<其乃六>


 寝室に場所を移すとそこは更に歌仙兼定の気配が濃く、 宗三左文字は、酩酊したように理性が奪われていくのを自覚する。
「はっ…ふぁっ……、歌仙兼定…っ、ンぅ…ッ」
 歌仙兼定の首に縋りつき、接吻を繰り返しながら、歌仙兼定の手が己の肌を辿っていくのを知覚した。
 昨夜とは全く違う宗三左文字の様相に驚きと喜びを感じながら、歌仙兼定は宗三左文字を煽っていく。宗三左文字の白い肌は情欲に熱く火照り、淡紅色の髪と同じ色に全身が染まっている。その中でとりわけ色濃い赤い唇を腫れるまで貪り、舌と舌を絡ませて、歌仙兼定は逞しい腕の中に宗三左文字の体を抱きかかえ、手指で宗三左文字の背を辿り下ろしていった。
 歌仙兼定も己の袴は既に取り去り、ほぼ半裸の状態になっている。
 膝や太腿に、肌着越しに互いの竿が触れ、どちらも半ば勃ちかけているのが触感でわかる。宗三左文字が心身ともに歌仙兼定を欲していることが理解できて、歌仙兼定は満足と飢えを同時に覚えた。
「宗三左文字どの…」
 うっとりと名を呼びながら接吻の場所をずらし、顎から首筋、鎖骨へと唇を下ろしていく。
「本当にきみは綺麗だな……白い桜花のような肌がほんのり朱に染まって……ここは紅桜の色だ」
 信長の刻印を素通りして、その下の乳首に歌仙兼定は舌を這わせる。
「ンっ、ぁ、あッ…か、歌仙兼定…ぁっ」
 花弁のように広がる乳輪に歌仙兼定の唇が吸い付き、痣をつけていく。
「はぁ……っ」
 肌理の細かい肌は歌仙兼定が夢想していた通り、容易に接吻痕を残していく。痣が残るほど吸われて、それでも痛みよりも淫靡を感じるらしく、宗三左文字はせつなげに息を吐いた。
「はぁっ、…ぁ、」
 宗三左文字の透き通るような肌に時折痣を残しながら、歌仙兼定は接吻を乳首から脇腹、腰へと下ろしていく。その都度に宗三左文字は掠れた声を上げ、体内に熱を溜めていった。
「あ……か…かせん……ッ」
 宗三左文字の白い手が歌仙兼定の頭を撫でる。淫熱に煽られていてもなおその手つきは優美だった。歌仙兼定に煽られる宗三左文字の指先から、歌仙兼定の耳や頬に熱が還元していく。
 腰骨に口づけながら歌仙兼定は宗三左文字の肌着を取り去り、既に強ばり始めている宗三左文字の陰茎に、手で直に触れた。
「! はッ…ン…ぁ………!」
 優しく握り込まれて宗三左文字がびくりと身を震わせ、声が一際高く掠れた。
「あッ、ぁ、歌仙兼定……っ、ンぁっ……!」
 歌仙兼定が見た通り、他人にそこを掴まれた経験などないのだろう。宗三左文字の竿は擦り上げられてすぐに屹立し、体はたちまち快楽に飲まれて、宗三左文字は歌仙兼定が与える刺激にただ耽溺するばかりになっている。
「宗三左文字どの…」
「っ……」
 淫楽に堕ち込んだ顔を覗き込まれながら、歌仙兼定に己の名を囁かれて、宗三左文字は新たな快楽にぞくぞくと総毛立つ。
「あぁ、か、かせん、」
 今まで味わったことのないような愉楽の中に漂って、どうしたらいいかもわからず、宗三左文字は声を上げた。
「っ…歌仙、……ッ」
 急に、強い快楽に苦しいほどになって、宗三左文字は手を伸ばし、歌仙兼定の身体を突き放そうというようにその腕を突っ張る。
「手……ッ、はな…、はなして……くださ…ッ、ぁ、」
 歌仙兼定の手の中で宗三左文字の屹立は先走りを零してぴくぴくと震え、もはや放出を望んでいるのは明白だった。
「駄目だよ、宗三左文字どの。僕の手の中で最後まで行ってくれなくては」
「ッ…! …、ぅ……、」
 却って強く竿先を擦り上げられてしまい、宗三左文字はせつなげに顔を歪める。
 青と緑の両の瞳を潤ませ、赤らんだ目尻から涙とも汗ともつかぬ水滴が散っている。
「きみが僕に翻弄されて、身悶えしながら果てるところが見たいんだ……このまま精を、僕の手の中で撒いてくれ」
 微笑しながらも歌仙兼定は容赦せずに宗三左文字を煽り続けた。
 にちにちと淫靡な水音を立てて、宗三左文字の竿は更に擦られる。頃合いとみて、歌仙兼定が親指で、宗三左文字の雁首を強く刺激した。
