<其乃八> 寝入ってしまった宗三左文字の体を拭ってやりながら、歌仙兼定はその裸身にかかる淡紅色の髪をそっと払いのけて宗三左文字の左胸を晒す。 そこにある織田信長の刻印。 初めての交わりで宗三左文字に背中を向けさせたもう一つの理由がこの刺青だった。 宗三左文字の体を初めて開くときに、歌仙兼定は、この刻印を目にしていたくなかった。 何百年を経ても消えない信長の所有の痕。 宗三左文字と繋がっているときでさえ、否、彼を手中に収めているときにこそ赤裸々に浮かび上がってくる、他者の所有の証。それを目にしたときの自分の感情を統制できる自信がなかったし、そんな歌仙兼定の感情を宗三左文字が察知して、嫌悪や怯えを感じずに済むとも思えなかった。 歌仙兼定は宗三左文字を起こさぬよう気をつけながら、手を伸べてそっと蝶の刺青に触れる。 昨夜、宗三左文字の部屋で同じように信長の刻印に触れたとき。宗三左文字もまた歌仙兼定と同様に、あからさまに身を固くした。この刺青は、ふたりの間に亀裂をもたらすかのごとく打ち込まれた杭も同然だった。宗三左文字と契りを結び続ける限り、この杭の存在を意識し続けなくてはならない。忌々しいことだが受け入れねばなるまい。そう歌仙兼定は考えていた。 この刻印がなければ、目の前で眠る青年は宗三左文字たりえない。 織田信長を嫌う宗三左文字でさえ、そのことはよく承知している。この刻印により、長らく天下人の刀として扱われてきた経緯があればこその彼の品位や気質、風雅さなのだ。 歌仙兼定は吐息をついて、綺麗に拭い終えた宗三左文字の裸身から体を離した。夜着である己の予備の白浴衣を宗三左文字の体に着せかけてやりながら、自分のうちにもようよう疲労を自覚する。 朝まで少し眠ろう。自分も浴衣に身を包んだ後、宗三左文字の体に寝具を被せてやって、歌仙兼定は、自分もその隣に横になった。 意識がゆっくりと半覚醒に至り、瞬間、宗三左文字は、自分が何処に寝かされているかを思い出せずに混乱する。 目を開いて視線を脇にやると、存在感のある歌仙兼定の身体がすぐ傍に横たわって眠っているのが目に入った。それで宗三左文字ははっきりと覚醒して、夕べのことをすべて思い出した。 歌仙兼定の顔はこちらを向いているが、髪と同じ二藍色の睫毛に縁取られた瞼は今は閉じている。そういえば、こんなに至近で歌仙兼定の顔を、鑑賞するかのように眺めたことはなかった、と宗三左文字はしげしげと契りを結んだ男の顔を見つめた。 鼻筋の通ったくっきりした目鼻立ち。瞼の奥の瞳が、宗三左文字のそれよりずっと明るい緑色であることはよく承知している。正面を向いて目を開けば、切れ上がる目尻が印象的な歌仙兼定だが、こうして見ると意外に睫毛が長い。歌仙兼定が「文系名刀」と自らを表現する通り、ほかの刀剣男士と比べて武張った印象は薄いが、その体が実際には膂力に満ちていることは、張った肩や太く締まった二の腕から明白にわかる。 「……………」 ほう、と息を吐いて、宗三左文字は、その息がずいぶん熱くなっていることに気がついた。この場は歌仙兼定の気配が強すぎて、宗三左文字の体は自然と熱を帯びて反応していく。自分が着ている白浴衣も、歌仙兼定が貸してくれたものだろう、宗三左文字の体と比べて身幅が随分余っているうえに、歌仙兼定の香の匂いが強くする。