<其乃十一>


「っ……ふ……、」
 口づけを繰り返しながら、歌仙兼定は宗三左文字の身を優しく、再び夜具の上に横たえた。
「ン…………ぁ、」
 痩身の宗三左文字の上にのしかかり、その白い頬や顎に接吻しながら、歌仙兼定は僧衣の帯を解く。内着の腰帯も解くと、衣服は宗三左文字のなめらかな肌の上を滑り落ちて、胸に刻まれた信長の紋様が露わになった。
 黒い蝶が、宗三左文字の呼吸に合わせて生きているかのように上下する。すぐ傍にある乳首が、露出によって固く尖り、歌仙兼定の目を誘っていた。
 宗三左文字の首に掛かった黒数珠を、歌仙兼定は器用な手つきで胸の上で転がす。
「っ……、はぁ、」
 刺激による甘い喘ぎが宗三左文字の喉から漏れて、熱い息が歌仙兼定の顔に掛かった。
 数珠が乳首を刺激すると、そこはいっそう固く腫れて、赤みを増していった。
「此処をこう触れられるのは……、心地いいかい? 宗三左文字どの……、」
「……ッ、…」
 変わらず数珠で乳首に刺激を与えられながら問われて、宗三左文字は頬を赤らめる。
「……答えて、くれないんだね……?」
 優しくはあってもそう言い下ろしながら、歌仙兼定は別の乳首に指を伸ばして、素手で突起を摘まんだ。
「っ! ひぅッ……、」
 両の乳首に刺激を受けて、宗三左文字の身体がびくりと強張る。
 宗三左文字の白い裸身は忽ち仄赤に染まっていった。
 歌仙兼定は数珠を退けて、隠れていたほうの乳首を晒すと、顔を落としてそちらに舌先を這わせた。
「ンっく……! ひぁッ……!」
 乳輪に唇で吸い付き、痕が付くほどに強く吸い上げる。
「あッ……、あ、」
 痛みよりも快楽が勝るらしく、歌仙兼定の体の下で宗三左文字は身を捩って熱い喘ぎ声を上げた。
 本人には自覚がなくとも、宗三左文字は元来淫に流されやすく、被虐にも感応しやすい体質のようだ。
 だからと言って先ほど交わったときのように、宗三左文字を貶めながら犯すことはもはや二振目にはできなかった。
 嬲る言葉の代わりに、歌仙兼定は宗三左文字の肌理細かな肌に両唇で吸い付いて、音を立てながら痣を幾つも残していく。信長の遺した蝶の刻印、一振目の歌仙兼定が遺した赤い傷痕。自分のつける接吻痕が彼らへの嫉妬からくるものだということに、おそらく宗三左文字本人は気づくまい。
「うっ……あぁ……、は……、」
 日常で他者に見られるような場所に痕を残さぬように気をつけはしたが、宗三左文字の肌は、二振目の唇の跡が辿れるほどに痣がついていった。自らも服を脱ぎながら、乳輪、乳首、脇腹、と歌仙兼定は唇で宗三左文字の肌の上を移動していく。宗三左文字の平らな腹にも痣を付けた後、舌先を繰り出して臍穴をちろちろと舐ると、宗三左文字の喉から鋭い声が漏れた。
「アッ! ぁ……ンぁッ…ぅ…………!」
 歌仙兼定の舌先の蠢きに合わせて宗三左文字の下肢が揺れる。肌着の下で竿が立ち上がりかけているのが陰影から見て取れた。
「ふ……此処を……舐められるのは好きかい…………?」
 舐る合間に歌仙兼定がそう訪ねても、宗三左文字からははかばかしい返事がない。
 視線を上げて宗三左文字の顔を見ると、宗三左文字は柳眉を曇らせて顔を真っ赤にしながら、泣くような表情で歌仙兼定を見つめていた。
「宗三左文字どの…………?」
「ッ…………」
 歌仙兼定の声には咎める響きはなかったのだが、宗三左文字は怯えたように肩を竦ませた。
「っ……、ぅ……僕、は…………、」
 かすかな声で宗三左文字が告白する。
「あなたの…前で……、淫らな様が、露見して……、あなたに、浅ましいと、思われたく……なくて…、っ……」
 羞恥に消え入りそうな声でそう言われて、二振目は、自分が宗三左文字に投げてきた言葉が如何に彼を傷つけていたかを改めて思い知った。
「宗三左文字どの…………」