「ッ! あ、やッ、かせ、んッ、ンぁ、ぁ、あぁ……ッ…!」
 歌仙兼定の腕の中で、宗三左文字の上半身がびくりと震えた。
 竿は歌仙兼定の手に掴まれたまま、先端から白濁を飛ばし始める。
「ひッ…ぁあ……ッあぁあっ……!」
 歌仙兼定の手を汚しながら、声を放って宗三左文字は果てた。
 放出を終えてぐったりと頽れた宗三左文字の顔に、歌仙兼定は口づける。
「初めてだろう? 他人の手で行った気分はどうだい? 宗三左文字どの…」
「……………っ、」
 情交の駆け引きとしての歌仙兼定の揶揄めいた言葉に、宗三左文字は別の方向への反応を見せた。
「っ、あ、あの……」
「うん?」
「今の…は、いったい、なんですか………?」
「……何がなんだって…?」
 宗三左文字の意図を測りかねて歌仙兼定が聞き返す。
「あの、その……今の、僕の出した液体は……いったい、なんでしょうか……?」
「は………?」
 呆気に取られた歌仙兼定を、肩で息をし、頬を上気させて、達したばかりの宗三左文字が困惑したように見つめている。
 まさか。
「……精を出したことがなかったのかい……?」
「……せい…とは………あの、この白い液体のこと…ですか………?」
「……………」
 なんということだ。
「まさか……見るのも初めてなのかい……? 自分で出したことがない………?」
 聞き返された内容に宗三左文字のほうが困惑する。
「だ…出すものなのですか……? 自分で、勝手に………?」
 歌仙兼定は頭を抱えたくなった。
 まさかここまで宗三左文字の受動性が高いとは。
「なんてことだ……最初に触ったときにあまりに感度がいいから、僕はてっきり……」
 知識は無くても宗三左文字の体はもっと知っていると思っていた。無論勝手な思い込みだったのだが。
「か…歌仙兼定……」
 はかばかしい反応のなくなった歌仙兼定を、宗三左文字がうろたえたように見つめている。彼のことだから、どうせ見当違いの方向に何かを心配しているのだろう。
「……済まなかった」
 歌仙兼定としてはそうとしか言いようがない。
「歌仙兼定……?」
 謝罪の意味がわからず宗三左文字は首を傾げた。大きな水鳥のような、優雅なその仕種に歌仙兼定は一瞬魅せられる。
「射精も知らなかったなら……あの夏の日の夕まぐれや、昨日の夜、僕がきみに仕掛けた行いは、きみにとっては最大限に不可解で、恐怖をもたらす行動だっただろう。許してくれ」
 男が欲情する瞬間や理屈も理解しないままに襲われていたなら、宗三左文字が怯えるのも当たり前だった。
 ようやく今、歌仙兼定は宗三左文字の恐怖の理由を思い知る。
「………歌仙兼定…」
 謝られても宗三左文字のほうは溜飲が下がらないらしい。それはそうだろう。世間知の足りない宗三左文字は、今、歌仙兼定の中で何が問題になっているかもわかっていないようだった。
 宗三左文字が歌仙兼定の肩に手を伸ばし、熱を帯びた手で優美に歌仙兼定に触れる。
「あの……歌仙兼定……、お尋ねしたいのですが……」
 何を聞きたいのか皆目見当もつかない、というよりむしろ嫌な予感しかしないが、宗三左文字を促すしか歌仙兼定にはできることがない。
「……あなたも、あの、『せい』というものが体の其処から出るのですか………?」
「…………………」
 隣の居室で起きた先程の感動はいったい何だったのだろうか、と歌仙兼定は考える。
 これはもう、欲しいの欲しくないのという議論以前の問題ではなかろうか。
「歌仙兼定……?」
「……確かめてみるかい?」
 ともあれもう今夜は宗三左文字を手放す気は無い。
 となれば、無垢であろうと無見識であろうと、宗三左文字に全てを教え込むつもりで相対するしかあるまい。
 歌仙兼定は悪い笑みを浮かべて、宗三左文字が拒否の態度を見せないのをいいことに、宗三左文字の白い手を取って自分の局部へと導く。
「っ………、」
 肌着越しといえど陰茎に触れさせられて、その存在感と熱さに、宗三左文字の手がぴくりと震えた。