歌仙兼定に教わったばかりの淫熱が再び宗三左文字の下腹部に凝り始めていて、どうしたものかと困惑しているうちに、歌仙兼定がその大きな目をぱちりと開いた。 「……宗三左文字どの」 いつもの優しい声でゆるやかに微笑まれて、心の臓が跳ね上がったような錯覚に陥り、宗三左文字は息をつめて歌仙兼定を見る。 「……歌仙兼定…」 囁きにしかならない宗三左文字の声に、歌仙兼定は横たわったまま、そっと手を伸ばして宗三左文字の顔に触れた。 「頬がすいぶん赤いね。……もしかして暑いのかい? 肌が熱を持っている」 「いいえ……あの、」 ただでさえ体が歌仙兼定に反応しているのに、大きくて器用な手指で顔に触れられて、宗三左文字は更に困惑を強めた。 「…………、僕は、そろそろお暇しようかと思うのですが……」 頬を赤らめて横たわったまま告げてきた宗三左文字の提案に、歌仙兼定は驚いたような顔をしてみせる。 「まだ丑三つ時だよ。朝まではだいぶあるよ、宗三左文字どの」 「ええ……、それはわかっているのですが、その」 歌仙兼定に触れられている場所から、勢いよく熱が宗三左文字の下腹部に向けて流れ込んでいく。いたたまれなくて宗三左文字は首を傾け、歌仙兼定から視線を外す。 「……この場所にいると、あなたへの欲情が止まないのです」 宗三左文字の優美な口から赤裸々なことを言われて咄嗟に内容が把握できず、歌仙兼定は数度目を瞬いた。 やがて、夕べのやりとりを思い出し、宗三左文字が己の体の反応をそう呼んでいたことを思い出す。 「きみが僕に欲情しても、僕はとりたてて困らないけどね」 歌仙兼定が微笑を深めてそう言うと、宗三左文字が眉根に寄せた皺が深くなった。 「……僕は困ります」 「なぜ?」 「体が強ばって、せつなくなるばかりですので……」 「どれ」 歌仙兼定の手が宗三左文字の体を撫で下ろし、浴衣の裾を割って腿の内側に入り込み、宗三左文字の竿を確かめた。 「! か、歌仙兼定、」 慌てて制止しようとする宗三左文字の手を躱して、歌仙兼定の指が熱くなった宗三左文字の竿に触れた。 「ん! ぁッ…!」 宗三左文字の喘ぎに似た熱い息が歌仙兼定の顔にかかる。 「本当だ……少し強ばっているね」 「っや…、やめ……、」 歌仙兼定の手を押し止めたいが、歌仙兼定に触れられる心地よさに負けて、宗三左文字の手から力が抜けていく。反対に、ゆるゆると触れられているだけの竿はどんどん熱を持ち固くなっていく。宗三左文字の初心な反応とそれとは裏腹な官能を、歌仙兼定は自分もやや頬を紅潮させながら愉しげに見守った。 「はっ…あぁ……、歌仙兼定……っ」 息を喘がせて宗三左文字が声を上げた。 「やめてください……、そんなにされたら…ッ、あ、あなたを欲しくなるのが止められない……、っンぁッ…、あ、」 「どうして止める必要があるんだい?」 頬を赤らめて喘ぐ宗三左文字に、歌仙兼定が横たわったまま顔を近づける。 「きみも僕のものに触れてごらん……同じくらい反応してるから」 「はぁ…、は……、あ、あなたが…ですか……?」 「そうだよ……ほら」 歌仙兼定の空いた手が宗三左文字の手を取って、同じように浴衣の裾を割り、局部へと宗三左文字を導く。 「ッ………」 指で再び歌仙兼定の竿に触れさせられて、怯えよりも驚きを強めた表情で、宗三左文字が歌仙兼定の顔を見た。 