我が身さへこそ

 

2019/06/10
へし切長谷部×宗三左文字(※強姦
※歌仙
※破壊×宗三前提
全4話


遊びをせんとや(うま)れけむ、(たはぶ)れせんとや生れけむ。
遊ぶ子供の声聞けば、我が身さへこそ(ゆる)がるれ。 梁塵秘抄
(快楽に耽らんとしてこの世に生まれてきたものだろうか?
戯れ事を為さんとしてこの世に生まれてきたものだろうか。
無邪気に遊ぶ子供の声を聞くと、私の心は動揺し、身が揺らいでしまう)
    



  <其乃一>



 城は紫陽花の季節になっていた。
 戦から戻り、主に戦況を報告して本丸を下がると、時刻は既に深夜に近かった。
 へし切長谷部は深い息を一つ吐いて、自分の寝所にほど近い別の場所に向かった。
 刀剣男士たちが住まいする区域の一角、周囲の木々に隠されて存在を潜めるかのように、高い板塀で囲われた屋敷がある。そこには普段から、刀剣男士たちは滅多に近づかない。
 例外はへし切長谷部だけだった。
 閉ざされた門は経験の浅い短刀の子が番をしている。へし切長谷部の姿を認めて、深夜にもかかわらず、短刀の子は軽く会釈をして黙って通用口を開けた。
 板塀の内側にある屋敷はこぢんまりとしていた。本来は茶室と、茶の支度用に併設された幾部屋かだけで構成されていた館を、さして増床もせずに住居用に改築してある。
 今は一人の刀剣男士が、この屋敷に暮らしている。
 暮らす―――というのは穏当に過ぎる言いざまであろう。実質は主の命によって彼は幽閉されている。
「……座敷牢でないだけまし――か」
 門番とは別の、案内役の短刀の子の後ろについて、長い廊下を渡ってゆきながら、へし切長谷部は独り呟いた。
 目指す部屋は館の最奥にあった。
 襖は堅い木板で補強され、外側からは閂がかけられている。
 短刀の子が閂を外し、へし切長谷部は慣れた動きで部屋の中に滑り入る。
「長谷部さま」
 後背から短刀の子に促されてへし切長谷部は気づき、腰の刀を抜いて子に預けた。短刀の子は一礼をして引き下がる。
 丸腰になったへし切長谷部の背後で襖が閉じられ、再び閂がかけられる音が聞こえた。
 部屋の中で、明かりは端に寄せた行灯ただ一つ。仄闇の中に、人の気配がある。
「宗三」
 へし切長谷部が声をかけると、部屋の中央で衣擦れの音がした。
 ちゃら、と数珠の鳴る音も聞こえた。部屋の主の首にかけた数珠が揺れ動いたのだろう。
 夜闇に慣れてきたへし切長谷部の目に、畳部屋の主座に座した刀剣男士の影が浮かび上がってきた。
「……戦から戻ったのですね」
 つねから力強いとは言えない宗三左文字の、吐息と紛うほどに小さな声。
「ご無事でよかった。心配していたのです」
 紅梅色の僧衣と緋桜色の長い髪。全身が薄紅に染まった青年が、白い面をこちらに向けている。
「寝なかったのか」
 声をかけながらへし切長谷部は近づき、宗三左文字の傍に腰を下ろした。
 胡座をかいたへし切のほうへ、宗三左文字は座したまま身を向ける。
「そうしようと思ったのですが……あなたの身が案じられてしまって、寝付けなかったのです」
 見れば宗三左文字の座す部屋の奥の寝室には布団が綺麗なままに敷いてある。乱れた気配が全くないのは、本人の言の通り、不安で横になる気になれなかったのだろう。
「毎晩おまえを訪ねられるわけじゃない。俺が居ると居ないに関わらず、少しは寝るようにしろ」
「…………」
 宗三はすぐには答えず、薄い唇を引き結んだ。長谷部を覗き込む色違いの両の目は美しく潤んでいるが、同時にどこか虚ろだ。
「独りで横になると……、嫌な夢を見るのです」
 宗三左文字は視線を外し、髪と同じ淡紅色の睫毛を伏せる。
「戦場からあなたが還ってこない夢を。本能寺の時のように一人死に後れて、本丸で孤独に過ごす夢を」
「……」
 へし切は探るように宗三を見た。その灰色の目に憐憫はあるが同情は薄く、目の奥で揺らぐのはむしろ嫉妬の情だった。
 身動きしないへし切に向けて、宗三が身を寄せてくる。