 二振目の裡で、宗三左文字への愛おしさがいっそう募る。
 一度身を起こして、歌仙兼定は宗三左文字の総身の上に覆い被さり、再び口に接吻をした。
「ふっ……ぅ、ン……う……、」
 口づけられることに対しては宗三左文字の躊躇はなく、歌仙兼定が口内を舌で探っても、宗三左文字は抗わず、むしろそれに縋るように舌を絡めてくる。
 歌仙兼定の上半身は既に宗三左文字と同じく裸身になっていて、熱を帯びた互いの肌が擦れ合う。
「ッ……、ンむ……ぅ」
 口同士の隙間から唾液の混ざり合う水音がする。それを淫靡に聞きながら、歌仙兼定は手を延べて、強ばり始めている宗三左文字の竿を下褌越しに指で慰撫し出した。
「っ…! ン、ふぅ……っ…!」
 歌仙兼定の器用な手指の中で、宗三左文字の竿はますます強張って熱を持ってくる。歌仙兼定の体の下で宗三左文字が堪えるように身を捩り、数珠がじゃらりと揺れた。
「ン……! ぁッ、あ、やぁ……ッ! ぁ、はぁっ…!」
 遂に接吻さえ続けられなくなって、宗三左文字は首を振って唇をもぎ離し、快楽に喘ぎつつも、それから逃れようとするかのように歌仙兼定の下で藻掻いた。
「あ、や、歌仙兼定……、あ、あまり煽らないで………くださ……ンぁッ」
 陰茎を歌仙兼定に捕らえられたままで、宗三左文字が涙に滲んだ目で見上げて懇願してくる。
「ッ……浅ましい様になるのが…………、止められな……、っ、ンくっ」
 声すら抑えたいのか、宗三左文字は右手で己の口を覆ってしまう。左手は歌仙兼定の身を押し退けようとしてその二の腕に絡んでくるが、既に手から力は抜けていた。
「…………、」
 惑乱する宗三左文字を気の毒だと思いつつも、支配感が高まるのは抑えられず、歌仙兼定は微笑する。淫楽に溺れやすい身体を持つ宗三左文字が、初心な自尊心を必死で護ろうとする様は、却って歌仙兼定の情欲を強く煽ることになった。身体の中央が熱を持ってくるのを自覚して、歌仙兼定は眼前の相手がいっそう欲しくなる。
「僕はきみに、もっと乱れて欲しいのだけれどね。宗三左文字どの」
 微笑したまま歌仙兼定は言って、宗三左文字の下褌を外してしまう。
「あッ……あ、や…………、あぁ、」
 肌着の下から勃起した竿が現われ、宗三左文字はいたたまれなさに頬を赤らめて眉を歪めた。
「きみの体は、独りでに、僕を求める…………きみはさっきそう言ってくれたね」
 微笑みながら歌仙兼定は宗三左文字の屹立に指で直に触れる。
「ッ! ひぅっ……、」
 竿先を探るように摘ままれて、宗三左文字はびくりと腰を震わせた。
「あッ、あ、歌仙兼定……、」
 快楽が欲しいのにそれを自分で認められず、宗三左文字が頼りなげに声を上げた。
「此処をこうして勃てていることが、その証なのだろうね。……宗三左文字どの」
「………っ、」
 宗三左文字は今にも泣き出しそうだ。
 二振目の歌仙兼定は再び自分の反応を蔑むだろうか、と危惧する宗三左文字に対する歌仙兼定の反応は意外なものだった。
「嬉しいね。宗三左文字どの」
 頬を紅潮させた歌仙兼定の笑みが深くなる。
 二藍の乱れ髪から覗く艶めいた美貌。その表情は自信に満ちていて、宗三左文字が好きだった歌仙兼定そのものだった。
「あ……、」
 思わずその顔に見惚れて動きを止めた宗三左文字の面に少しだけ目線をくれて、歌仙兼定はすぐに頭を宗三左文字の腰に落とした。
「もっと僕で、感じて欲しいな。……きみが、僕の手管で風流に乱れる様が見てみたい」
 二振目は宗三左文字の屹立に口づけ、宗三左文字のものより厚みのある唇で吸い付くと、すぐに舌を当てて竿を舐りだした。
「ッ! ひィっ!」
 熱く濡れた触感に激越なまでの快楽を煽られて、宗三左文字の腰がびくりと跳ね上がった。
「っ……、ぁッ、あっ、ッだめ……か、かせん……ッ、ひぁあッ!」