「あなたも……ここを固くしているのですか? ……どうして……」 宗三左文字の優美な手で竿に触れ続けながら聞かれて、歌仙兼定は情欲を高めながらも苦笑する。 「なぜって、きみが傍にいたら、それだけで僕はきみが欲しくなって、体がそう反応するからだよ。宗三左文字どの。……きみの腰やお尻に無理が無ければ、今からきみに襲いかかって、朝まできみを眠らせずに、きみのなかに何度でも精を撒きたいくらいだからね。……最低でも五、六回は」 「……………」 性知識に乏しい宗三左文字は、歌仙兼定の最後の言葉には反応を示さなかった。 代わりにゆっくりと表情を変え、紅潮した面に、はっきりとした情欲を示してきた。 「……あなたを…欲しがっても…いい、……ということですか……?」 生来が受動的な宗三左文字は、抱いてくれと歌仙兼定に頼むことを思いつかなかったのだろう。そんな言い方で、ようやく、自分の欲求を歌仙兼定に向けることが意図できるようになったものらしい。宗三左文字の手指が、意思を持って歌仙兼定の竿に触れ始める。 「……きみの体が平気ならね」 歌仙兼定はそう答えた。 情交への期待が再び高まり、歌仙兼定も頬が火照りだすのを自覚する。歌仙兼定は宗三左文字のものを握る手を少しだけ強め、 「疲れているなら……、このまま手で擦り合うのもいいけれど。僕としてはきみの体を抱くほうがいいな。きみはどうしたい?」 「………、かせん、かねさだ……」 色違いの両の瞳に潤んだ熱を湛えて、宗三左文字が歌仙兼定を見つめた。 「……僕を、抱いて下さい」 宗三左文字の高雅で生真面目な声で直截に依頼されて、歌仙兼定は昂奮に心臓が跳ね上がる。 「……否やは無いよ。悦んで、宗三左文字どの」 返事をして歌仙兼定は、宗三左文字の体にのしかかる。 歌仙兼定の飢えたような口づけに、宗三左文字は怯えもせずに、歌仙兼定と同じほどの熱で応えてきた。 互いの陰茎から手を離さぬままに幾度も接吻を繰り返して、淫熱をふたりで煽っていく。 歌仙兼定は宗三左文字の浴衣の裾を捲り、帯が緩んで襟元が露出しないよう、宗三左文字の体に添って裾を折るように持ち上げていく。白い脛と太腿が露わになり、体の中央に、熱を持って勃ち上がりかけた宗三左文字自身が存在を主張している。宗三左文字の上半身は綺麗に夜着に包まれたままで、下半身は完全に露出した状態にさせられて、しかしその絵図がどれほど淫靡で歌仙兼定を昂奮させるかは、宗三左文字にはまだまったくわかっていない。 「最初の情交のときは、きみのこちらをあまり構ってあげられなかったからね」 情欲に息を掠れさせながら歌仙兼定は言って、手と顔を宗三左文字の陰茎に近づける。 「僕のものを舐めてもらったお礼に、きみのものにも口づけて、よく慰撫してあげるよ」 手で宗三左文字の竿を優しく捕らえ、そこに唾液をまぶした舌をいきなり当てた。 「ッ! ひぁッ!」 強烈な快楽に、宗三左文字の腰がびくりと跳ね上がった。 ぬらぬらと舐め上げられて、宗三左文字の竿はたちまち屹立していく。 「っ、や、歌仙兼定、それ…ッ、だ、駄目です、やめてくださいッ……!」 過ぎた淫楽に惑乱して、宗三左文字は歌仙兼定の頭に手を当てて股間から彼を押しのけようとするが、既に手に力が入らない。歌仙兼定は構わず宗三左文字の竿を舐め回し、口づけて吸い上げる。片手で竿を押さえ、もう片手は陰嚢を優しく揉み込んでいて、初心な宗三左文字には、その快楽がまったく咀嚼できない。 