「………どうした」
 複雑な感情を孕みながらも抑制された声でへし切が尋ねる。
「……あなたを……、もっと感じたいのです……、あなたの姿は幻ではなく、真実僕のもとへ帰ってきてくれたのだと……」
 弱々しくも、祈り縋るように宗三が答え、へし切の服の上から二の腕に触れてきた。
「―――だったら触ってみろ」
 ぶっきらぼうにへし切は言って、宗三が何か答える前にその項を捕らえて顔を近づけさせ、唇に唇を重ねた。
「っンむ……、」
 驚いたように声を上げた宗三だがその呻きさえ弱々しく、宗三は簡単にへし切に口づけを許した。決して優しくはないへし切の接吻は愛撫と言うより嬲りに近い。逆らわない宗三の上半身をへし切は腕に絡み捕らえて寄せさせ、唇だけでなく手でも宗三左文字の体に触れる。急かすようにへし切が力強い舌で宗三の両唇の割れ目をなぞると、宗三は従順に唇を開いて、口中にへし切の舌を受け入れた。
「ッ、ン、ふぁ…ぅ、」
 もう幾夜も、へし切の竿すら口に含んだことのある宗三はへし切の乱暴な舌に恐れる気配もなく、薄い舌をへし切の舌に絡ませて深い接吻に応えてくる。
「ぁ、ふぁ…、ンむ、ぅ、」
 へし切は力強く宗三の口中を犯す。歯の裏を舌先で舐め上げ、口腔をなぞり、宗三の舌を捕らえるとそのまま深く口ごと吸いついて、強く吸い上げた。
「! ンっ、ンぅッ」
 ちゅう、ちゅばっと大きな音を立てて宗三の柔らかな唇が舌ごと吸われ、唇の端に大きく痣が残る。
「ン……ぅ…、」
 苦しげに呻いた宗三から唇を離さず、今度はへし切は、宗三の後頭部を掴んで顔を仰向けさせて、試すかのように大量の唾液をその口中へ流し込んだ。
「ん……ぐ、くッ……、」
 へし切に触れられる前は冷えているとすら言えるほどだった宗三の体温が、へし切の接吻によって瞬く間に高まっていく。大量の唾液を混ぜ込み、舌を嬲るように絡めさせて、へし切はそのまま、柳の枝のように頼りない宗三の体を畳の上に押し倒した。痩せて衣がちな宗三の脚を己の腿でまたぎ、押し被せた体を宗三に擦りつける。
 互いの体の中央が、早くも凝ってきているのが触感でわかった。
「ン……ぅ、ふ……、」
 宗三文字の鼻から熱い息がへし切の顔に吹きかかる。
 へし切はようやく接吻を切り上げて宗三左文字から顔を離した。距離の出来た両者の唇から唾液が糸を引き、へし切の口から横たわった宗三の口へと落ちていく。
 半開きになった宗三の口中に、大量の唾液が溜まっていた。
「飲め」
「……ン……、」
 へし切に横柄にそう言われて、宗三は従順に唇を閉じ、仰向けの姿勢のまま、唾を飲み下していった。
「ンっく…はっ……、は……、」
 嚥下を終え、宗三が半眼だった瞼を開けて、へし切を見上げてくる。
 艶を帯びた青と緑の目に、同時に虚無が宿っている。へし切を映す瞳はしかしその実、彼を見ているわけではない。
 へし切に強く吸われて赤く腫れた宗三の唇の端にはふたりのものが混じり合った唾液が溜まっている。同じ場所に出来たへし切のつけた接吻痕が、肌理細かな肌の下で痛々しく赤らんでいた。
 へし切の膝と宗三の膝が服越しに絡み合い、相手の体温が感知できる。へし切が宗三の体の中央に腰を寄せると、盛り上がった熱が衣越しに触れ合った。
 へし切の性的な意図を悟って、宗三が赤く染まっていた頬をさらに火照らせる。
「ぁ……、」
 へし切が伸ばした手で宗三の熱を緩く掴むと、宗三の喉から掠れた呻きが漏れた。刀を握り慣れた大作りな硬い指が、服越しに宗三を刺激していく。
「うッ、ン…ぁ……、あぁ……、」
 喘ぎは熱く甘く、へし切の額に吹きかかった。
 宗三を煽りながら、へし切の下半身は、既に半ばほど猛っている。
 昂奮に頬を赤く染め、へし切はある種の獣性を持って宗三を見下ろしていた。
「……………」
 己の存在をその身に思い知らせ、泣きじゃくるまで宗三を犯し抜きたい。そんな、強い性欲と征服欲。