「駄目だよ、手を離さないでくれ……宗三左文字どの」
 微笑しながら歌仙兼定に窘められて、宗三左文字が頬を赤らめて眉を寄せる。
「か、かせん、」
「直に触れてみてくれないか…きみの手で」
「………っ…」
 従順に、だが恐る恐るといった態で宗三左文字が歌仙兼定の肌着を捲り、歌仙兼定の陰茎を露出させる。初めて見る歌仙兼定のものに、宗三左文字は頬を赤らめて唾をこくりと飲んだ。
 歌仙兼定に促されるまま、宗三左文字の白い手がおずおずと伸べられて、歌仙兼定の竿をそっと握る。
「ッ…ふっ……そう…、最初は触るだけでいいよ…たくさん触ってくれ……力を入れすぎると、痛むからね……っ、ふ、」
 不慣れな手つきでゆるゆると触れられて、それでも宗三左文字が触れているというただそれだけで、歌仙兼定の竿は大きく勃起してくる。
「か、歌仙兼定……」
 怯えたように、困惑したように宗三左文字が名を囁く。
 無垢な宗三左文字の白い手の中で存在感を増していく歌仙兼定の竿。歌仙兼定本人にとっては充分に淫靡な絵面だった。戸惑いながらも従順な宗三左文字に手を伸べて、歌仙兼定はその滑らかな白い背を撫でる。
「きみが触れているそれが、ふ、きみのどこに埋められるか……、きみはもう、知っているだろう…?」
 やや息を喘がせながら歌仙兼定が尋ねると、宗三左文字の首がほんの少し頷き、赤く染まった頬が緊張に強ばった。
 宗三左文字の怯えを解く為に、竿に触れさせたまま、歌仙兼定は顔を寄せて宗三左文字の頬や顎に口づける。
「か、かせん、」
「だいじょうぶ、夜は長い……ゆっくり教えてあげるよ…宗三左文字どの。……もう少し、強く扱けるかい?」
「……………、」
 指示を出されても加減のわからない宗三左文字は、竿に触れた手を強めぬまま、戸惑うように歌仙兼定を見る。
「わからない?」
「……え、ええ……」
「じゃあ……」
 宗三左文字への支配感が強まるのを止められず、歌仙兼定は息が上がってくるのを自覚する。
「頭を落として、僕の竿を舐めてもらえるかな?」
 言われた宗三左文字のほうは、衝撃を受けたような顔で目を見開いて歌仙兼定を見た。
「な、舐めるとは……この、不浄の箇所を、ですか……?」
 嫌悪と、怯えすら顔に上せて宗三左文字は聞いてくる。
「宗三左文字どの。きみは知らないんだね」
 歌仙兼定は笑いながら言って、宗三左文字の萎えた陰茎に己の手で触れて見せ、その指を己の口に運んで、宗三左文字に見せつけるように、指先についた精の名残を舐め取る。
 その淫靡な様子を、宗三左文字は固唾を飲んで見守っていた。
「契りを結ぶときには。体の何処にも不浄な場所はないんだよ……特にきみが触れている場所は……むしろ神聖なものになるくらいだ」
「……………」
 宗三左文字は黙ったまま、震えて息を吐く。
 それを見てやや虐めすぎたか、と歌仙兼定が危惧する間に、宗三左文字は歌仙兼定の顔から屹立に視線を落として、消え入るような声で囁いた。
「や…やってみます……」
 そのままゆっくりと宗三左文字が頭を落とすと、淡紅色の長い髪の一房が歌仙兼定の屹立に触れた。それを己の手で払いのけて、宗三左文字は恐る恐る、歌仙兼定の竿へと唇を近づける。
「手で触れて……まずは接吻してみてくれ」
 昂奮の気配を漂わせながら歌仙兼定が言い下ろす。宗三左文字は指示された通りに、竿に指を絡ませて、歌仙兼定のむせるような雄の匂いに嫌悪と磁力の両方を感じながら眉を顰めつつ、唾液に濡れた両の唇でそっと歌仙兼定の竿先に触れた。
「ンむ……」
「! ッ……、く………!」
 宗三左文字の唇の熱と触感。それを体が認識した途端に強い快楽が湧き上がって、歌仙兼定は放出の欲求に必死で耐える。
「は……、いいね…、宗三左文字どの……」
「ふっ……」
 紅潮した顔を歪めて、宗三左文字は歌仙兼定の屹立に接吻を続ける。その行為が「奉仕」と呼ばれることなど、宗三左文字は知りもしないに違いない。
「ん……ンっ…」