「ンぁ、あッ、や……ッ、あァッ…!」 竿中に唾液をまぶされて手で擦り上げられ、雁首の裏に舌を当てられ、竿先を唇で吸われる。宗三左文字の滲出液が口中に入るのも構わず歌仙兼定は口淫を続けていく。 「ッぁ、あぁッ…、歌仙兼定…ッ、や、はなしてくだ…さ…ッ、で、出ッ…、っあぁッ!」 先走りが増えてびくびくと宗三左文字が腰を震わせるに至って、ようやく歌仙兼定は少し責めを弱めた。 「……僕としては、きみが行きたいならこのまま出してしまっても構わないけれど」 宗三左文字の先走りが絡んだ舌で己の唇を舐め上げて、歌仙兼定が悪戯っぽく笑う。 「出した後のきみの疲労が心配だな……、もう少し時間をかけてきみと愉しみたいし、それに……こちらも、きちんと埋めてあげないといけないね」 言いながら歌仙兼定が、己の唾液と宗三左文字の滲出液に濡れた指で宗三左文字の尻のあわいをまさぐり、ゆっくりと後孔に指を突き込んできた。 「っ…、ひぁッ…!」 宗三左文字のとば口は抵抗なく歌仙兼定の二本の指を飲み込み、奥深くまで突き通る。竿を掴まれたままで体の中を探られ、宗三左文字は喉を仰け反らせて掠れた声を上げた。 体の中に侵入した指は宗三左文字の快楽の巣を裏から突き、別の手の指は宗三左文字の竿先を刺激している。竿を舐められていたときとは別の感覚の愉楽を受けて、宗三左文字は同じように惑乱した。 「あッ、ンぁ、歌仙兼定っ……!」 わななく赤い唇から唾液を滴らせて、宗三左文字が泣くように喘いだ。 「どうだい……? 宗三左文字どの」 淫楽に落ち込んだ宗三左文字の様子に自らも情欲を煽られて、己が勃起していくのを感じながら歌仙兼定は尋ね下ろした。 「ここに…、僕が欲しいかい?」 後孔の熱い粘膜をぐにぐにと指で刺激しながら歌仙兼定が聞いてくる。 「っ、は、ぁ………、」 ほんの昨日まで、そこを埋められると気持ちが良くなることすら宗三左文字は知らなかったのに。 今はもう、歌仙兼定が与えてくる快楽の虜だった。自分の奥深くに歌仙兼定の熱い竿が埋め込まれると想像しただけで、下半身の熱がいっそう煽られる。 「あッ…、歌仙兼定、っ欲し……、」 縋るように歌仙兼定に手を伸ばし、宗三左文字は懇願した。 「……来て、埋めて下さ…っ、歌仙兼定……、欲しいんです…、僕の…、そこに……っあなたの……が…、はっぁ…ッ」 宗三左文字の、無知が故のあられもなさに歌仙兼定は破顔した。 「ふっ……いいよ…、宗三左文字どの……、そのまま脚を開いていてくれ」 指を抜いて、己の浴衣の帯を解き、半裸になった歌仙兼定が宗三左文字の股の間に腰を落としてくる。 瞬間、一昨日この姿勢で別の男に暴行されかけたことを宗三左文字は思い出した。だが歌仙兼定の力強い手が、それでも優しく尻を持ち上げてきて、上から覗き込んでくるその顔が確かに口元に笑みをはいた歌仙兼定であることを認めて、宗三左文字は脳裡から忌まわしい記憶を追い払うことに成功した。 後孔の襞を探っていた歌仙兼定の竿先がゆっくりと体内に侵入してくると、熱が麻薬のように全身に伝わり、宗三左文字はすぐに歌仙兼定のことしか考えられなくなった。 「ンっ、はぁ、っあぁッ…」 とば口を押し開いて、歌仙兼定が宗三左文字の奥深くへと押し入ってくる。