<其乃十二>

 淫蕩でありながら高雅な笑み。歌仙兼定の心を溶かすその微笑を浮かべたままで、拒否感など全くない動きで、宗三左文字は歌仙兼定の指示に従った。
 歌仙兼定に向けて下肢を浮かせ、勃起した竿と赤く拡がった菊座を見せつけるような姿勢で、宗三左文字は歌仙兼定が己を穿つのを待つ。
「あぁ……歌仙兼定……、」
 その声に呼ばれるように。
 二振目は唾を一度だけ飲んで、集中するあまり言葉も失って宗三左文字に近寄る。仰向けになった宗三左文字の尻の下に己の下肢を滑り入らせて、相手の細い両腿を片手ずつに捕らえ、己も腰を浮かせて、屹立の先端で宗三左文字の蕾を探った。
「ンっ……、んん……、」
 自ら尻を動かして、歌仙兼定に協力するように、宗三左文字は後孔を歌仙兼定の竿先に押し当ててくる。竿先と菊座が噛み合った瞬間を機会を逃さず、歌仙兼定は、緩んだ蕾の奥へ己の竿を強く押し込んだ。
 ぐぷり、と音を立てて歌仙兼定の侵入が始まる。
「! ひぁっ……、は……、ッあぁ…………!」
 雁首が蕾を押し開いて突き通ると、宗三左文字は悦ぶように身を震わせて、喉を開いて喘いだ。宗三左文字の髪の、淡紅色の長い一房が生き物のように白い肌を這う。愉悦の期待に宗三左文字の体は緩んで、歌仙兼定を求めるように腰がその動きに添った。
「あッ…、か、歌仙……、もっと…奥まで……、」
 更なる愉楽を求める、宗三左文字の掠れた声。
「……うん…、」
 熱いとば口に締め上げられて放出の欲に堪えながら、頬を紅潮させた歌仙兼定は宗三左文字に頷いて見せた。腰をゆっくりと浮かせて、宗三左文字の要求に応じるように、彼の奥へと竿を少しずつ突き入れていく。
「ぅあっ、あッぁ、歌仙、あなたの…が、僕の、奥まで……ッ、きて………、ふ、熱が……、凄い………っ…、ンぁうっ、」
 歌仙兼定の竿先が宗三左文字のいちばん奥を突き当てると、宗三左文字は腰をびくりと震わせた。
「ぁッ、は……、あぁ……僕の、体ぜんぶが、あなたで満たされるみたいです……、内側も、外側も、……心も…………、っ気持ち、いい…………、」
 喘ぎながらの宗三左文字の微笑は、だがすぐに涙に変わった。
「っ……、ぅ……、っ…く……、かせん……、」
 歌仙兼定を受け入れながら、宗三左文字は眉根を寄せて静かに泣いている。
「宗三左文字どの」
 涙の理由が苦痛ではないのは知っているが、穿つ相手を気遣って、二振目は声をかけた。
「は………あぁ……、気に、しないで……くださ……、僕が、如何に寂しかったのかを……、満たされた今になって、思い知った、だけですから……、」
 泣きながら、宗三左文字の口の端が再び笑う形を作った。
「…………、」
 健気な宗三左文字への愛おしさに勝てず、歌仙兼定は繋がったままの姿勢で、彼の上半身をかき抱いた。
「あっ」
 歌仙兼定の竿先が宗三左文字の内奥を擦り、宗三左文字が声を上げる。
「僕は此処にいるよ……、宗三左文字どの」
 痩せた体を強く抱き、腰を揺すり上げて、歌仙兼定はそう言った。
「っ、あ、あぁ、歌仙、」
「きみを、捕らえて、こうして、抱えて…………二度と離さないよ」
「ッ……は、ぁ、……ふふ……、知って、います、」
 優しい目尻からぽろぽろと涙を溢しながら宗三左文字が微笑んだ。
 歌仙兼定を見上げる色違いの瞳が泣き濡れて美しく光る。涙は赤く染まった頬を転がって、汗と混じり合いながら淡紅色の髪に滲んでいった。
 宗三左文字のほうからも手が延ばされて、歌仙兼定の両腕に縋るようにしがみついてくる。