 歌仙兼定の手に捕らえられた宗三左文字の腰が揺すられる。歌仙兼定の口淫から逃れようというのか、舐る舌にもっと竿を押しつけようというのか判別しかねる動きだった。
「やぁ……あッ、ンぁ……っ!」
 それでも宗三左文字の手は、力を失いながらも歌仙兼定の頭を己の腰から押し退けようとしていた。喉から上がるのは紛れもない愉楽の声で、宗三左文字の背反する心身は惑乱を極めていく。
「嫌がらなくていいよ、宗三左文字どの……」
 腰を捕らえるのとは別の手で屹立を握りつつ、口淫の合間に歌仙兼定は余裕の笑みを漏らす。
「きみは僕のものを二度も舐めてくれただろう。今度は僕がお返しする番だよ」
 熱い息を屹立に吐きかけ、鼻先を宗三左文字の陰毛に潜らせて、歌仙兼定はいっそう深くへと宗三左文字の竿を喉に飲み込んだ。
「ンむ……」
「ッ……! ひ、ぁ、だめ…………! ッ、くひッ、やぁあ……ッ!」
 竿先を両唇で強く吸い上げられて、逃れようもない快楽に宗三左文字の身体はびくびくと跳ねる。宗三左文字の腰が浮くのを歌仙兼定が力強い両手で押さえつけ、容赦ない口淫を与えていく。
「あッ、ンぁ、ッや……、やめ……っ、か、かせんかねさだ…………!」
 放出を堪えようというように宗三左文字の腰が震える。
「ああ、やッ、やめて……ッ、もう、出……っ、ンぅうッ……!」
 亀頭全体を口に含んで雁裏を舌で刺激していると、いくらも経たぬうちに歌仙兼定の顔のすぐ傍で宗三左文字の腰が堪えかねたように震えた。
「! っ……、」
 唐突に射精は始まり、驚いた歌仙兼定は竿先から口を離さぬようにして全ての精を口中に留めるのがせいぜいだった。
 歌仙兼定の口中に、びゅるびゅると宗三左文字の精が迸る。
「ッ……、ぁ、ぁう…………っ、」
 放出の完了と同時に、身体から力の抜けた宗三左文字の喉から呻きが漏れる。
「…………、」
 宗三左文字が完全に果てたことを確認して、歌仙兼定は萎えた竿を口中から引き抜く。懐紙に精を吐き出しながら宗三左文字の顔を覗った。果てるのが随分早い、と思ったからだが、宗三左文字のほうでも自覚はあったらしく、宗三左文字はぐったりと裸身を横たえたまま、顔を両手で覆って泣いていた。
「っ……、ぅっく……、」
「宗三左文字どの……、」
 自分はまたも宗三左文字をいたぶりすぎたのだろうか、と危惧しながら二振目は声をかけた。
 歌仙兼定は宗三左文字の上にかがみ込んで、涙と汗に濡れたその手をそっと掴んで顔からはがす。
「済まない……僕はまた、きみに酷なことをしてしまっただろうか」
「………………っ、……」
 泣き顔を露わにされた羞恥もあるのか、宗三左文字は赤く染まった面を歌仙兼定から背けようとしながら、切れ切れに返答した。
「ち……違うのです……、っ…あ、あなたの所為ではなくて………、僕が……」
 淡紅色の伏せた睫毛から涙がこぼれ、紅潮した頬を伝っていく。
「…あ……、あなたは否定してくださいましたが……、ぼ、僕の身体はどこか、おかしいのでしょう……、あなたに触れられると、いつも、僕は理性を失くして、……はしたない様になってしまって……、」
 宗三左文字のその言葉が、二振目の脳裡で、記憶の何処かを刺激した。
「きみは………、」
 茶の湯の後、初めて彼と交わった夜。
 宗三左文字のあまりの官能に驚嘆しつつ『感じやすいんだね』と漏らした二振目に、宗三左文字は『あなたが触れるからだ』と返してきた。当時そのやりとりを二振目は、閨の中で行う前戯の、房事に慣れた者の言葉遊びのひとつと捉えて聞き流した。しかしあのときから既に宗三左文字にとって、その言葉は、二振目が想像もし得ないほどに真摯な意味を含んでいたのだ。
 近寄るだけで歌仙兼定に反応してしまうその身体を抱えて、二振目の僕と他人のように付き合ったり、恋う者を余所に持つのに誰とでも体を結ぶ淫乱と僕に罵られたり、僕から離れていこうと独り心決めしたりするのは、宗三左文字にとってはさぞ辛い体験だっただろう。