初めてのときは怯えを感じるほどに違和感があった逆流感も、今は歌仙兼定の熱と同じものだと感じられ、さした抵抗感も無く宗三左文字は歌仙兼定の挿入を受け入れた。初めて体を開かれたときのような痛みは今回は殆ど無く、目を上げれば挿入を果たして放出を耐える為に辛そうに歯を食いしばっている歌仙兼定の顔がすぐ傍にあって、その顎から宗三左文字の着た浴衣に汗が滴っていくのが目に入る。 歌仙兼定にはまだ、宗三左文字の後孔が狭すぎるようだった。 「っ、宗三左文字どの、もう少し、体を楽に……ッ、く……!」 動くどころでは無く、宗三左文字の後襞が歌仙兼定の雄を締め上げているのに必死で耐えているらしい。 体を楽にと言われても、宗三左文字にはその方法がわからない。竿を埋め込まれたまま、宗三左文字が少し腰を動かした途端、 「っン……ッく……!」 耐えきれなかったのか、宗三左文字の中で歌仙兼定の放出が始まった。 「っ……ぁ………!」 熱が直腸を逆流してきて総身が震え、宗三左文字は思わず歌仙兼定の浴衣の袖にしがみつく。 「っ、は……、くは…、」 己の体内が熱いものでひたひたと満たされるのを宗三左文字は自覚した。 宗三左文字の体の上で息を喘がせて、射精を果たした歌仙兼定が、やや気恥ずかしげに宗三左文字を見下ろした。 「っ、ふ、済まなかったね……、きみの中が心地よすぎて、耐えきれなかったよ……」 放ったばかりとは言っても、宗三左文字の中で歌仙兼定の竿は未だ熱を持って強ばっている。 「このまま…繋がったままで、いいかな……? すぐに、動けるから……」 歌仙兼定の言葉の意味は殆ど宗三左文字にはわからなかったが、宗三左文字は黙って頷いた。そんな宗三左文字の思考すら見透したような緑の目で、歌仙兼定は微笑する。 「きみは本当に素晴らしいね……すべてを僕に許してくれる」 下肢は繋がったまま、歌仙兼定が上半身を覆い被せて宗三左文字の顔を両手で捕らえ、唇に口づけてきた。 「ンっ…ンむぅ……はふっ……」 唇どうしが絡みづらいので、互いに舌を出して熱を伝え合う。歌仙兼定の舌から唾液が宗三左文字の舌や唇に伝い落ちてきて口中に溜まるのを、宗三左文字はいつか教わった通りに、喉奥へと飲み下していった。 「ンっ…っく……は、か、歌仙……っ」 ゆるゆるとした淫楽に既に取り込まれた状態で、宗三左文字は歌仙兼定の名を呼んだ。答えるように歌仙兼定が少し腰を揺すると、宗三左文字の喉からさらに淫熱を帯びた声が漏れた。 「ッ、ぁ、ひぁッ」 「そろそろ、いいかな……動こうか」 歌仙兼定が上体を起こし、快楽に喘ぐ宗三左文字の顔を見下ろしながら、ゆっくりとうねるように腰を動かしてくる。 快楽の場所を優しく突かれて、宗三左文字は身を仰け反らせる。 「ン、あぁあッ…、っはッ、はぁッ…」 「どう……? 気持ちいいかい……?」 歌仙兼定に問われて、宗三左文字は素直に頷く。 「ンッぅ、っええ……、か、歌仙兼定……ッ、は、ンぁっ」 「ふ…、可愛いな、宗三左文字どの……」 歌仙兼定は手を伸べて、淡紅色の寝乱れた前髪ごと宗三左文字の額を優しく撫でた。 初めて繋がったときのような緊張は宗三左文字からは失せていて、宗三左文字はしどけなく口を開き、喉から快楽の声を上げている。熱と涙に潤んだ緑と青の瞳が歌仙兼定を見上げ、そこには淫楽と同じほどの信頼の光が宿っていて、歌仙兼定の心を悦ばせた。 