「はぁッ、あっ、か、歌仙兼定……、僕を、捕まえて、束縛して、二度と、離さないでください、」
「心得ているよ。宗三左文字どの」
 宗三左文字の言葉が。
 一振目へ向けてのものか、二振目の自分に向けてのものか、それともどちらとも、もう本人にはわからなくなっているのか。
 二振目はもう、問い質すことは敢えてしなかった。
「お願いです…、もう…、独りに…………しないで、」
「勿論だよ。ずっときみの傍にいるよ……形影(けいえい)(あい)(ともな)うがごとくに」
 泣きじゃくる宗三左文字に思い知らせるように、歌仙兼定は宗三左文字の中で腰を揺すってみせる。
「ンぁっ……ぁ、歌仙兼定……っ、」
 歌仙兼定の竿を体奥深くへ受け入れて、歌仙兼定の腕に縋り、宗三左文字が泣きながら名を呼んだ。
 感じ入るように。愛おしむように。
 歌仙兼定にはそれで充分だった。
「僕が、わかるだろう?」
「ン、」
 歌仙兼定の問いを受けて、宗三左文字が目を閉じて頷く。
 心の平穏と満足を得て、歌仙兼定の突きにより、宗三左文字の体はしどけなく愉楽に酔い始める。
「はぁッ、ぁ、」
 歌仙兼定は、淫熱に浸る宗三左文字の身を更に堪能したくなった。
「もっと深く繋がろう。宗三左文字どの」
 二振目はそう言って、宗三左文字の体を結んだまま身を起こし、相手の細い腰を引き寄せて、その痩身を己の上に抱き上げて座る姿勢を取る。
 宗三左文字は逆らわなかったが、自重によって歌仙兼定の竿を更に飲み込む様相になった。
「あ、ひッ……! ぅあっ、あ、深……っ」
 対面座位の姿勢を取らされて、いっそう奥深くまで穿たれた宗三左文字が面を天に向けて喘いだ。
「きみの中はひどく熱いな。宗三左文字どの……」
「やぁ…ぁっ、かせん……、こ、こんなにしたら、止まらなくなってしまいます………っ…、ンん、」
 心が満たされた所為で快楽への欲求が強まり、両膝を歌仙兼定の身体の脇に立てた宗三左文字は早くも腰を揺すり始めている。
「くンッ、はぁっ、は……、かせんかねさだ……、」
 腕で歌仙兼定の上半身に縋りつくようにして宗三左文字は下肢を揺らがせ、愉悦を貪る。
 いつもは自分を組み敷いていた歌仙兼定が、今は下から顔を見上げて笑顔で覗き込んできていた。情事に乱れた二藍色の髪が紅潮した頬に張りつき、淫楽に潤んだ緑色の目と美しい対比を為している。
「は……、心地、いいかい…、宗三左文字どの……?」
「ンっん……、ん…ええっ……、」
 歌仙兼定の問いに宗三左文字は肯定を返した。
 宗三左文字の身が揺れる都度、胸に掛かったままの長い黒数珠が音を立てて鳴り、互いの体に当たる。歌仙兼定は体をもっと密着させたくて、己の頭を揺れる数珠に潜らせた。
 二人同時に数珠に巻かれて縛られるような様相になって、歌仙兼定は顔を宗三左文字の胸に寄せる。
「ッ、ンぁッ」
 擦れて赤く尖っていた乳首に更に舌を当てられて、宗三左文字の喉が喘ぐ。
「ふ、こうすると……、二人で共に拘束されて、一つの体を共有しているような気になるね…?」
「ふっ、ぅ、」
 指摘を受けて、宗三左文字は汗を散らしながら頬を赤らめた。
 二人の体が揺らぐたび、互いの背に巻き付いた黒数珠がじゃらじゃらと軋む。
 密着を強制されて窮屈ではあるが、歌仙兼定が言った通り、ふたりの癒着感は高まって、快楽が深まっていくのをお互いに自覚した。
「ンっ、ふぁッ、はぁっ」
 上体が触れ合っている所為で、宗三左文字の屹立は歌仙兼定の腹に擦れて、勃起が一層強まっていく。
