、自分が寝ている平野の部屋の戸が音もなく開かれた。 「………薬研」 寝間着である白浴衣から鎖骨を覗かせて、宗三左文字が声をかけてきた。 風呂で見た濡れ髪はすっかり渇き、顔の周囲に散る薄紅の髪は常の通りに高く結い上げられている。 「宗三。……どうした」 薬研藤四郎は起き上がって宗三左文字を見た。宗三左文字から風呂を浴びた者の清潔なにおいと、同時に新たに纏った宗三左文字のいつもの香の薫りが漂ってくる。厠であんなに精を吐いたのに、宗三左文字の存在を視認しただけで、薬研は自分の竿が強ばり始めるのを自覚した。 「あなたと僕とは、もっとわかり合う必要があると思うのです」 言いながら宗三左文字は体を部屋の中に入れ、自らが入ってきた戸を閉めてしまう。 「……明日にしようぜ、宗三。今日はもう遅すぎる」 下肢を布団の中に隠したまま、薬研藤四郎は答える。 薬研自身も平野の寝間着である、寸法の小さな白浴衣を借りて纏っていた。 宗三左文字は座したまま、畳の上で膝を擦るようにして部屋の中央に座る薬研に近づき、薬研の顔にその白い面を寄せてきた。 薬研の鼻腔を、宗三左文字の香の薫りがくすぐる。 「明日では、遅すぎます……今夜のうちに、済ませてしまうべきでしょう」 暗がりの中で、夜そのもののような色を持つ宗三左文字の瞳が薬研藤四郎を映す。 宗三左文字の目が酷く潤んでいることに、その時初めて薬研は気づいた。 「あなただって……それは望むところでしょう? 薬研」 宗三左文字が優美な手をそっと伸べて、薬研の顎に触れてくる。 「……、宗………、」 声を上げる暇も与えず。 宗三左文字の唇が薬研藤四郎の唇を塞いだ。 「ン! ん……むっ…」 あまりのことに薬研藤四郎は驚きはした。が、宵のうちから、己の身の裡に抱えていた欲望が果たされたのだ。薬研はすぐに初めての接吻に恍惚となって、自ら宗三左文字の口に食いつき、必死でその唇を食んだ。 「ん……んふ、ふッ…ン………」 宗三左文字の大人の唇は薄く柔らかく、舌はあくまで優しくて、薬研藤四郎はやがて宗三左文字の白く細い首に両腕でかじりついて接吻を堪能した。加減もわからず、昂奮のままに唇に歯を立てて宗三左文字の唇の奥に舌をねじ込み、舌と舌を絡めて唾液が混ざるようにする。唇肉自体も囓るように食むと、痛みを感じたか宗三左文字が苦笑しながら唇を離した。 「ん…ふ、は………、そんなに荒っぽくしたら、僕の口に傷がついてしまいますよ………、」 「そうか………、済まなかったな。内向きのことと一緒で、俺っちはこうしたことは経験がねえんだ」 気まずくなって薬研藤四郎は返したが、そう言いながらも心は尚もそぞろだった。今度は薬研藤四郎から、ねだるように唇を宗三左文字の口に寄せると、宗三左文字は微笑みながらそれに応えて、口を吸わせてくれた。 「ン…っ、ん……む、ンぅ………」 乱暴にならないように気をつけながら、宗三左文字の両唇の奥に舌を割り込ませて、その歯列の奥を探る。 「ンふ………ぅ、」 宗三左文字の薄い舌が薬研藤四郎の舌に伸びてきて、唾液と共に熱を絡め合った。 薬研藤四郎は恍惚となって宗三左文字との接吻に没頭する。 宗三左文字の白い手が撫でるように薬研藤四郎の肩と胸を辿って、腹部に降り、浴衣の裾を割ったことを、薬研は殆ど自覚できなかった。 強ばった竿に肌着越しに手を触れられて、びく、と薬研の体が震える。 「ッ、そうざ………、」 思わず口を離し、困惑気味に名を呼ぶと、夜の中で宗三左文字は微笑んで、唾液に濡れ、赤く腫れた、接吻痕のついた自分の唇にもう片方の手の人差し指を当てて、黙るよう薬研に合図をした。 優しく微笑する宗三左文字の頬は赤く上気していて、薬研はその艶っぽさに見惚れる。 「黙って………、体を楽にしていてください、薬研………僕が、すべてしてあげますから」 「……………宗三…?」 「しっ………」 重ねて黙るよう宗三左文字は薬研に指示すると、薬研藤四郎が下肢に掛けていた布団を完全に剥がして、ふたりの脇に追いやってしまう。 薬研の浴衣の裾は既に割られていたので、宗三左文字の目には、肌着の下で膨らんだ薬研自身が現れていた。 「ふ………、若いですね……。