一度精を撒かれて摩擦の無くなった宗三左文字の後孔は心地よく歌仙兼定に纏わりつき、抜き差しの度に粘膜がひくついて歌仙兼定の快楽を誘う。 「きみの、中が……、僕を、締め上げているのが、わかるかい……?」 「ッ……、」 指摘されてさすがに羞恥を感じるのか、宗三左文字が汗に濡れた頬を赤らめた。淫楽に乱れてはいても相変わらずの宗三左文字の初心に、歌仙兼定は微笑する。 「このままに、しておこうかと思ったが……、やはり、きみの全部が見たいな」 歌仙兼定は手を伸ばして宗三左文字の腰帯を解き、既に崩れかけていた襟を大きく開いて宗三左文字の上半身をはだけさせた。 信長の刻印が白い肌に黒々と表れたが、ふたりとも敢えてそのことは無視した。 汗ばんだ宗三左文字の裸身は、淡紅色の髪と同じほどの色に染まっている。その中でも乳首はさらに赤く色づき、歌仙兼定の目を奪う。 「乳首が立っている……可憐な花のようだね」 歌仙兼定の器用な指が、宗三左文字の乳首に優しく触れた。 「ひッぁ…!」 「感じるかい? ここ……」 「ンッ、あぁあっ、か、かせ……ンっ、あぁっ」 乳首を優しく摘まれると宗三左文字の体がぴくりと震え、後孔が歌仙兼定を締め上げる。 「ッは、ンあっ」 昨日とは違って、顔を見下ろされながら優しく突かれ、宗三左文字は羞恥と甘い愉楽に耽溺していた。後ろを埋められた宗三左文字の竿は屹立して先走りを零しているが、放出を求めて辛さに堪えるほどではない。濡れた竿先が時折歌仙兼定の下腹部に擦れ、その都度、摘ままれた乳首と同様、輪をかけて快楽が宗三左文字の体を駆け巡る。 「ッあ、ふぁ、はぁッ、あッ」 歌仙兼定がもたらすものを全て受け入れて、宗三左文字は淫楽のままに揺さぶられていた。拒否の言葉や感覚は既に無く、歌仙兼定の肘に縋りついて、突いてくる腰の動きに合わせるように下肢をくねらせる。赤い頬とは対照的な緑と青の瞳から涙を流し、開きっぱなしの赤い唇から唾液が止めどなく溢れて顎を汚しても、宗三左文字はそれに気づかなかった。歌仙兼定の指が宗三左文字の顎を伝って唾液を掬い上げ、糸を引きながら歌仙兼定自身の舌に絡め取られるのを見て、初めて宗三左文字は己のしどけなさに気づいて羞恥を強くする。 「っ…、は、」 歌仙兼定の視線から己のだらしない顔を避けようと、宗三左文字は手を顔に当てて隠そうとした。 「駄目だよ、宗三左文字どの……顔を隠さないでくれ」 すぐに歌仙兼定の両手が降りてきて、宗三左文字の白い手を捕らえ、頭の脇に押しつけて顔を隠せなくしてしまう。 「っ、で、ですが……、ッぁっ」 「恥ずかしいのかい?」 「っ……ン、」 歌仙兼定から逃げるように顔を横に背けて、宗三左文字は頷いた。 「隠すことは無いんだよ、宗三左文字どの……きみのその羞恥の強いところも、僕にとっては慕わしいもののひとつなんだから」 歌仙兼定の顔が降りてきて、宗三左文字の横顔に口づけて舌を当てる。 「っ、う、」 突き上げを続けながら手を捕らえられて、汗や唾液の跡を歌仙兼定の舌が這い、水分を啜り飲む。 「ンっ、は、かせん、ッぅ…ンむッ……」 顔の皮膚を舌が這い回る淫靡とその羞恥に思わず逃げるように首を巡らして声を上げると、歌仙兼定の舌が宗三左文字の唇の中に入り込んできた。 「うッ、ンむ、ぅふッ…ふ、あっ……」 舌で口中を執拗に侵されて、宗三左文字は抗議の言葉も失う。恥じらいを気にかける理性は淫楽に飲まれ、霧散する。