 同時に、現実を認識できない宗三への憐憫と庇護欲も、へし切の内に強く湧き上がる。
「っ…ぁ…、ひ……!」
 複雑な感情に戸惑いながらも硬い手で宗三の股間を揉みしだくと、刺激が強すぎたらしく、体の下で宗三がびくりと身を震わせた。
 服越しではあってもへし切の手の中で宗三の竿は充分に強張ってきていた。へし切は本人の許可も得ずに宗三の服の褄を捲って、腰から下を露出させる。色白の、長く伸びた腿と脛がまずへし切の目を奪った。その後に、腰の中央に盛り上がった下褌にへし切は目を留めた。
「……もうこんなにしてるのか」
 へし切の言葉に宗三は頬を酷く赤らめる。
 へし切は相変わらず許可もなく、指で宗三の下褌さえも捲り上げて、宗三の竿を夜気に晒した。固く強張って天を向きかけているそれを、へし切は嘲弄するように指で緩く弾く。
「ッ、ンぅ、」
 嬲るような扱いに宗三はますます羞恥を強めたようだ。
 だが宗三が身を捩ったのはそれだけが理由ではないことを、へし切は知っている。
「……しゃぶって欲しいか?」
 鼻で笑いながら言い下ろされて、宗三は息を呑み、次いで恥辱を(こら)えるように唇を噛んだ。
 宗三の体は確実に愉楽を欲していた。宗三はそれに抗えない。
 ここまで来たら。
 情を交わすのは、互いに同意を得たも同然だった。
「……ぅ…、お…、お願いします…………、」
 宗三の上ずった儚い声が。
 閉じられた部屋の内に小さく吐かれた。
 心得たへし切は口を開いて、躊躇いもなく宗三の竿先を両唇で挟み込む。
「! ッ、ン、ぁっ、」
 宗三の喉から鋭い喘ぎが上がる。
 宗三の股間に埋めた己の顔の間際で相手の両腿がびくりと跳ね上がるのにも構わず、へし切は宗三の竿を煽っていく。
 筋肉質のへし切はその口技もやや荒っぽい。雁裏を舌の中程でなぞり、唇をすぼめて筒口を強く吸い上げる。へし切の口中で、宗三の竿は忽ち勃起していった。
 宗三について、体を重ねるようになって気づいたことがある。淫楽に溺れやすいのに、快楽に耐える力は弱い。調子に乗って竿を刺激していると、宗三はすぐに達してしまう。
 今も、へし切の口中で宗三の竿は限界近くまで強ばり、先走りを絶え間なく竿先から零していた。
「ンっ…、んひ、ひぃ…っ…!」
 情容赦もなく追い上げられて、宗三が鳴くような呻きを漏らす。へし切は宗三が耐えきれないであろうことを見越して、屹立から口を離した。
「出すなよ。おまえのを飲むのは好きじゃない」
「っ……、ぅ、」
 詰るような言いざまに宗三は身じろぎする。
 へし切は口こそ離したが、手には宗三の陰茎を掴んだままだ。
「はぁ…、あぁ……」
 宗三は快楽を抑えようというように熱い息を浅く吐いている。
 へし切は己の衣服の前もくつろげながら宗三の体の中央を再度覗き込み、別の場所に目をつけた。
 竿の根元まで滴った己の唾液が蟻の門渡りを伝って菊座にまで至り、固く閉じた襞にじんわりと滲んでいる。
「替わりにこっちを弄ってやる」
 へし切はそう言って菊座に熱い息を吐きかけ、宗三の股間に顔を深く埋めて舌先を襞に当てた。
「! ンぁッ、あ、あぁっ…!」
 菊門をちろちろと煽られて宗三が声を上げる。宗三の唇と同じように、へし切は菊座に口で吸いついて、高い音を立てながら、痕がつくほどに強く吸い上げた。
「ンひッ…」
 触感と吸いつきによって襞が緩んでくるところへ、へし切がその中央をこじるように舌先を突き込んだ。
「っ…ンぁうッ……!」
 へし切は笑いながら口を離す。
「いつもながら……、慎ましく蕾んでいるのは最初のうちだけだな。少し触れただけですぐに、男欲しさに熱を帯びて赤らんで、絞りが緩んでくる」
 酷い言葉を投げかけている自覚はあるが、へし切は宗三への詰りを止められない。
「ッ……、ぁ、そんな…、」
「お高く取り澄ましていても、少しつつけばすぐに淫に乱れて男に靡く……、ふ…、おまえそのものだな、宗三」
「………ッ、」
 宗三のわななく唇から抗議めいた息が吐かれたが、へし切の次の行為によってすぐに途絶えた。