口づけただけでこんなになるなんて。僕との接吻が、そんなに心地よかったですか……?」 宗三左文字の指摘どおり、薬研藤四郎の竿は肌着の中で大きく勃起している。 宗三左文字は躊躇うことも無く、白く細い手を伸ばして、男にしては繊細な指で薬研藤四郎の屹立に肌着越しに再度触れた。 「ッ、は、そうざ……っ」 「体は少年なのに……。こちらはもう立派な『男』なのですね、薬研」 薬研藤四郎の下肢に視線を落としながら宗三左文字は嬉しげに言って、頭を薬研の股間に落とした。 「っ、なに………、」 何をするのか、と薬研が問う暇も無かった。 宗三左文字の白い手が、丁寧だが迷いの無い所作で薬研の肌着を捲って、屹立した薬研自身を夜気の中に露わにする。 その上で、宗三左文字を思って膨張した薬研の竿を、宗三左文字は至近に顔を近づけてしげしげと見つめた。 「まだ顔も幼さを残しているのに………こちらときたら、怪しからぬほどの存在感ですね」 「っ………、」 羞恥を強く煽られて、薬研藤四郎はかっと頬を赤らめた。 短刀の子たちで使う共同風呂や厠で、粟田口の短刀の子たちと性器を比べ見したことが幾度かある。確かに薬研藤四郎の一物は、他の子たちと比べて大人びて太く大きく、色も黒々としていた。 「そんなこと言われても……、俺っちの所為じゃ……ねぇだろう………、」 宗三左文字の言葉と同じようなことをかつて乱に言われてからかわれたことを思い出して、薬研藤四郎はいたたまれぬように声を絞り出した。 薬研の竿の至近に顔を近づけながら、宗三左文字が面白そうに薬研を見上げてくる。 「今のは褒め言葉ですよ……薬研」 くすり、と漏らす宗三左文字の笑みは、薬研の竿に赤い唇を自ら押しつけつつ為された。 「……ッ、」 竿に感じる不可知の快感に薬研は息を喘がせる。 宗三左文字の唇から舌が伸びて、薬研の竿をぬらぬらと上下していた。 「どうですか……心地いいですか…?」 薬研藤四郎の快楽は把握している、という顔で宗三左文字が薬研を見上げ、尋ねてくる。 宗三左文字の鼻息が竿先にかかり、そんな微細な刺激にさえ薬研の快楽は高められていく。 「ふ………、先端が苦いですね……もう、汁を漏らし始めてるんですね」 指摘されて、薬研は快楽と羞恥の板挟みで惑乱した。 体を強ばらせて我慢しようとしても、自分の体が別の何かに乗っ取られてしまったかのように抑制が利かない。 「っ、宗………、」 「ふふ………。もっと教えてさしあげます」 言うなり宗三左文字は口を大きく開いて、薬研が口づけた赤い唇でその竿先を挟み込み、口中に完全に亀頭を咥え込んだ。 「ん…む……」 「ッ……! あ、ぁ、そうざ………ッ!」 堪えきれぬほど膨らんで硬直した竿に、口中で宗三左文字の熱い舌がまとわりつく。唾液を絡められながらねっとりと舌で舐られ、やがて雁首の裏を舌先で軽くつつかれただけで、薬研は我慢することすら不可能になった。 「ぅッ……ぁ………!」 宗三左文字の口の中で藤四郎の屹立がびくりと震えて、射精が始まった。 びくびくと竿は幾度か震えながら、宗三左文字の喉にすべての精を吐ききった。 「ンっ………ぐ……」 宗三左文字は軽く呻いただけで、唇を薬研の竿から離さなかった。己が放出した熱い液体が竿と共に宗三左文字の口中を満たしているのを、薬研はその触感から知覚する。 「っ、そ、そうざ、」 宗三左文字はさすがに頬を赤く染めているが、比較的平静な顔で、ゆっくりと竿を唇から抜いていく。殆どの精は宗三左文字の口中に残ったままだったが、ほんの少量の白濁が、宗三左文字の赤い唇から糸を引いて薬研藤四郎の竿と腹の上に垂れた。 その淫靡な様を目の当たりにして、薬研がごくりと唾を飲み込んでいる間に。 宗三左文字は薬研を見上げて、彼にしてはやや珍しく挑ましげに、それでも優しく微笑みかけて、喉を二、三度上下させ、口の中の液体を全て胃へと流し込んでいった。 「……っ、宗三………、」 「全部飲んでしまいましたよ……薬研」 酸欠と淫欲で頬を上気させながら、宗三左文字が勝ち誇ったように笑った。 「そうざ………、」 宗三左文字をただ見つめて息を喘がせる薬研の前で、宗三は膝立ちになり、座ったままの薬研の顔を見下ろしながら、見せつけるようにして己の浴衣の腰帯を解いていく。 