「宗三左文字どの。泣かないでくれ」
 宗三左文字を慰めたくて歌仙兼定は優しく言い下ろす。
「僕はきみの、そうした身体の反応は好きだよ」
 そう言われて、宗三左文字の涙に濡れた色違いの目が瞬きをし、次いで、歌仙兼定を縋るように見つめてきた。
「………………、」
「僕に反応しすぎてしまうのが、今きみが泣いている理由なのい…………?」
 宗三左文字の顔に手を延べて、熱いままの頬から涙を拭ってやりながら二振目は尋ねた。
「………………、」
 歌仙兼定に問われて、宗三左文字の赤い頬がいっそう色濃さを増す。
 歌仙兼定がそれを怪訝に思う内に、宗三左文字がようようその薄い唇を開いた。
「……た、堪えようと思ったのです……、あなたが、僕の為に、その……僕を、口で慰撫してくださるのは嬉しくて、心地よかったので…………、」
「うん」
 宗三左文字への口淫が彼を嬲ったことにはならなかった、と知って安堵しながら、歌仙兼定は返事をした。
「ただ、……その、僕が…………、か、身体が、快楽に弱い、所為で…………、あなたと、身体を結ぶまで、我慢が、き、利かなくて……」
「………………」
 歌仙兼定は緑色の目を瞠った。
 宗三左文字は羞恥の中で己の心情を告白するのに精一杯で、歌仙兼定の表情の変化には気づけなかった。
「堪えたかったのです……、あなたを、僕の中に受け入れて、そうやって果てたかったので…………で、ですのに……僕の身体はどうしても、あなたに対してはひどく淫らに反応してしまって…………」
「――――――」
「本当に…………、こんな、僕の体はどうしようもなくて、それが情けないのです…………、あ、あなたは…、こんな僕が、お厭では、ありませんか…………?」
「宗三左文字どの…………」
 呆気にとられつつも。
 宗三左文字が本気で尋ねていることを、もはや二振目は疑わなかった。
 後孔に屹立を受け入れながら果てたかった、と思慕する男に言われて、悦ばない者がいるだろうか。それに思いも及ばぬほどの、宗三左文字の世間知の無さは驚異的だった。自分が組み敷く彼は特別だ。こんな特別な恋が出来る相手はこの世に二人といるまい。
「…………きみは自分を浅ましいと卑下するが……」
 宗三左文字を瞬きもせずに見つめる緑の目に、強い占有欲が宿る。
 彼は僕だけのものだ。他のどんな者にも渡さない。
「僕がきみに対して浅ましい真似をすることには、寛容でいてくれるんだな」
 口の端に笑みを上せて言う歌仙兼定に対し、宗三左文字は涙を止めて当惑顔で彼の目を見つめ返す。
「…………どういうことでしょうか……? あなたは、僕に対して、浅ましいことなど何も…………」
「そうかい?」
 歌仙兼定の笑みが深くなる。
「じゃあ僕が……、きみのお尻の穴を自分の舌で抉って、唾液をそこに埋め込みたいと言ったら、快く承諾してくれるね?」
「…………………?」
 言われたことの意味がすぐにはわからなかった宗三左文字が、暫くして、酷く顔を紅潮させて首を激しく横に振ってきた。
「……ッ! だ、駄目です、そんな……! っそんな……猥りがましいことはっ…、」
「だって、きみの論理だと、僕は何をしても浅ましい男じゃないんだろう」
 歌仙兼定は宗三左文字の制止を全く聞かず、果てたばかりで力の入らないその薄い体を寝床の上で俯せにひっくり返す。
「なッ……、ぁ、だってそこは…、一度、あなたが竿で穿った場所なのですよ………!」
「そうだよ。きみが自分を淫らでそれを罪だと思うなら、この僕も同罪だ」
「やッ…ぁ、歌仙兼定……! ッだめ……っ、ひッ!」
 歌仙兼定の指が尻たぶの上を這うだけで、宗三左文字の喉から悲鳴が上がる。