「舌で……触れてみてくれ…っくッ」
「ん………っ」
 唇より更に熱く濡れた舌が宗三左文字の口中から伸びてきて、歌仙兼定の屹立に触れる。
「ッ………!」
 びく、と身が震えるのを歌仙兼定は止められなかった。手を伸ばして宗三左文字の柔らかな淡紅色の髪を撫でながら、ぎこちない動きで宗三左文字が竿に舌を当て続けるのを、歌仙兼定は見下ろす。
「っ……、は……、宗三左文字どの……そろそろ…ッ」
 爆発しそうな情欲を長く溜め込んできたのは元来宗三左文字より歌仙兼定のほうだった。宗三左文字の口淫を受けて、歌仙兼定の屹立は先端から先走りを溢れさせ、今にも放出が始まりそうだ。
 曖昧に歌仙兼定に言われても、しかし宗三左文字には意味がわからない。宗三左文字の舌は相変わらず歌仙兼定の竿を這い続けている。
「宗三左文字どの! ッ、離れ……、っ、く………!」
 注意を喚起する間も無く、宗三左文字の鼻の先で歌仙兼定の射精が始まってしまう。
「! ッ、ぁ………ッ!」
 短い悲鳴が宗三左文字の喉から漏れたが、それに拘泥する余裕が瞬間歌仙兼定にはなかった。
「っ……、く……、ふぅ……ッ」
 放出を終えて我に返ると、自分の体の前に、宗三左文字が顔に手を当ててうずくまっている。
「! 宗三左文字どの、」
 慌てて宗三左文字の体に触れて彼の顔を覗き込む。
「っ……か…かせん………」
 くぐもった声がして、白皙の顔が上向いた拍子に、宗三左文字の掌から歌仙兼定の白濁がどろりと零れた。顔の右半分が歌仙兼定の精に汚されている。深い緑色の右目の縁や赤い唇の端が白く汚れ、淡紅色の前髪にも精が飛び散って、汚れて濡れた髪が顔に貼りついている。白濁は顔を押さえた宗三左文字の掌を伝わって、剥き出しの肘にまで滴っていった。
 その淫靡な様と、何をされたかも殆ど自覚のない宗三左文字の表情との対比が、歌仙兼定の目にはひどく扇情的な絵面に映った。
「大丈夫だったかい?」
 新たな昂奮を押し隠して歌仙兼定は宗三左文字を気遣う。
「び……吃驚しました……」
「突然のことで、済まなかったね……顔をよく見せてくれ。拭いてあげるから」
 言われて宗三左文字は素直に歌仙兼定に面を差し出す。
 白濁を懐紙で拭き取るつもりなのは無論だが、その前に、己の精で汚した宗三左文字の美しい顔が歌仙兼定の脳裡に強く灼きついてしまうのは仕方のないことでもあった。
「……目に入らなかったかな?」
 懐紙で宗三左文字の顔や手を綺麗に拭き取りながら歌仙兼定は尋ねる。
「だ…大丈夫です……少し…口に入りましたが……」
 拭かれるままになりながら宗三左文字が愚直に回答する。
「……口…?」
 歌仙兼定は下腹部が再び熱を帯びるのを自覚した。
「…飲んだのかい……?」
「……少しだけ……。………あれは、飲み込むと毒だったりするのですか……?」
「いや……。飲み下す性技があるくらいだから、そんなことはないだろう」
 無垢な宗三左文字の体の、後孔より先に口腔や喉を汚したという事実に密かに昂奮を覚えながら、歌仙兼定は返事をした。
「……あなたも僕と同じなのですね」
 得心したように宗三左文字が呟く。
 ようやく懐紙で宗三左文字の体から精を拭い終え、歌仙兼定は宗三左文字を見た。
「なんのことだい?」
「……あなたも精を出すのですね……僕と同じに」
「………ああ、それか」
 歌仙兼定は溜息を押し殺す。
「男はみんなこうなるんだよ、宗三左文字どの。特にああして竿を刺激されたり、欲情した相手が目の前にいるときにはね」
「欲情……。なるほど…わかりました」
 感慨深げに宗三左文字が呟く。いったい何がわかったというのだろうか。知りたいような気もするが、尋ねるのが怖い気もする。
「何か気に掛かることがあるのかい?」
「いえ………その…自分の体がせつなくなる理由がわかりましたので」
 歌仙兼定に目でその先を促されて、宗三左文字が続ける。
「あなたの夢を見ると……ここが苦しくなることがありましたので」
「夢?」