浴衣はすぐに割れて、その中から、風呂場で見たのと同じ宗三左文字の裸身と胸の刻印、そして明らかに、中で宗三自身が勃起しているとわかる肌着が姿を現した。 「薬研、あなたを口で悦ばせている間に……、僕のものも、こんなになってしまったんですよ………、は………、」 宗三左文字も昂奮したように息を喘がせながら、薬研が見ている前で己の下褌の紐を解いた。 自分のもの以外に、大人の男性器が勃起しているところを、薬研藤四郎は初めて見た。 宗三左文字のそれは自分のものより若干色は明るく、形は華奢で、だがそれが薬研を挑発するようにそそり立ち、赤く膨らんだ先端から先走りの液を零して陰嚢にまで汁を滴らせていた。 「……宗三」 薬研の竿は、宗三左文字の裸身と淫欲を見たことで、完全に力を取り戻している。 それを見下ろしながら、宗三左文字が淫蕩に微笑んだ。 「ふ………、若いから……、復活も驚くほど早いのですね……、ン……、ぁ、」 喘ぐような声に薬研が宗三左文字を見れば、宗三左文字は、屹立の奥に控えた菊の座に自分で指を突き込んで揉みほぐし始めていた。 「ふふ……、今度はこちらで…、あなたを飲み込んでさしあげますよ、薬研、」 いつもと変わらぬ優しげな微笑が今は淫奔に蕩け、宗三左文字の鼻先から、薬研の体の上に汗が降ってきた。 「薬研………、僕に、あなたを下さい」 言いながら、宗三左文字は薬研藤四郎の腰を下肢で跨ぎ、指に掴んだ薬研藤四郎の屹立を己の臀部の中央に押し当てて、そのままゆっくりと尻を落としてきた。 「ッ……ン…、ぁ………ッ! そ、そうざ……!」 「ンぁ…あっ、は………ぁ、あァ……っ! っく……!」 宗三左文字が天を向き口を大きく開けて、出来るだけ体から力を抜きながら、己の狭い後孔でゆっくりと薬研の屹立を飲み込んでいった。 「は、っく……キツ………!」 内部に侵入した竿から伝わる、その狭さと熱さに、体中が痺れたようになって思わず薬研は声を漏らした。 「あぁ……薬研……、薬研、」 うわごとのように薬研の名を呼びながら、宗三左文字は薬研藤四郎の竿を根元まで後孔で飲み込んだ。 「はぁ……、は、全部………、入り、ました……」 宗三左文字が薬研の腰の上で身動きをすると、痺れが激越な快楽となって薬研に伝わる。 「こん…どは……、さっきより、長く、我慢して、下さいね……、少しだけで、いいですから……っ…、」 喘ぎながら宗三左文字は言って、ゆっくりと腰を揺すり始めた。 「! っ、は、ぁぐッ、そうざ、待っ………、」 快楽に体の力が抜けたようになって、薬研はただ宗三左文字の名を呼んだ。 「ふふ……可愛いですね、薬研……、もっと、僕で、悦んでください……、っは、ンぅッ…」 宗三左文字の腰の揺らぎが大きくなり、かろうじて肩に掛かっていた浴衣がすべて宗三左文字の体から滑り落ちた。 薬研藤四郎の目の前に、宗三左文字の体の全てが露わになる。 二連の黒玉の数珠が相変わらず宗三左文字の胸に絡んで、ちりちりと微かな音を立てて揺れている。 数珠は宗三左文字の汗が絡んで、ひどく淫靡に黒光りしていた。 宗三の白い胸の中に浮く赤い乳首も、数珠玉のように突き立っている。 「あッ、はぁ、っや、薬研、薬研……、っ僕も……気持ち、いいのです………ンぁっ、あッ」 いつもの清楚さをかなぐり捨てて、宗三左文字は薬研藤四郎の体の上で腰を振り続ける。 宗三左文字の体の動きに合わせ、高く結い上げた薄紅色の頭髪が生き物のようにうねって、薬研藤四郎を蠱惑する。 宗三左文字の体の中で、薬研の屹立はすぐに放射直前まで追い詰められていった。 「ッ、く、ダメだ……抜け、そうざ………っ」 「んっ、は、ふ……なぜ、ですか………? あなただって、僕の中で、こんなに大きく育って、悦んでいるのに…っ、ぁ、あァ、」 身を揺する宗三は薬研を煽るのを止めてはくれない。 「っ……これ以上したらッ……あんたの中を………、汚しちまう……!」 快楽が爆発しそうになるのを必死に押さえ込みながら、薬研は声を振り絞った。 宗三左文字が少しだけ腰の動きを緩めて、薬研に向けて柔らかに微笑み下ろしてきた。 