 先刻歌仙兼定の竿を受け入れた宗三左文字の後孔は蕾が赤く膨らみ、竿と共に突き込まれた油薬が、蜜のようにそこから漏れ滴っていた。
「ああ……淫靡で、素晴らしい眺めだな、宗三左文字どの…………」
 己の爪痕を残した宗三左文字の尻を撫でながら、うっとりと歌仙兼定は評したが、宗三左文字はそれを良い意味には受け取らなかったようだった。
「ッ…やめて…くださ……、もう……、僕のだらしのない様を、これ以上……ッ、」
「今のは褒め言葉だよ。宗三左文字どの」
 くす、と笑みを漏らして、二振目は宗三左文字の赤い蕾を指先で探り、すぐに、顔を近づけて宣告通りにその場所に口づけた。
「ひッ……ひィイっ……!」
 びく、と宗三左文字の背が撓って、淡紅色の髪がばさりとうねった。
「あッ……ぁ、やぁ……! 穢れた、場所を…………! ひぃッ、や、やめッ……あぁ……!」
「あぁ…凄いな……すぐに熱くなってきた……、」
 舌先を繰り出して蕾を刺激しながら、歌仙兼定は、宗三左文字の尻全体が仄赤に染まっていくのをすぐ近くに眺めていた。快楽に堪えかねて揺れる宗三左文字の腰をしっかりと手で捕らえて、蕾だけでなく尻の柔肉や蟻の門渡りにまで舌を這わせながら、歌仙兼定は宗三左文字を愉悦で籠絡していく。
「きみの体の全てに、接吻がしたい」
「ッ…………、」
 口づけの合間に歌仙兼定はそう漏らした。
「唇や竿や、乳首やお尻の穴だけでなくて。きみの項も、耳にも、鼻先も、手の指先も、膝も、足首も、足の爪にも…………雅なきみの全部に唇で吸い付いて、舌で舐めて、僕の接吻の痕と唾液で汚しきりたい」
「っ……、か、かせん……っ、」
 強い所有欲求を表明されて、宗三左文字の声が掠れる。
 まるで悦ぶように。
 歌仙兼定に煽られて、へたり込むように宗三左文字の身が緩む。絞りを緩めた菊座に、歌仙兼定は舌先を差し入れて、とば口の奥を舐りだした。
「ひィっ……あぁあッ……!」
 己の腰を支える宗三左文字の両膝がかくかくと揺れる。薄い身体の影で、宗三左文字の竿が再び存在感を強めているのが歌仙兼定には見て取れた。
 口の動きを変えて、唇で菊座に強く吸い付き、その場に赤い痣を残していく。
「あっ……あッ、」
 宗三左文字の身体からはいっそう力が抜けて、膨らんだ赤い蕾が絞りを緩め、呼吸する生き物の口のようにぱくぱくと鼓動に合わせて開閉していた。
「ふ……上の口と同じように…………、下の口に、僕の唾を飲んでもらおう」
 陶然と言い下ろすと、両唇で宗三左文字の蕾を捕らえて、歌仙兼定はとば口の奥へと溜めた唾液を流し込む。
「ッ! ……ンくっ、ぅ……! ひぅうッ!」
 腸内を液体が逆流してくる刺激に宗三左文字はびくびくと身を震わせた。唾液を送り込んだ歌仙兼定はそれが外に漏れ出てこないように、舌先で菊座を埋めて唾液を奥へと押し込み、とば口を力強く舌と唇で揉む。
「っ、ひぃ……ッあぁ、あっ……!」
 宗三左文字の下肢が揺らぎ、萎えていたその竿は今や完全に屹立しているのが歌仙兼定から窺えた。
「やッ、……、もう、舐めないでっ……くださ……、歌仙兼定……っあぁ……!」
 不浄の場所を舐め回される羞恥に堪えかねて宗三左文字は声を上げた。歌仙兼定は口を離し、代わりに指でとば口を押さえながら彼の惑乱を更に言葉で煽る。
「でも…………、きみの蕾に蓋をしていないと、せっかく埋め込んだ唾液がお尻から溢れ出てきてしまうんだよ」
「ッ! ……、ン、うぅ……、」
 指で蕾を揉み込みながら言われて、快楽と羞恥を強めた宗三左文字はいっそう頬を紅潮させた。
「僕がたくさん弄った所為で……、きみの此処はかなり拡がってきているからね……、」
 自らも昂奮に息を喘がせながら歌仙兼定は言い下ろした。宗三左文字の後孔は歌仙兼定の親指を飲み込んでなお余裕があり、指ととば口の隙間からは実際に液体が溢れ出てきている。