 竿先から先走りが漏れて歌仙兼定の腹を汚しているが、二人ともそれを気にかけるゆとりもなかった。
 自ら腰を揺らす宗三左文字の後孔は歌仙兼定の雄を締め上げ、その愉悦をどんどんと強めていく。
「あぁ……、は、かせんかねさだ、あ、あなたの、が、僕の中で、大き、く…………、ッン、」
 熱い息を吐き、切れ切れに、宗三左文字が言い下ろしてくる。宗三左文字の言葉通り、歌仙兼定の勃起は圧迫を強めつつあった。
 結合部がぐちぐちと卑猥な音を立て、汗ばんだ歌仙兼定の身体に宗三左文字の淡紅色の髪が絡む。
 自分を二振目と認識しながら、その体の上に乗り上がって裸身を抱き締め、自ら快楽を求めて身を揺すってくる宗三左文字に、歌仙兼定は強い満足を覚えていた。
 彼は僕のものだ。
 僕の名を呼び、僕を求めて泣き、僕に貫かれて深い愉悦を得ている。
「宗三、左文字どの…………、」
 快楽の高まりと共に、もっと強く宗三左文字を支配したくなって、歌仙兼定は座したまま、己の腰を回すように揺らして宗三左文字の奥を抉った。
「ッ! ひッ……ぅ!」
 びくりと宗三左文字の体が震え、膝から力が抜けてくる。
「あ…………、ぁ、」
「教えてくれ、宗三左文字どの………。きみの体が、僕によって、どれほど淫らになれるのか…、」
 焦らそうというように腰を動かすのを止めて、歌仙兼定が微笑みながら宗三左文字を見上げる。
「あッ…………か、かせん、今の…………、もう、一度…………っ、……」
 再び腰を突いて欲しくて、宗三左文字がふらふらと身を揺らがせながら懇願してくる。淫楽に喘ぐ朱唇は閉じることを忘れたようにしどけなく開き、溢れた唾液が細い顎を伝いたらたらと滴って、歌仙兼定の首元に降りかかっていた。
「こう、かい…………?」
 再び同じように腰を下から回し突くと、
「ひィッ! ンぁ……ぁ!」
 宗三左文字の喉からは鋭い愉楽の声が上がり、もはや上体からさえ力は抜け始めてきていた。
「あぁ……あ、もっと……ッ」
 崩れるように歌仙兼定にしなだれかかって、喘ぎと共にねだり声を上げる宗三左文字に、二振目は腰を止めて微笑む。
「ふ……、きみは本当に、お尻の奥を僕に突かれるのが好きなんだな……」
「ッ……ぁ、あ、」
 先刻のような貶める響きは殆ど無く、歌仙兼定が満足げに言い上げた。宗三左文字は先ほどの愉悦を与えて欲しくて、泣くような顔で歌仙兼定を見下ろした。
「かせん、かねさだ……、おねがい、です……、うごいて、ください……、」
 歌仙兼定は首を縦に振らない。
 もっと宗三左文字が、あられも無く自分を求める様に仕向けたかった。
「っ……そうしたいのは、山々だが…………、これ以上、動いたら、僕は果ててしまうよ…、」
 事実ではあるが、宗三左文字にさらに快楽を乞わせる為の駆け引きでもある。
「ン……、」
 弱々しく腰を揺すってきていた宗三左文字が動きを止め、困惑したような顔になる。
「歌仙兼定……、あな、たは…………、僕の中に、精を吐くのが、お厭、なのですか………?」
 その声には少なからず寂寥の響きがあったので、歌仙兼定は思わず繋がる相手の顔を見直した。
 宗三左文字が眉を寄せ、色違いの両目を潤ませて、二振目を見下ろしてきていた。
「あなたは、最初のとき、から……、僕の中で果てることに、戸惑っていましたね……。最後まで、僕の中にいては……くださらないのですか…………?」
 宗三左文字が汗ばんだ両手で歌仙兼定の熱い頬を撫で上げ、目を覗き込んできた。