「ふふ………、いいんですよ、あなたになら………薬研……、僕の中を、たっぷりと、汚しても………」 「ッ…………!」 後孔にそのまま射精していいと言われて、薬研の官能がひときわ高まった。 「最後まで……、僕と、してください、薬研………、僕を、完全に、あなたのものに……ッ、ンぁ、はァっ、っふ…っ」 宗三は再び大きく腰を揺すり始め、今度は薬研を最後まで追い上げるつもりで更に快楽を重ねてきた。 「ッ…、ぁ、あ……そうざ………、もう……出しちまうぞ………!」 もう限界だった。 薬研は宗三左文字の大人にしては細い腰を両手でがっちりと掴んで、下から強く腰を突き上げた。 「っ! ンぁ、アッ!」 宗三が喉を仰け反らせ、か細い悲鳴のような声を上げた。 薄紅の髪がばさりと揺れて、上気した裸身から玉のように汗が降ってくる。 「っく………!」 下肢に力を込め、尻が浮き上がるほどに宗三に向かって腰を突き上げ、薬研はそのまま己を解放する。 「はッ……ぁ…、ひッ………!」 放出の瞬間、薬研は目を見開いて宗三左文字の顔を見上げた。 薬研の射精が宗三の直腸を満たす間、宗三左文字はひくひくと身を震わせて、無意識のように己の勃起した竿を右手で掴んだ。 「あッ……あぁ………中が……満たされて、熱い…です………やげん………っ…、っ僕も……、もう………!」 放出を終えた薬研の竿を後孔に埋めたまま、宗三左文字が己の勃起を手で強く扱いた。 「はッ……あぁ…、あァ………っ、ぅ…ッ………!」 びく、と宗三の手の中で宗三の屹立が震え、宗三左文字もまた己を解放する。 宗三の竿先から精液が勢いよく飛び散って、薬研の首から腹まで白濁が雨のように降りかかった。 「ッ………ぅ、はぁ……、はぁ…っ…」 射精を終えて、宗三左文字が、くったりと上体を頽れさせる。 「ふふ………薬研」 頬を赤く染めた宗三左文字が薬研の顔を見て、柔らかく微笑んだ。 「あなたが、僕の中を汚して………、僕も、あなたを汚しましたよ………」 息を整え終えた宗三が腰を上げて薬研の竿を後孔から引き抜くと、拡がった菊座から白い液体が糸を引いて漏れ出てきた。 宗三左文字が薬研藤四郎の体の上にのしかかり、薬研の体の上に飛び散った己の精を指でこねくりながら薬研の肌に塗り広げていく。 「これで僕たちは、お互いのものですね」 含羞むように微笑んで、宗三が薬研の頬に顔を寄せた。 「満足しましたか………? 薬研………。それとも」 至近で、宗三左文字の暗い緑と青の目が悪戯っぽく笑う。 「今度はあなたが動いてみますか………?」 薬研藤四郎に否やはなかった。 「宗三」 早くも情欲に猛った声で薬研は宗三左文字の名を呼んで、自分のものになった青年の薄い体を腕を絡めて抱き寄せ、自分の小柄な体の下に押し倒した。 「………………………」 子の刻の頃。 布団から上半身だけを起こして薬研藤四郎は悄然としていた。 人の身をなぞる刀剣男士の肉体とは時々ひどく厄介だ。 怪我もそうだが、それ以外においても。 睡眠中に夢を見る、とか。 性的な欲望を持つ、とか。 あまつさえ、夢精さえも為してしまう、とか。 宗三左文字を交わる夢を見て汚してしまったのが自分の肌着だけで済んで幸いだった、と思うべきなのだろう。平野の浴衣や布団まで自らの精で汚してしまった日には、平野に合わす顔が無い。 目が覚めてみれば、今しがたの幸福な事態が、己の願望が夢として顕れただけであることは明白だった。 日中から夜まで、あんな態度を取った自分に、宗三左文字が態々交わりに来てくれるはずが無かった。むしろ宗三左文字は自分を苦手に思っていることだろう。 この身がせめて、打刀や太刀と同様、人間の青年ほどの齢だったら良かったのに。薬研は埒もなくそう考えた。 宗三左文字の体を抱き込み、抱え上げられるほどの身長と膂力があったら、もう少し宗三左文字に対して積極的な態度に出られたかも知れなかった。 ふう、と吐息をついて、薬研は無意味な思考を脳から追い払い、布団から出る。 とりあえず水場で肌着を洗う必要があった。 |
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