 後孔を執拗に嬲られて、宗三左文字の理性は次第に細り、愉楽の向こうへと追いやられていく。
「ッ……あ…ぁ、かせん…………っ」
 宗三左文字は熱く息を吐く。今与えられている愉悦よりもっと強いものを宗三左文字の体は知っていて、今や彼が知覚できるのは、快楽の極みを求める気持ちだけになりつつあった。
 そして心のもっと深い場所で。
 喪ったはずの歌仙兼定を再び迎え入れる予感が、宗三左文字に歓喜を与えた。
「歌仙兼定……、」
 腰を揺らし、うつ伏せだった身体を半身ほど天井に向けて、淡紅色の髪で覆われた肩越しに宗三左文字は歌仙兼定を見つめた。見定められた歌仙兼定がこくりと唾を飲むのが宗三左文字の色違いの目に映った。
 二振目は瞬きもせず、快楽によって美しさと妖艶さを増した宗三左文字の顔を凝視した。優美な細い面が髪より赤い色に染まり、深い青と緑の瞳が情欲に煌めいている。唾液が細い顎へと滴っていくことにも気づかぬげに赤い両唇はしどけなく開き、白い歯が覗いていた。歯列の奥に、唾液の絡んだ舌が蠢いている。
 歌仙兼定が宗三左文字の様に見惚れているうちに、宗三左文字の手がふらふらと伸びて、己の後孔を捕らえている歌仙兼定の腕に縋るように触れてきた。
「ッ……お、お願いです…………このまま……だったら……、また、先に果ててしまいます…………、歌仙兼定…………、」
 宗三左文字の息が歌仙兼定の顔にかかる。優雅な香混じりの宗三左文字の汗と体臭が、歌仙兼定を誘惑する。
 強制されているからでも隷従しているからでもない、心からの宗三左文字の懇願を、二振目はその耳に聞いた。
「っ……僕の、中に…………、来て、ください……、二人で、体を繋げて…………一緒に、果てたいのです…………、」
「…………、」
 宗三左文字の要望を受けて、歌仙兼定の頬も紅潮していく。下腹部に熱が流れ込み、己の雄も大きく勃起してくるのを歌仙兼定は自覚した。
「僕の、穴を、塞ぐなら…………、あなたの、竿で、そうしてください…………、」
 理性を失ってなお高雅さを失わない優しい声。
 切なげに眉を寄せて、愉楽に浸りながらもいっそうの淫楽を望む宗三左文字が、直截な言葉で自分を求めてくる。
 頼りなく伸ばされてきていた宗三左文字の手が、歌仙兼定の袴の紐を捕らえ、解いた。白い手はそのまま勃起で浮き上がった下褌の奥を探り、屹立に到達する。
「っつ……、」
 思わず息を吐いた歌仙兼定に応じるように、宗三左文字の指は屹立を握り、その先端を直に擦り上げてきた。
「っこれ……、ください、歌仙兼定…………、どうか、あなたの、この竿で、僕を、穿って、」
 宗三左文字の繊細な手指の中で、歌仙兼定の屹立もまた、すぐに果てられそうなほどに大きくなっていく。
「…………宗三左文字どの…、」
 喘ぎつつ切れ切れに、二振目は恋うる者の名を呼ぶ。
 歌仙兼定の中に、宗三左文字を求める理由はあっても、拒む理由はなかった。
「きみの望みを、叶えてあげるよ」
 歌仙兼定は微笑んで、少し身を引き、同時に宗三左文字の後孔から親指を抜く。
「ンッ……ぅ…………、」
 与えられた排泄感に宗三左文字が身を震わせる。暗渠となった彼の菊座の中央から唾液がたらたらと溢れてくるのが歌仙兼定からは見えた。
 その淫靡さにも気づかぬげに、全身が仄赤く染まった宗三左文字が、歌仙兼定への情欲と信頼に満ちた視線を向けてくる。
 その昂揚感。
 支配感も殆ど無い優しい声で、歌仙兼定は宗三左文字に告げた。
「仰向けになって、膝を開いて立てて…………、腰を浮かせて、そのまま僕を待っていてくれ」
「………………、わかり、ました…………、」
 頬を紅潮させたまま、宗三左文字はふわりと微笑んだ。




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