| 言の葉合せ |
| 2020/06/29 大倶利伽羅×骨喰藤四郎(未通) 「夏送り」承前/手合せ 全3話(※印は18禁) |
<其乃一> 良き刀は竜王が欲すると言う。 骨喰藤四郎は海神の竜王に望まれたという逸話を持つ、まさに名刀だった。 刀剣男士としての骨喰藤四郎は、その前身とはまた別の凄味を持つ存在だった。 初期に本丸に集った脇差の中でもその能力は高く、裏腹に、小柄で細身な姿に、日を浴びて銀に輝く髪を持ち、美少女と紛うほどに整った容貌をしていた。記憶を喪くしているとて警戒心が強く、人を容易には寄せつけず、おもに同郷の鯰尾藤四郎の世話を受けて過ごしている。 主の指揮に於いては、脇差は金の鐔章の打刀と組んで出陣することが多かった。 特に近頃は連帯戦とて、第一部隊と第二部隊の編成を固定して出陣するため、その傾向が顕著であった。第一部隊は歴戦の銀鐔章の打刀たちが担い、連戦の殆どを彼らがこなしている。最後の戦である夜更の屋内戦にのみ、第二部隊は駆り出され、相対的に経験の浅い金鐔章の打刀と、夜戦に強い脇差が第二部隊の主な構成員となっていた。 「皆さん、お疲れ様でした」 夕刻の城門前。 本日の連帯戦を終えて、宗三左文字が皆を労った。 今日の第二部隊の隊長は、銀鐔章の打刀である宗三左文字が務めていた。経験的には第一線の刀剣男士だったが、生存値が低くて連戦を勝ち抜くには不向きと主に判断され、第二部隊に回されたものらしい。他の第二部隊の構成員は同田貫正国、大倶利伽羅、にっかり青江、鯰尾藤四郎、骨喰藤四郎だった。 体に疲労はあるが怪我は帰城と共に治癒が済んでおり、皆の表情は日常の戦闘ほど深刻なものではない。 「僕はこれから第一部隊隊長の歌仙兼定と打ち合わせがありますが、皆さんはここで解散で構いません。明日も連帯戦ですから、ゆっくり休んでください」 「歌仙の兄さんとソウサモくんが、って、夜の床での段取りでも打ち合わせるのかい?」 生真面目に告げた宗三左文字に、「歩くセクハラ」と異名を取るにっかり青江が冗談を言った。 一瞬考えたような顔をした宗三左文字が、やがて髪より顔を赤く染めた。 「………違います」 羞恥を煽られながらも宗三左文字は四角四面に答えた。宗三左文字がそう答えると言うことは、本当に連帯戦のための真面目な打ち合わせなのであろう。 「もう帰っていーんだろ?」 「くだらんな。勝手に帰るぞ」 同田貫正国と大倶利伽羅はそれぞれに言葉を吐いて城門の前から足早に去って行く。 「俺も帰る。今日は馬番だ」 人形のように整った顔で無表情に骨喰藤四郎が言った。 「あ、そっか。送ってこうか?」 「独りで行ける」 気を遣った鯰尾藤四郎にそっけなく骨喰藤四郎は答え、歩き去った。 骨喰藤四郎は、何くれとなく世話を焼く鯰尾藤四郎に対し、他の刀剣男士に対するよりは心を開いている。だが生来言葉が固く、記憶喪失の所為か内向性が強くて、なかなかそれは他の者には伝わらない。 主のもとに参集してから後、他の刀剣男士よりはふたりと共に行動することの多かったにっかり青江だけが、それに気づいていた。 そのにっかり青江は、何かが気になる風でしきりに己の後ろ半身を気にしている。 「なにしてるんですか?」 宗三左文字すら立ち去った後の城門で、鯰尾藤四郎はにっかり青江に尋ねた。 「いや、『二刀開眼』がね………」 「二刀開眼がどうしましたか?」 同じ脇差であっても、外見年齢が年上であるにっかり青江に対し、鯰尾藤四郎は丁寧に接している。 「あれ、ズオくんは気にならないかい?」 「……? なにがですか?」 「倶利伽羅の兄さんがねえ……」 「大倶利伽羅さんがなんですか?」 「同田貫の兄さんやソウサモくんとだったらそれほど気にならないんだけど」 「……俺には話が見えないです」 真面目に考え込むような素振りでにっかり青江が言う。 「二刀開眼のときに打刀と脇差で二人並ぶだろう。あれがね……ちょっと気まずいんだよね」 「どういう意味でしょうか」 「いや、ね。倶利伽羅の兄さんは腰を突き出してて、僕は腰を引いてるだろ。二人重なると、ちょっとエロティックな気がして、僕のお尻の穴がキュッて締まっちゃうんだよね」 「………………そんなこと考えるのはにっかりさんだけだと思いますけど」 至極冷静な鯰尾藤四郎の指摘を、にっかり青江は無視した。 「僕は倶利伽羅くんにはバミくんを宛がうといいと思うんだよね」 言われて鯰尾藤四郎は大きな黒い目を更に見開いた。 「『あてがう』って、まるで家畜の交配みたいに言いますね……っていうか、骨喰と大倶利伽羅さんて相性いいですか? どっちも無口無愛想だし、大倶利伽羅さんて骨喰には全然興味なさそうですけど。骨喰は言わずもがなだし」 「バミくんはね。世間知らずだし仕方がないところがあるよね。でも僕が見たところ、倶利伽羅くんは脈有りだよ。二刀開眼もよく二人でやってるし。バミくんを引きずり回して『俺独りで充分だ!』って言ってるところとかはちょっと愛しくなっちゃうよね」 「二刀開眼は単なる確率の問題で、偶々ですよ。大倶利伽羅さんと僕とでだって出せますし」 「だとしても、さ。夜戦でもない限り、どうせ僕ら脇差は独り立ちできない強さなんだから、打刀の誰かに依存して生きていくのも悪くないだろう? 腰の大小と言うじゃないか。あ、もちろん下ネタじゃないよ?」 「わかってます」 「ズオくんはずっとバミくんの面倒を見てきたから、心配なのもわかるけどね。とにかく過保護も良くないよ。主に打診して、手合わせあたりをあの二人で組ませてみるといいんじゃないかな。相性が良ければ何かしらの進展があるだろうし」 「………骨喰、大丈夫かな………」 鯰尾藤四郎は心配そうだったが、にっかり青江はにこにこと鯰尾藤四郎の肩を叩いた。 「きみも子離れしないとね。きみだって、素敵な彼氏を見つけて、夜遊び火遊びの百や二百はしてみたいだろう?」 「………世の刀剣男士が全部にっかりさんみたいな人だと思わないで欲しいですけど………」 気が進まぬながらも、年長者の顔を立てて、にっかり青江の提案を受け入れる気になった鯰尾藤四郎だった。 |
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