「……何時だったか、夜に……あなたに触れられた夢を見た、ような気がしたのです。そうしたら、ここが少し強ばって、体が苦しくなって……それまで、あなたに実際に触られたときにも同じ具合になったことがあったのですが……どうしたらいいかわからなくて、その時はどちらもそのままになっていたのですけれど……あれは」
 納得がいった、というように喜ばしげに微笑んで、宗三左文字は歌仙兼定を見つめ、
「あれはあなたに欲情していたということなのですね」
 とんでもない台詞をさらりと上品に言ってのけた。それが如何に歌仙兼定を歓喜させ、かつ呆気に取らせるかは、まるで自覚もないままに。
 淡紅色の髪と、青と緑の瞳と、ほんのりと朱に染まった頬とが見事な対照を為し、微笑している宗三左文字の顔は本当に美しい。
 世間知らずの宗三左文字の、歌仙兼定から見れば斑模様に顕れる、罠のような無知と、それゆえの素直さ。
「……鶴丸国永どのの口癖ではないが……本当にきみは驚きだな」
 微笑するしかなくなって、歌仙兼定はそう答えた。
 宗三左文字と相対していると、歌仙兼定はあらゆる意味で心に余裕を無くしてしまい、そうそう風流とも雅とも言っていられなくなってしまう。宗三左文字が自分を本気にさせ、ある意味で歌仙兼定の心を振り回す存在であるのは明白な事実だった。
「歌仙兼定……?」
 烟るような眼差しで、不思議そうに自分を見る宗三左文字のうなじに手を伸ばして、歌仙兼定は宗三左文字の唇に口づける。
「ンっ…ふ…」
 宗三左文字はうっとりと目を半眼に閉じて、歌仙兼定の舌を受け入れた。
「ふぁっ……は…、んは…っ」
 接吻に慣れきって、宗三左文字は歌仙兼定の舌が己の舌を翻弄するに任せている。粘膜を通して絡み合う熱は同じほどで、宗三左文字の中に、未だ自分を求める情欲が残っていることが歌仙兼定には知れた。
「……夢を見て僕に欲情したって?」
「……っ、え…、ええ………」
 口を離した歌仙兼定に問われ、接吻に茫洋となった口調で宗三左文字は答える。
「それはいつ頃……?」
「以前に大きな怪我をしたときだから……ふたりで朝焼けを眺めた、あの日の前夜のことでしょうか」
「………あのときか」
 自分が淫夢を見たまさにその晩のことだ、と歌仙兼定は思い至る。
 至近に宗三左文字の顔を眺め、その肌に両手で触れながら、歌仙兼定は微笑した。
「そんな頃から僕を好きでいてくれたなら……随分待たせてしまったんだね」
 長い遠回りだった、と歌仙兼定は実感する。あの日から自分はむしろ宗三左文字とは距離を置き、宗三左文字に触れないようにしてきたのだから。
 宗三左文字は、ほう、と熱い息を吐いた。
「歌仙兼定……あの」
「うん?」
「あなたが僕に触れてくれて……僕は嬉しいのです」
「………そのようだね」
 蕩けるような微笑を宗三左文字に見せてから、歌仙兼定は、宗三左文字の陰茎に再度手を伸ばした。
「ここがまた固くなり始めている」
「っ…、ぁ…、」
 宗三左文字の言いたいことは無論理解していて、その上で、歌仙兼定は宗三左文字の心を更に甘く嬲りにかかった。
「僕の夢を見たときもこうだったのかい?」
「…っ、は、ぁ……そうで…、ンっ…」
「自分では…どうすればいいかわからなかった……?」
「ン、ぁ、え、ええ…っ、か、歌仙兼定……はぁッ」
 宗三左文字の陰茎を再び手で握り込み、扱きながら、歌仙兼定は宗三左文字の耳元で囁いていく。
「きみはまだ、僕が欲しいだろう…?」
 竿を擦り上げ、じゅうぶんに宗三左文字の淫熱を煽った上で、歌仙兼定はその耳に甘い支配の毒を囁く。
「っ、え、ええ………っ、ぁ」
「じゃあ。僕に背を向けて、四つ這いになって、僕に向かってお尻を突き出してごらん」
 言われた宗三左文字の顔が、羞恥と被支配の恥辱に似たもので髪より赤く染まるのを、歌仙兼定は愉しげに見つめた。




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