 宗三左文字の言う『最初』が、まさしく二振目の自分と初めて交わった茶の湯の夜のことを指している、と、歌仙兼定には理解できた。
 宗三左文字は淫楽に浸ってはいるが記憶は混乱していない。正気なのだ。
 一振目の傷痕が残る右掌が、二振目の頭を優しく撫でる。愉悦に喘ぐ唇が歌仙兼定の額に当てられ、口づけられる。
「歌仙兼定…………、」
 接近しすぎて、目の焦点を合わせることも叶わなくなった状態で、宗三左文字の声だけが歌仙兼定の耳に響いた。
「僕は……、嘘は、苦手、なのです…………。今宵、自分で言った浅ましい言葉…………、あなたに、深く貫かれて、快楽で、支配されたいと言った、あれは、最初から、僕の本当の気持ちなんです…………」
 歌仙兼定の鼻腔に、宗三左文字の高雅な香混じりの体臭が満ちる。
「あなたに突かれながら果てて、あなたも、僕を突きながら果てて……。あなたは、僕の体中に接吻がしたいと言ってくださいましたが…………、僕の、望みは、」
 宗三左文字が二振目の頭を抱き寄せて胸に擦りつけさせると、限界近くにまで達した宗三左文字の屹立もまた、歌仙の腹に擦れ、先走りを滴らせた。
「僕を、領有してください、歌仙兼定…………。口に精を撒いたように、僕の此処に、精を撒いてください、」
 言いながら宗三左文字が、『此処』を思い知らせるように歌仙兼定の竿を埋めた下肢を揺らす。
「僕の体と心の全てに、あなたの痕をつけて…………僕を、完璧に、あなたのものにしてください……お願いします」
 歌仙兼定の額の上にぽたぽたと降ってくる水滴は汗ではなく、宗三左文字の涙だった。
 宗三左文字の声を聞きながら、二振目は、宗三左文字を貫く己の雄が固く膨張していくのを自覚していた。
「―――宗三左文字どの」
 二振目の声は、宗三左文字の懇願と同じくらい真摯に響いた。
「きみの望みは叶えられるよ」
 ぐい、と優しさよりは焦燥を強めた態で、歌仙兼定は宗三左文字の上体を強く抱き寄せる。
「きみを、愉悦で支配して……、たっぷりと、きみの中に、僕の証を注いであげるよ。すぐにでも」
 言うなり、歌仙兼定は腰を強く宗三左文字へと打ちつけ始める。
「ッあ、」
 宗三左文字の喉の震えは歓喜を孕んでいた。
 歌仙兼定の下からの突き上げが強く、激しくなる。
「ンぁッ、ぁっく、か、かせんッ」
 宗三左文字の内で歌仙兼定の竿が擦れるたび大きく膨張していき、宗三左文字の内部を圧迫する。
「あぁッ、はぁッ、ぁ、か……体の奥まで、ぁ、熱が……響く……っ」
「ッ、く、もうすぐだよ、宗三左文字どの、」
「ン、」
 言葉の通り、歌仙兼定が精を放つと知った宗三左文字は逆らわず、腰をくねらせてとば口を締め、歌仙兼定の射精を助けるように動いた。
「ッ、今、射精()すから……、全部、受け止めてくれ……、宗三左文字どの…………!」
 下から宗三左文字の後孔奥に向けて深く腰を押し込んで、歌仙兼定はそのまま己を解放した。
「ッ……ひ、あ…ァ……ンっ…………!」
 ドクドクと歌仙兼定の屹立が脈打ち、宗三左文字の内奥に熱い奔流が流れ込む。
 強い刺激にに宗三左文字の背骨は震え走って、宗三左文字は喉を仰け反らせてその熱を受容した。
「ひッ……あァ……か、かせん…………!」
 歌仙兼定の腹に擦れる宗三左文字の屹立はそのままに、歌仙兼定の竿先と精に前立腺を刺激されることによって、宗三左文字はひとつの頂点に達した。
 がくがくと身を震わせる宗三左文字を、緊張の解けた歌仙兼定が見上げていた。
「あぁ……、きみは射精をしなくても、後ろの穴だけで、そんなに悦べるのかい………? 僕の竿を、こんなに深く、咥え込んで…………、」