 へし切が硬い指で、宗三の後孔を突いてきたのだ。
「! っひぃ……あァッ……! あっ、ぁ……、」
 狭いとば口を油薬に浸した指で押し入り、へし切は慈悲も無く宗三を貫く。くぷくぷと音を立てて指は深くまで飲み込まれ、そう時を置かずして、へし切に押し開かれた宗三の菊座は相手を迎えようというように解れ始めた。
「ン……あぁ…、は……、」
 へし切のはるか頭上で、宗三の声が甘い喘ぎに変質していく。へし切が緩んだ菊座を埋めるように三本の指を突き込むと宗三の下肢がびくりと震えたが、襞はすぐにへし切の指を奥へと誘うように喰い締めて、中の肉は解れ出した。
「ンぁ……あ、っは…ぁ、あ、……指、や、ンぁうッ……!」
 裏側から快楽の巣を指先で突いてやると、宗三の体全体から力が抜け、へし切を誘うように両脚が開かれる。
「……指以外のものが欲しいのか」
 宗三の下肢に埋めていた顔を上げ、自らも昂奮に息を荒らがせて、へし切が宗三に問う。
「ん……、っく……、」
 愉楽の所為だろう、宗三はへし切を見上げて、堪えるように唇を噛みしめながら頷いてきた。髪よりも赤く染まった頬が、星を湛えた青と緑の瞳と著しい対照を成してへし切を眩惑する。
 へし切の指を飲み込む菊座は、油薬に濡れててらてらと光を反射しながら赤く腫れて、相手の男の一層の蹂躙を待ち焦がれていた。
「………、」
 へし切の中で情欲が高まり、彼は詰る声すら失った。
 へし切は引き剥ぐように己の服を脱ぎ捨てる。よく締まった下肢を惜しげも無く晒して、両手で宗三の腰を抱え上げる。
 固く勃起したへし切自身を宗三の股間にあてがい、入り口を探して亀頭を擦り当てる。
「ふぅッ、ぁ、」
 待ち焦がれるように宗三の腰が震えた。
 宗三の菊座に、へし切の竿先がぬるりと触れる。
「はぁ、あ、来て、ください……、」
 例の如く高雅な宗三の口調が、今は淫に揺れながら挿入を乞うた。
「お願いです、僕の、中に……、」
 懇願であってもそれはへし切にとっては、魂に命ぜられた声も同然だった。
 宗三への慕情、憐憫、性欲、支配欲。
 宗三が快楽に抗えないのと同様に、へし切もまた宗三の引力に抗えない。
 へし切は無言のまま、亀頭を宗三の菊座に突き立て、そのままぐいと腰を押し込んだ。
「ッ……、ぁ、ァ……!」
 圧迫でぐぷりと油薬が押し出され、代わりにへし切の竿が襞の奥まで突き込んで、宗三の前立腺を強く抉った。
「ンぁっ、あ、ひィ……ッ、ンぁあぅ…っ!」
 宗三が声を上げ、白い喉首が強く仰け反った。射精こそ無かったものの、背も撓り、全身の筋肉が震えて、宗三が達してしまったことがへし切に知れた。何よりへし切の竿を受け入れた宗三の肉襞がドクドクと強く脈打ち、竿の根元を強く締め上げてくる。
「宗三……、く……、」
 かろうじて放出を堪えて歯を食いしばりながら名を呼び下ろす。
 体の下からゆるゆると宗三の白い手が伸びて、へし切の腕を掴んできた。
 宗三の上気した顔は、笑みの形に崩れている。
「あぁ、あ、心地いいです、かせん……、歌仙、兼定…………!」
「! ………ッ、」
 別の男の名を呼ばれた途端。
 へし切の全身がぎくりと強ばり、心臓がドクリと音を立てる。
 快楽の涙に濡れた青と緑の瞳がへし切を見上げてくる。
 そこに込められた愛情はへし切の為のものではない。
 そうと思い知って、へし切は宗三の裡に己自身を埋めたまま、瞬時に逆上した。
「ッ…、ぁ………!」
 宗三とへし切、全く違う理由でふたりの筋肉が収縮する。
 へし切の竿が圧迫に耐えかねて、すぐに、宗三の体内で射精が始まった。
「っく……!」
「ンぅう……ッ、は、ぁ……!」
 ドクドクと宗三の体内に精を撒きながら。
 別の男のものだと思い込んで精を受け入れる宗三の顔を、へし切は無言で見下ろした。
 鬼のような形相で。



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