宗三左文字は夢中で歌仙兼定の舌に応え、体の奥を突き上げてくる屹立に合わせて腰を揺すった。 「ぅあッ、はッ、ンあぁ……ッ」 「宗三左文字どの…脚を、僕の腰に絡めて、……っ、そう……、」 唇を離した歌仙兼定の指示通り、宗三左文字は両脚を歌仙兼定の腰に巻きつけた。 「そろそろ……、もっと、強く突くよ……、ッ、ン、くっ…」 「ッ……、あ、はァ……ッ!」 歌仙兼定が宗三左文字の腰を抱え、終焉に向けて激しく突いてくる。前立腺を強く擦られて痺れるような快楽が宗三左文字を襲い、宗三左文字は目を閉じて幾度も身を震わせた。 「ンぁッ、ひぁ、っはァっ、か、歌仙兼定ッ、ンぅっ…!」 「気持ちいいかい……? だったら、そう言ってくれ、宗三左文字どの」 宗三左文字の体の上に汗を散らしながら、頬を上気させて、歌仙兼定がどんどんと淫熱を突き込んでくる。 「っくぁ、あぁ……ッ、き、きもち、い…いッ、は、かせん…もっと……っは、あぅッ……!」 突かれながら、己の体内で、歌仙兼定の雄が大きく膨張していっているのが宗三左文字には認識できた。 「ンぁ、っあ、僕の…なかで……歌仙兼定、あなたの…が、おおき…く……ッ、くはッ、ぁ、あぁッ……」 「ふ……、そうだよ……そろそろ僕も、限界なんだ……、っ、きみは、どう……?」 突き上げを緩めぬまま、歌仙兼定の手が屹立した宗三左文字の竿を扱き始める。 「ンっ、は、あぁッ…! か、かせ……っ、は、も……もう……ッ、んッ、くっ」 歌仙兼定の指で的確に雁首の裏を突かれて、宗三左文字は放出の予感にびくびくと震え走る。 歌仙兼定は腰の動きを遅くして、宗三左文字の快楽を押し止めるようにしながら、手ではその屹立を離さない。 「お願いしてみてくれ……、行かせて欲しい、と…」 「っ……、は……、」 昂奮の涙に潤んだ目を開き、宗三左文字が歌仙兼定を見上げる。 「あぁ……歌仙兼定……っ」 淫楽に屈した素直さで、震える手を伸べて歌仙兼定の腕を掴み、わななく唇で宗三左文字は懇願してきた。 「っ行かせて下さい……僕を……、歌仙兼定……、っぁあ…、」 支配を込めた指示だったのに、宗三左文字から頼るかのように全身で縋られて、歌仙兼定は万能感に満たされたあまりに、却って良心の咎めを感じた。 「宗三左文字どの……、」 いたわるようにその細い体を抱えて口づけを浴びせ、右手に掴んだ宗三左文字の竿をゆっくりと力強く扱いて放出を促す。 「ン! んっ、く……!」 宗三左文字の細く長い腕が歌仙兼定の首にかじりつく。 歌仙兼定の腕の中で宗三左文字がびくりと震えて強ばり、射精が始まる。 「はぁ…ッ…、歌仙兼定…っ……!」 「ッ…、く………!」 宗三左文字の放出に合わせて後孔の絞りが強まり、歌仙兼定もまた宗三左文字の中で精を撒き始めた。 互いが互いにしがみつき、放出した熱が急速に冷えていくのを実感しながら、息を荒らげて、ふたりとも暫くはそのまま動かなかった。 歌仙兼定は宗三左文字の細い体を抱きかかえ、自分の剥き出しの胸にかかる宗三左文字の熱い息を皮膚で感じながら実感していた。 宗三左文字は身も心も僕のものだ。 信長の刻印など関係ない。 あの夏の日、初めて腕に抱いた鳥を、ついに歌仙兼定は手に入れた。 |
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