 宗三左文字の下方から、精を放ったばかりの歌仙兼定の感嘆の声が響く。
 宗三左文字の心身の愉悦が、同時に歌仙兼定の愉悦でもあった。
「ン……ぁ……、あっ…、」
 大きく痙攣する宗三左文字の体は、まだ強い淫楽の内にある。
 射精を終えた歌仙兼定の竿が後孔の中で萎えていたのはほんの短い間だった。
 宗三左文字が快楽に耽溺しているのを目の当たりにして、竿を埋めたままの二振目は、すぐに飢えが蘇ってくるのを自覚する。
「もっと。きみを、心地よくさせてあげるよ」
 支配欲と情欲に上擦った二振目の声。
 それは宗三左文字の耳にも届いた。
「っ、ンぁ、」
 愉楽の冷めかけた宗三左文字の内に、新たな期待が生まれる。
 歌仙兼定は邪魔になった黒数珠を、引き剥ぐように二人の体から外して夜具の外へ放り捨てた。
 繋がったまま、歌仙兼定は姿勢を変えて、宗三左文字の体を寝床に押し倒し、その上に覆い被さる。
 仰向けにされた宗三左文字の顔の上に、歌仙兼定の汗が散ってきた。
「今度は……、きみが、イく番だよ…………、」
 歌仙兼定の紅潮した顔は殆どが陰になっている。だが、暗い中に、明るい緑の目だけが飢えた肉食獣の目のように輝いて、宗三左文字の顔を覗き込んできていた。
 己の両脇で持ち上がっている宗三左文字の長い脛を片手ずつに掴んで、その下肢の中央を、歌仙兼定は、再び屹立で深く抉り始めた。
「ッ! ひッ、ぃっ、あぁッ!」
 急くように激しく突かれて、宗三左文字の背が弓なりに撓る。
 歌仙兼定の精を撒かれた宗三左文字の後孔は熱い液体で撹拌されて、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てた。竿ととば口の隙間からは、半白濁の液体が泡立ちながら漏れ出てくる。
「あッ、ぁくッ、ンぅうッ」
 がつがつと貪るように後孔を犯されて、宗三左文字は求められる行為に却って愉悦を高めた。
「あぁ………ぁ、歌仙兼定……、っ、心地、いい………、です……、」
「ふ……、そうだろうとも、」
 歌仙兼定は腰の動きを緩めない。
「あッ、はぁ、ンぁ、こ、今度こそ、このまま…………っ、」
 身のうちに快楽を蘇らせ、天に向けて立つ竿から先走りをぽたぽたと腹の上に垂らしながら、宗三左文字が懇願してきた。
「このまま、ぁッ、あなたをお尻に埋めたままで、っ僕を、イかせてください、歌仙兼定…っ、」
 穿つ歌仙兼定は、万能感を与えられて、唇を深い笑みの形に吊り上げた。
「勿論だよ……、髪の毛の一房、爪の一片に至るまで……、きみを悦ばせて、快楽で完全に支配してあげるよ。―――きみは僕のものだ。宗三左文字どの」
「っ、ふぁッ、」
 占有を宣告されて、宗三左文字の身は淫楽以外のもので悦んだ。
 宗三左文字の白い脚を己の腰に巻きつけさせると、歌仙兼定はそこから手を離し、代わりに宗三左文字の屹立を指で握った。
「! ンぁッ! はぁっ、ひぃッ!」
 腰の抽送と共に緩急をつけて宗三左文字の竿を擦り上げ、強い愉楽へと急速に追い上げる。
 宗三左文字にはもう、如何ほどの猶予もなかった。
「あッ! ぁ、かせん、ッもう、出…………っ、」
「いいよ。出してくれ…、宗三左文字どの、」
 抽送を続けながら、手に握る屹立への圧を強めつつ歌仙兼定は宗三左文字に言い下ろした。
 宗三左文字を見つめるその表情は高揚している。
「きみが、僕に後孔を突かれながら、果てるところが見たい」
「ッン、」
 心得た、というように宗三左文字が横たわったまま頷いた。
 歌仙兼定がひときわ深く腰を沈め、宗三左文字の竿先を強く擦り上げる。
「うぁくッ…! ひ、あ………ぁ……!」
 歌仙兼定の体の下で宗三左文字の体がびくりと震え、見る間に筒口から白濁が飛び散った。
「あっ……ぁ……、あぁ………ッ…!」
「…すごいな……、宗三左文字どの…………」
 ひくひくと震えて精を撒いた宗三左文字の竿を最後まで手に握ったまま、歌仙兼定は昂奮に頬を紅潮させて喘いだ。緑の目は瞬きもせず、宗三左文字の痴態の一切を凝視していた。
「っはぁ……ぁ…、は、かせん……、」
 宗三左文字が弛緩しても、歌仙兼定の竿はなお猛っている。
 射精を果たして、まだ歌仙兼定を体に受け入れたままで、宗三左文字は瞬きして涙と汗を目から払い、瞼を上げて穿つ相手を見た。
 ふたりの頬は酷く紅潮し、色違いの両目と緑の目が情愛と情欲の光を湛えて相手の面をそれぞれ瞳に映している。喘ぐ息は互いの顔にかかり、繋がった下肢と併せて熱が内外に混じり合う。
 精を解き放った宗三左文字に比して、歌仙兼定はまだ、飢えを体内に残していた。
 宗三左文字の萎えた竿を手に掴んだままで、二振目は宗三左文字を見下ろしている。
 荒く息を吐く宗三左文字の腹部から胸の下部にかけて、汗ばんで紅潮した肌の上に宗三左文字自身が放った白濁が飛び散っていた。信長所有の印である黒い蝶の紋様を呼吸の都度上下させ、宗三左文字は目を涙に潤ませて歌仙兼定を見上げてくる。鳥の枝垂れ尾のような長い一房の髪はすっかり乱れて、宗三左文字の肌のあちこちに貼りついている。白濁と汚れた髪の下には、最前二振目がつけた接吻痕が見え隠れしていて、二振目の所有欲を声高に主張していた。
 まだ足りない、と二振目の裡で声がする。
 この優雅な鳥を、完膚なきまでに自分のもので穢し切りたい。
 二振目はその欲求に抗えず、気がついたときには既にそれを言の葉に乗せていた。
「きみの体の上に僕の精を撒きたい」
「………………、」
 瞬間、歌仙兼定の言葉の意味が取れず、宗三左文字は瞬きをした。
 ぐい、と再び腰を落とし込んで宗三左文字を深く貫きながら、歌仙兼定はもう一度言った。
「ッ、ぁ、」
「僕も、もう、限界が近いんだ、宗三左文字どの……。今宵、僕の精で、きみの口とお尻の穴を穢した上で言うが……、今夜最後の精は、きみの顔や体の上に振り撒きたい」
「っ、か、かせん、あっ、」
 歌仙兼定は懐柔するように宗三左文字を優しく突きながら言い募る。
「きみの内側だけでなく、外側にも……、僕のにおいと体液を擦りつけて、きみは完全に、僕のものなのだ、と実感したい」
「……ッ………は…、」
 ゆっくりと二振目の抽送を受けながら。
 相手の要求を理解した宗三左文字は息を呑んで、頬を赤くした。
「…それが……、あなたの、望み、なのですか…………?」
「そうだよ……、今はね」
「…………そうです、か………、」
 宗三左文字は歌仙兼定の体の下で唾を飲んだ。
 顔に精を撒かれる恥辱感は強かったが、二振目の心情は宗三左文字にも理解できるものだった。自分の体中に接吻したいと言ってきた先程の彼の言葉と、根のところでは繋がった欲望であろう。
「……ええ……いいですよ…………、どうぞ、ご随意に…、」
 少し怯えたように宗三左文字は息を吐いて、それでも歌仙兼定の欲求に同意した。




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